エポニーヌにとって大きく異なる、夜と朝の景色とは

帝劇ミュージカル『レ・ミゼラブル(Les Misérables)』より“On My Own(オン・マイ・オウン)”の英語歌詞を見てみると、エポニーヌの孤独が歌われていることが分かります。

かなり忠実に訳された帝国劇場版ですが、微妙に異なるところや描き切れていない部分を詳しく説明していきます。今回は中ほどで歌われるパートです。

【ブロードウェイミュージカル“Les Misérables”/“On My Own”/作詞:Herbert Kretzme * 東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』/「オン・マイ・オウン」/訳詞:岩谷時子】

エポニーヌにとっての夜とは、唯一身も心も自由になれる時間だと以前記事で紹介しました。人も街も眠る夜、エポニーヌは1人目を覚ましマリウスと共にいることを空想していましたよね。

 

エポニーヌにとっての夜はどのような景色なのか、そして夜が明けた後の朝はどのよな景色なのかということが、この曲の後半で対比されながら歌われています。

それによって際立つ彼女の孤独感とは、どのようなものなのでしょうか?

 

まず、夜から見ていきましょう。ここではエポニーヌの目に映る景色が歌われています。

 

In the rain,
The pavement shines like silver.
All the lights
Are misty in the river.
In the darkness,
The trees are full of starlight,
And all I see is him and me for ever and forever.
―ブロードウェイミュージカル “Les Misérables” より “On My Own”(作詞:Herbert Kretzmer)

 

帝国劇場版と対比してみると、それぞれ次のように訳されていることが分かります。

 

  • In the rain, the pavement shines like silver…雨の歩道は銀色
  • All the lights are misty in the river…川も妖しく光る
  • In the darkness, the trees are full of starlight…闇は樹に星明り
  • And all I see is him and me for ever and forever…見えるのはどこまでも二人だけ

 

ここで英語版と微妙に意味が異なるところを見ていきましょう。

 

歩道

“In the rain”は「雨の中で」という意味で、“shines like silver”の“like”は「~のように」ですから、1つ目は「雨の中、歩道は銀のように輝く」が直訳となります。

言いたいことはほとんど変わりませんが、「銀色に輝く」のと「銀のように輝く」のとではニュアンスが若干異なりますよね。英語版では「銀のように」となっており、エポニーヌには手に届かない高価なもので表現されているところが、より切なさを際立たせているように感じます。

 

2つ目は“misty”がポイント。

“misty”とは「霞(かすみ)のかかった、霧の深い、薄ぼんやりとした」ですから、「全ての明かりは川の中で薄ぼんやりとしている」が直訳です。光が川の中に溶け込んでいる様子を想像して頂けるのではと思いますが、これを意訳して「川も妖しく光る」と表現されているんですね。

 

木々

“In the darkness”は「暗闇の中で」という意味で、“the trees are full of starlight”は「木々は星明りで満たされている」となります。ここの日本語訳「闇は樹に星明り」は素晴らしい表現ですね。この中でも特に好きな訳です。

 

ふたり

そして4つ目。“And all I see is”は「そして私に見える全てのものは」という意味なので、それ以外は見えないというニュアンスが含まれます。

では何しか見えないのかというと“him and me for ever and forever(彼と私がどこまでも永遠に)”です。

“In the rain”や“In the darkness”から分かる通り、エポニーヌがいる世界は決して明るい場所ではありません。しかしそこに見えるあらゆる種類の輝きは、どれも彼女にとって暖かく、美しいものだったでしょう。

しかしこれは、想像の中でマリウスと共にいる時だけの景色です。

 

 

では、夜が明けてしまったら、その景色はどのように変わるのでしょうか?

 

I love him,
But when the night is over,
He is gone,
The river’s just a river.
Without him,
The world around me changes.
The trees are bare and everywhere
The streets are full of strangers.
―ブロードウェイミュージカル “Les Misérables” より “On My Own”(作詞:Herbert Kretzmer)

 

まず、景色の前に…エポニーヌはここで初めてはっきりと“I love him”と歌うんですよね。しかし、このフレーズからが辛い。これに続く単語が“but(でも)”ですから、現実が一気に突き付けられる感じですね。

帝国劇場版と対比してみると、このようになっています。

 

  • But when the night is over, he is gone…でも夜明けにはいない
  • The river’s just a river…川もただの川
  • Without him the world around me changes…あの人 いない世界は
  • The trees are bare and everywhere the streets are full of strangers.…街も樹もどこも他人ばかりよ

 

夜が終われば、彼は消えてしまう(when the night is over, he is gone)。朝になって彼がいなくなって(without him)しまえば、私を取り巻く世界は変わってしまう(the world around me changes)と歌うエポニーヌは、次のように歌っています。

 

歩道

歩道に関して書かれているのは“The streets are full of strangers”の部分です。“stranger”とは「知らない人」という意味で、「歩道は知らない人で埋め尽くされている」という意味になります。空想の時間は終わり、エポニーヌの傍にマリウスはいない…エポニーヌを取り巻くのは彼女にとって縁のない人たちばかりだということです。

“full of ~(~でいっぱい)”では、「大勢の人に囲まれているが、それらは自分にとって必要な人間たちではないこと」が歌われており、より孤独感が際立っていますね。

 

夜には川に溶け込むようだったライトも、朝には消えてなくなり「ただの川」となってしまいます。“just”は強調ですから、ここは日本語訳通りの意味になります。

 

木々

夜の闇で、木には星明りが美しかった景色も、朝になれば“The trees are bare(木々はあからさま)”です。“bare”には「あらわになる、むき出しになる、飾り気がない」という意味があり、こちらも「木はただの木」であるニュアンスが伝わってきます。

 

いかがでしたか?

夜は夢を思い描くことは出来ても、朝になれば歩道、川、木々現実があらわになり現実が付きつけられる様子が、心が痛むほど伝わってきますよね。

そして、2人でともに描く未来も、朝になれば見られなくなる…そんなことも想像できます。

このように夜と朝で表現している歌が他にもあります。そうです、『キャッツ』の「メモリー(Memory)」です。是非こちらの歌詞とも見比べてみてくださいね。

 

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