劇団四季版の「陽ざしの中へ」では歌われていないカジモドの気持ち②

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「陽ざしの中へ(Out There)」の英語歌詞を見てみると、劇団四季版の歌詞からは知ることの出来ないカジモドの気持ちが沢山書かれていると分かります。

英語歌詞を1つ1つ見ていきながら、カジモドの気持ちをもっともっと深く知っていきましょう。

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歌詞のおさらい

 

この曲は本作品の中で一番メジャーな曲でしょう。

アニメ版を観た際一番印象に残ったのがこの曲で、『ノートルダムの鐘』には何て素晴らしい曲があるのだろうと感銘を受けたのを覚えています。

そして今回、目を潤ませながら向き合ったのがこの歌詞です。

外の世界で過ごす1つ1つのことが彼にとっての憧れで、自分が外に出たらどんな風に1日を過ごしたいかを歌い上げる曲

彼の現実と理想とが絶妙に比較される歌詞を追いかけながら、カジモドの気持ちをしっかりと理解しましょう。

 

英語版

 

And out there
Living in the sun
Give me one day
Out there
All I ask is one
To hold forever

Out there
Where they all live unaware
Of what I’d give
What I’d dare
Just to live one day
Out there

―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Out There” (作詞:Stephen Schwartz)

 

劇団四季版

 

夢が叶うなら
一日でいい
街の中で
暮らしたい
どんなことが起ころうとも
僕は行きたい
陽ざしの中へ

―劇団四季ミュージカル 『ノートルダムの鐘』 より 「陽ざしの中へ」(訳詞:高橋知伽江)

 

サビの部分ですね。

ここはシンプルに、カジモドがどれだけ外の世界へ出たいかということが歌われている内容になっています。

しかも「たった1日で良い」と歌っているところがポイントです。

劇団四季版では英語版を大きく解釈し、1つ1つの意味を忠実に訳してはいません。

カジモドがどんなに外の世界で暮らしたいか」というところに重点を置いて訳されています。

それでは1つずつ説明していきます。

 

カジモドの一日に対する思い

 

劇団四季版では「一日で良い」というフレーズは1回しか出てきませんが、英語版ではこのパートで3回も出てきます。

 

  1. Give me one day … 僕に一日与えてくれ
  2. All I ask is one/To hold forever … 僕が願うのは、一生抱き続けられるようなたった一日
  3. Just to live one day/Out there … 外の世界でたった一日を過ごすために

 

曲を追うごとに「一日」に対する思いが強くなっていくのがお分かりいただけたのではないかと思います。

特に注目頂きたいのは3つ目の “Just to live one day/Out there” の部分が

 

  • Where they all live unaware
  • Of what I’d give
  • What I’d dare

 

の3行を受けているということです。

 

 

みんなは知らない

 

ここに出てくる “there” というのは、カジモドが日々見ている外で暮らすパリの人々のことです。

そんな彼らは “live unaware” だと言っていますから「何も知らずに生きている」つまり「何気なく毎日を過ごしている」ということになります。

何を知らずに過ごしているのかというと “Of what I’d give/What I’d dare” で、カジモドがそのたった1日を経験するために「何を投げうっても良いか、何に挑んでも良いか」ということです。

パリの街中を歩く人々はみな何も知らずに生きている、僕が1日を外で過ごすことが出来るならば、どんなものを投げうっても良い、どんなことに挑んでも良い…ということを歌っているのです。

カジモドが、どれほどの強い想いで外で過ごす1日を得たいのかということが伝わってくるのではないでしょうか?

 

Out Thereの意味

 

“Out There” というのはニュアンス的に「外の世界」となりますが、今回紹介しているパートでの “Living in the sun(太陽の下で過ごす)” というのは、カジモドが今いる「中の世界」と憧れている「外の世界」を比較する上で、とても象徴的な表現です。

「中の世界」には太陽はありません。

そしてカジモドが「外の世界」に踏み出した時、初めて太陽を感じることが出来るのです。

そういった点も踏まえて考えると、何故この曲題 “Out There” が「陽ざしの中へ」と訳されたのかを考えるきっかけになります。

何故「陽ざしの中へ」と訳されたのかについては、次の記事で考察していますので、是非併せてご覧くださいね。

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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