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グロールタイガーのシーンに登場する、オウムとボスと女バーテンの話

劇団四季ミュージカル『キャッツ(CATS)』より“Growltiger’s Last Stand(グロールタイガー – 海賊猫の最期)”の英語歌詞を見てみると、劇団四季版では登場しないオウムとボスと女バーテンの話が出てきます。

自分がシャム猫軍に襲われて死ぬとは思ってもいないグロールタイガーが、最後に歌う曲。昔を思い出し感傷に浸るグロールタイガーの思い出話とはどのようなものだったのでしょうか?

【ブロードウェイミュージカル“Cats”/“Growltiger’s Last Stand”/作詞:T.S. Eliot * 劇団四季ミュージカル『キャッツ』/「グロールタイガー – 海賊猫の最期」/訳詞:浅利慶太】

グロールタイガーが通った実在するパブ

今回ご紹介する歌詞は、劇団四季版ではごっそりと抜き取られているパートです。グロールタイガーがグリドルボーンを前にして、自らの過去の話をしているといった場面ですね。

ここに登場するのは次の3名。

 

  • Mr. Clark(boss)…ミスター・クラーク(ボス)
  • Billy M’Caw(parrot)…ビリー・マコウ(オウム)
  • Lily LaRose(barmaid)…リリー・ラローズ(女バーテン)

 

Mr. ClarkとLily LaRoseは人なのか猫なのか正確には分かりませんが、いずれにせよこのお話は猫目線の物語なので、恐らく猫なんだと思います。

どういった場面を思い返しているのかというと、グロールタイガーがよく通っていた“bar(バー)”での話です。どのようなバーかというのは、この歌詞から分かります。

 

Oh, how well I remember the old Bull and Bush
Where we used to go down of a Sattaday night,
―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Growltiger’s Last Stand”(作詞:T.S. Eliot)

 

“Oh, how well I remember”というのは、「あぁ、どれだけ~のことをよく覚えていることか」といったニュアンスの言葉です。どこのことを覚えているのかというと、“the old Bull and Bush”です。これが何のことなのかよく分からなかったので調べてみると、次のような記述がありました。

 

The Old Bull and Bush is a Grade II listed public house near Hampstead Heath in London which gave its name to the music hall song “Down at the old Bull and Bush” sung by Florrie Forde.

The Old Bull and Bush is managed by Mitchells and Butlers under the Premium Country Dining Group brand. The interior was renovated to a modern, gastropub style with an openly visible kitchen and reopened to the public on 24 March 2006. Until the introduction of the English smoking ban on 1 July 2007, The Bull and Bush was one of the few completely smoke-free pubs in London.
the old Bull and Bush(wikipedia)

 

まず初めに書かれているのは「The Old Bull and Bushはグレード2のパブリックハウス」だということです。パブリックハウスが何なのかを調べてみたところ、これはいわゆるパブだということが分かりました。

 

A pub, or public house, is an establishment licensed to sell alcoholic drinks, which traditionally include beer (such as ale) and cider. It is a relaxed, social drinking establishment and a prominent part of British, Irish, Breton, New Zealand, Canadian, South African and Australian cultures. In many places, especially in villages, a pub is the focal point of the community.
Pub(wikipedia)

 

“pub”もしくは“public house”は、アルコールを提供することの許可を得ている建物で、ビールやサイダーのようなものが飲める場所とのこと。とても居心地の良い雰囲気の社交場で、英国、アイルランド、ブルトン(フランス北西部)、ニュージーランド、カナダ、南アフリカ、オーストラリアの文化で特によく目にするものだということです。特に村では集まりの中心になるような場所だったようですね。

では「グレード2」とはどういうことなのでしょうか?wikipediaで調べてみると、次のように説明されていました。

 

There are three types of listed status for buildings in England and Wales:
Grade I: buildings of exceptional interest.
Grade II: particularly important buildings of more than special interest.
Grade II: buildings that are of special interest, warranting every effort to preserve them.
Listed building(wikipedia)

 

どうやら英国とウェールズには、保護すべき建物のグレードとして3種類あるようです。グレードを上から順に説明すると、次のようになります。

 

  1. 特別な興味を引くような建物
  2. 一般的に特別(またはそれ以上)な興味を引く重要な建物
  3. 特別な興味を引く建物で、正当な理由でその維持に努めるもの

 

日本でいうところの重要文化財のようなものかと思います。

少し話が横道にそれてしまいましたが、the old Bull and Bushというのは重要文化財級の建物で、ロンドンの Hampstead Heath(ハムステッドヒース)にあるということです。そして、Premium Country Dining Groupというブランドによって運営されており、内装はリフォームされてモダンな雰囲気になっているようですね。そしてthe old Bull and Bushは実在するお店で、レンガ造りの建物になっています。これは行ってみたい!

ちなみに歌詞内に“A very nice house, from basement to garret(地下から屋根裏部屋までとても素敵な建物で)”とありますから、かなり素敵な空間なんだろうなと思います。

 

 

ボスとオウムとバーテンについて

では、そのバーで良く合っていたそれぞれの登場人物がどういう存在なのかを見ていきましょう。

 

Mr. Clark

Mr. Clarkのことは“the boss”と説明がありますので、誰かのボス(上司)だということは明らかです。“it came with a rush,  for the boss, Mr. Clark”つまり「それはボスであるミスター・クラークのところへすぐさまやって来た」とあるりますが、この「それ」というのは文脈から捉えると“parrot(オウム)”のことだと分かります。

Mr. Clarkに関する話だけ抜き取るとこうなります。

 

  • he was very polite…彼はとても親切だった

 

Mr. ClarkとはオウムであるBilly M’Cawのボスで、とても親切な猫だったということですね。海賊とよく一緒にいる鳥の種類ってなんとなくオウムだなというイメージがあると思うのですが、そう考えると、Mr. Clarkもグロールタイガーのような海賊で、このバーに通い詰めていたのだと推測できます。

 

Billy M’Caw

Billy M’Cawはオウムです。彼について書かれている部分を見てみましょう。

 

  • when anything happened, it came with a rush, for the boss…どんな些細なことでも、起こったことはすぐにボスに伝えにすぐさまやってくる
  • the parrot named Billy M’Caw, that brought all those folk to the bar…名前はビリー・マコウと言い、彼は各地の民謡をバーに持ち帰ってくれた
  • Ah! He was the life of the bar…あぁ、彼はバーの中心にいる奴だった

 

オウムのBilly M’CawはMr. Clarkの手下で、情報を彼に常に持ってくる役目を担っていたんですね。そんな彼はグロールタイガーが通うバーで常に中心にいる存在だったということです。

 

Lily LaRose

Lily LaRose(リリー・ラローズ)は女バーテン。“lily”は「ユリ」、“rose”は「バラ」ですがどんなメス猫なのでしょうか。

 

  • she was a girl what had brains in her head…頭のキレる女の子だった
  • If it came to an argument, or a dispute, she’d settle it offhand with the toe of her boot or as likely as not put her fist through your eye…口論が起きれば即座にブーツのつま先で辞めさせるか、目にパンチを食らわせる
  • when we was happy and just a bit dry, or when we was thirsty, and just a bit sad, she would rap on the bar with that corkscrew she had…俺たちが幸せでちょっと喉が渇いて、ちょっと寂しい時、彼女は手に持っているコルクの栓抜きでテーブルをトントン叩いた

 

彼女は恐らくとても機転の利く子だったのでしょう。客同士の喧嘩が起これば仲裁に入るし、客がセンチメンタルになっている時はリズムをとったりして、空間を和ませているんですね。

 

 

オウムの踊りと歌と、女バーテンのリクエスト

そんなリリーは、いつもビリーが来るとこう言っていました。

 

She’d say “Billy! Billy M’Caw! Come give us,
Come give us a dance on the bar.”
And Billy would dance on the bar, and Billy would dance on the bar.
―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Growltiger’s Last Stand”(作詞:T.S. Eliot)

 

「ビリー・マコウ、こっちに来てダンスを見せてよ。」とリクエストするんですね。そうするとビリーが踊る…どんなに愉快な空間だったことでしょう。

そうするとグロールタイガー達がどうなるかというと、

 

And then we’d feel balmy, in each eye a tear,
And emotion would make us all order more beer.
Lily, she was a girl what had brains in her head;
She wouldn’t have nothing, no not that much said.
―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Growltiger’s Last Stand”(作詞:T.S. Eliot)

 

とても清々しい気持ちになって、涙を目に浮かべて、そんな気分がよりビールを頼みたくなる気分になってしまう訳です。これは女バーテンリリーの戦略かもしれませんね。そしてリリーはビリーにこんなリクエストもしています。

 

And say “Billy! Billy M’Caw!
Come give us a tune on your pastoral flute!”
―ミュージカル “CATS” より “Growltiger’s Last Stand”

 

“Billy! Billy M’Caw!
Come give us a tune on your moley guitar!”
―ブロードウェイミュージカル “Cats” より “Growltiger’s Last Stand”(作詞:T.S. Eliot)

 

「いなか町の音楽を聴かせてよ」と「ギターを弾いてみせてよ」ですね。いずれも昔懐かしさを感じさせそうなリクエストです。そしてやっぱりグロールタイガー達はビールを頼みたくなってしまうという…。

売り上げを上げるための戦略であると同時に、グロールタイガー達の羽を伸ばす場所を提供するリリーは、なかなか隅に置けない存在だなと思います。

 

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