ハミルトンが担当した『ザ・フェデラリスト』の執筆数がすごい!

ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より“Non-Stop”の英語歌詞を見てみると、バーが曲の中盤で歌う“Hamilton wrote the other fifty-one!”がとても耳に残ります。

直訳すると「ハミルトンはその他の51を書いた!」という意味ですが、ハミルトンは何を書き、バーは何に驚いているのでしょうか?

【ブロードウェイミュージカル“Hamilton”/“Non-Stop”/作詞:Lin-Manuel Miranda】

独立戦争が終わり、憲法に着手するアメリカ

Non-Stop”は1幕終わりの曲で、独立戦争に勝利しアメリカ独立を手にした後のハミルトンとバーとのやりとりから始まります。

Non-Stop”はそのタイトルの通り「ノンストップ」なハミルトンの行動を主にアーロン・バーの視点で歌われていますが、1幕の集大成とも言えるこの音楽の構成は何とも言えずカッコイイんです!今までの曲で歌われてきた数々のフレーズのが折り重なるように歌われるパートは、感無量です。それぞれの未来に対する想いと交差する想いのまとめ上げかたは、もはや天才的としか言いようがありません。

私は、この曲の後半を聴くだけで、興奮で泣きます。必ず。

曲の構成については別の記事で紹介するとして…本題に入りましょう。この曲の中盤で、アーロン・バーが次のように歌っているところがあります。

 

Alexander joins forces with James Madison and John Jay to write a series
of essays defending the new United States Constitution,
entitled The Federalist Papers.
The plan was to write a total of twenty-five essays,
the work divided evenly among the three men. In the end,
they wrote eighty-five essays,
in the span of six months. John Jay got sick after writing five.
James Madison wrote twenty-nine. Hamilton wrote the other fifty-one!
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Non-Stop”(作詞:Lin-Manuel Miranda)

 

「戦争に勝って独立したアメリカが次にすべきことは憲法をつくることだ」と主張していたハミルトンは『ザ・フェデラリスト・ペーパーズ(The Federalist Papers)』と題されたアメリカ合衆国憲法(United States Constitution)をジェームス・マディソン、ジョン・ジェイの3人で書くことになります。

そのことを簡潔に歌っているのがこの歌詞なのですが、中でもいつも耳に残っていたフレーズが“Hamilton wrote the other fifty-one!”でした。直訳すると「ハミルトンはその他の51を書いた!」という意味ですが、バーの歌い方からすると「驚きを隠しきれない」ような歌い方になっています。

何がそんなに凄いのかは調べる間もなく、バーが歌ってくれています。予定では3人で等分に割り当てた25篇(合計75篇)が、最終的には6ヶ月で85篇となり、結果的に担当した篇の数は次の通りだというのです。

 

  • John Jay got sick after writing five…ジョン・ジェイは5篇執筆した後、病に倒れた
  • James Madison wrote twenty-nine…ジェームス・マディソンは29篇執筆した
  • Hamilton wrote the other fifty-one…ハミルトンは(なんと)残りの51篇を執筆した

 

ジェイが5篇、マディソンが29篇、そしてハミルトンは断トツの51篇…!これは全体の2/3の量です。

アーロン・バーの歌い方すると「あいつ、残りの51篇を書きやがった!」としても過言じゃないでしょう。1篇当たり相当の文章量であるにもかかわらず、たった半年で51本仕上げる…想像を絶しますね。

 

“The Federalist Papers(ザ・フェデラリスト・ペーパーズ)”とは

では、そもそも『ザ・フェデラリスト・ペーパーズ』とは何なのでしょうか?

 

『ザ・フェデラリスト』(英: The Federalist Papers)は、アメリカ合衆国憲法の批准を推進するために書かれた85編の連作論文である。これら論文のうち77編は、1787年10月から1788年8月まで「ザ・インデペンデント・ジャーナル」と「ザ・ニューヨーク・パケット」に連続して掲載された。これに他の8編を加えて編集したものが、『ザ・フェデラリスト:すなわち新憲法』と題されて1788年に2巻本でJ. & A. マクリーンによって刊行された。この連作の正しい題は『ザ・フェデラリスト』であり、『ザ・フェデラリスト・ペーパーズ』という題は20世紀になってから使われるようになったものである。
『ザ・フェデラリスト』は、憲法で提案されている政府の仕組みについての哲学や動機を明確で説得力有る文章で綴られているために、現在でもアメリカ合衆国憲法の解釈では一次資料であり続けている。論文の筆者達は憲法の批准について賛成票を投じさせる影響力を持つことと、将来的な憲法の解釈を形作ることの双方を望んだ。歴史家のリチャード・B・モリスに拠れば、それらは「比類のない憲法の解説であり、後のアメリカ人作家による作品のどれよりも幅でも奥行きでも凌駕する政治学の古典である」としている。
ザ・フェデラリスト(wikipedia)

 

もともとは『ザ・フェデラリスト』という名前で、1冊の本として出版されたわけではなく、新聞にて連載されていたエッセイだったようです。それが後に本になったんですね。

政治学の古典ともいうべき書物で、未だに重要な資料として使われているわけですから、それを手掛けた3人、そして特にその2/3を手掛けたハミルトンはものすごい功績を残したと言えるでしょう。

 

 

もとは名前が伏せられていた?

フェデラリストは全85篇で、その内の2/3はハミルトンが書き上げましたが、当時執筆者は極秘でした。ですから1人で書いているか、複数人で書いていたかも分からなかったんですね。

 

論文の掲載当時、執筆者は極秘扱いとされたが、明敏な評論家はそれがアレクサンダー・ハミルトン、ジェームズ・マディソン、ジョン・ジェイの3人の可能性が強いと推量した。1804年にハミルトンが死んだ後、彼が書き上げた論文のリストが公開された。それに拠ると論文の3分の2強はハミルトンが書いたとされており、マディソンの作品と見られていたものまで含んでいた(第49-第58、第62および第63の各篇)。1944年にダグラス・アデアが行った学術研究で下記のように執筆者を仮定した。これは1964年に行われた文章のコンピュータ解析でも裏付けられた。
アレクサンダー・ハミルトン(計51編、第1、第6-第9、第11-第13、第15-第17、第21-第36、第59-第61、第65-第85)
ジェームズ・マディソン(計29編、第10、第14、第37-第58、第62、第63)
ジョン・ジェイ(計5編、第2-第5、第64)
第18篇から第20篇はマディソンとハミルトンの共作だった。
ザ・フェデラリスト(wikipedia)

 

しかし、ハミルトンがバーとのデュエルでこの世を去った後、彼が担当したリストが公開されたそうです。評論家がマディソンと当たりをつけていたものがハミルトン担当であったり、今となってはコンピューター解析で裏付けがとれていんですから凄いですよね。

自分の名前が世間に知られないと分かっていながら、これだけ多くの篇を担当したのは、独立後のアメリカに強い想いを抱いていた以外に他ならないでしょう。

 

その51篇とは?

では、最後にハミルトンが担当した篇をリスト化してみます。ざっと見だだけでも多いですよね!『ザ・フェデラリスト』を読んだら、また感想を追記します。

※日本語に訳している部分は「ザ・フェデラリスト (岩波文庫) [ アレグザンダー・ハミルトン/斎藤眞・中野勝郎 訳]」を参考にしています。

 

    1. (1)General Introduction…序論-論述の目的と性格
    2. (6)Concerning Dangers from Dissensions Between the States
    3. (7)The Same Subject Continued: Concerning Dangers from Dissensions Between the States
    4. (8)The Consequences of Hostilities Between the States
    5. (9)The Union as a Safeguard Against Domestic Faction and Insurrection…連邦共和国の利点-モンテスキューの連邦共和国論
    6. (11)The Utility of the Union in Respect to Commercial Relations and a Navy…連邦共和国と海洋国家
    7. (12)The Utility of the Union In Respect to Revenue
    8. (13)Advantage of the Union in Respect to Economy in Government
    9. (15)The Insufficiency of the Present Confederation to Preserve the Union…連合規約の欠陥-邦連合としてのアメリカ
    10. (16)The Same Subject Continued: The Insufficiency of the Present Confederation to Preserve the Union
    11. (17)The Same Subject Continued: The Insufficiency of the Present Confederation to Preserve the Union
    12. (21)Other Defects of the Present Confederation
    13. (22)The Same Subject Continued: Other Defects of the Present Confederation
    14. (23)The Necessity of a Government as Energetic as the One Proposed to the Preservation of the Union…連邦の維持と強力な権限
    15. (24)The Powers Necessary to the Common Defense Further Considered
    16. (25)The Same Subject Continued: The Powers Necessary to the Common Defense Further Considered…内政における連邦政府の役割
    17. (26)The Idea of Restraining the Legislative Authority in Regard to the Common Defense Considered
    18. (27)The Same Subject Continued: The Idea of Restraining the Legislative Authority in Regard to the Common Defense Considered
    19. (28)The Same Subject Continued: The Idea of Restraining the Legislative Authority in Regard to the Common Defense Considered…連邦共和国内における軍事力の行使
    20. (29)Concerning the Militia
    21. (30)Concerning the General Power of Taxation
    22. (31)The Same Subject Continued: Concerning the General Power of Taxation
    23. (32)The Same Subject Continued: Concerning the General Power of Taxation
    24. (33)The Same Subject Continued: Concerning the General Power of Taxation…「必要にして適切」条項と「最高法規」条項
    25. (34)The Same Subject Continued: Concerning the General Power of Taxation
    26. (35)The Same Subject Continued: Concerning the General Power of Taxation
    27. (36)The Same Subject Continued: Concerning the General Power of Taxation
    28. (59)Concerning the Power of Congress to Regulate the Election of Members
    29. (60)The Same Subject Continued: Concerning the Power of Congress to Regulate the Election of Members…代表と有権者との関係
    30. (61)The Same Subject Continued: Concerning the Power of Congress to Regulate the Election of Members
    31. (65)The Powers of the Senate Continued
    32. (66)Objections to the Power of the Senate To Set as a Court for Impeachments Further Considered
    33. (67)The Executive Department
    34. (68)The Mode of Electing the President
    35. (69)The Real Character of the Executive
    36. (70)The Executive Department Further Considered…強力な行政部-その単一性
    37. (71)The Duration in Office of the Executive…大統領職の任期
    38. (72)The Same Subject Continued, and Re-Eligibility of the Executive Considered
    39. (73)The Provision For The Support of the Executive, and the Veto Power
    40. (74)The Command of the Military and Naval Forces, and the Pardoning Power of the Executive
    41. (75)The Treaty Making Power of the Executive
    42. (76)The Appointing Power of the Executive
    43. (77)The Appointing Power Continued and Other Powers of the Executive Considered
    44. (78)The Judiciary Department…司法部の機能と判事の任期
    45. (79)The Judiciary Continued
    46. (80)The Powers of the Judiciary
    47. (81)The Judiciary Continued, and the Distribution of the Judicial Authority
    48. (82)The Judiciary Continued
    49. (83)The Judiciary Continued in Relation to Trial by Jury
    50. (84)Certain General and Miscellaneous Objections to the Constitution Considered and Answered
    51. (85)Concluding Remarks…結語
      The Federalist Papers(wikipedia)

 

ハミルトンは何歳だった?

ちなみに『ザ・フェデラリスト』を執筆した時のハミルトンの年齢ですが…

 

When he conceived and wrote The Federalist Papers, Hamilton was thirty-two years old. He had three children and a fourth on the way, and was working as a lawyer to support his growing family.
The Hamilton Cookbook: Cooking, Eating, and Entertaining in Hamilton’s World(p.9

 

今、この記事を書いている私の年齢32歳と同じじゃーん!この年齢で一国の将来を決定づける憲法の作成に関わるとは…。恐れ入りました。

 

 

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