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『レント』の“Over the Moon”を徹底的に考える②

東宝ミュージカル『レント(RENT)』より“Over the Moon”の英語歌詞を見てみると、その内容は意味不明で理解することが非常に難しいと分かります。

しかし、モーリーンがパフォーマンスで主張したかったことが何なのかを突き詰めながらこの歌詞を読み込んでいくと、全貌が見えてきたのです。今回はこの曲の序盤について解説します。

【ブロードウェイミュージカル“RENT”/“Over The Moon”/作詞:Jonathan Larson】

“Over the Moon”はどういう曲なのか?

さて、この難解な歌詞に真っ向から向き合おうと考えた私ですが、それにはあるきっかけがありました。モーリーンが歌っている内容の端々から、ベニーに対する批判や軽蔑ともとれる表現の数々を感じ取ったのです。

どうやら難解な歌詞の裏には、痛烈な主張がありそうだ…ということを嗅ぎつけたのです。

そこで色々と調べてみると、この曲はマザーグースの詩の1つ“Hey Diddle Diddle”が元になっているらしいということが分かりました。

“Hey Diddle Diddle”とはどんな詩で、どのように“Over the Moon”と関係しているのかについてはこちらの記事をご覧ください。

 

そして、上の記事でも名言している通り、これ以降で解説していく内容はあくまでも私なりの解釈です。ネット上で交わされていた様々な解釈も織り交ぜながら記事を書いていきますので、もし「こういった解釈もあるのではないか」といったご意見・ご感想がありましたら、是非コメントを残してくださいね。

それでは今回は曲の序盤を見ていきましょう。歌詞はこのようになっています。

 

MAUREEN (in front of a microphone):
Last night I had a dream. I found myself in a desert called Cyberland.
It was hot. My canteen had sprung a leak and I was thirsty.
Out of the abyss walked a cow — Elsie.
I asked if she had anything to drink.
She said, “I’m forbidden to produce milk.
In Cyberland, we only drink Diet Coke.”
She said, “Only thing to do is jump over the moon”
“They’ve closed everything real down … like barns, troughs, performance spaces …
And replaced it all with lies and rules and virtual life.
But there is a way out …
―ブロードウェイミュージカル“RENT”より “Over The Moon”(作詞:Jonathan Larson)

 

難しい単語はさほど多くないパートですが、状況理解が難しい出だしです…。しかし、1つずつ紐解いていく行くと、浮き彫りになってくるものがあるはずです。早速見ていきましょう。

 

“サイバーランド”とはどこなのか

最初に気になるのは、第一フレーズの一番最後に書かれている“Cyblerland”です。辞書で調べても、このような単語は出てこないので、造語であるということが分かります。

文字通りに読むとこうなります。

 

  • Last night I had a dream. I found myself in a desert called Cyberland…昨晩、夢を見たの。私はサイバーランド(Cyberland)と呼ばれる砂漠にいたわ。
  • It was hot. My canteen had sprung a leak and I was thirsty…とても暑かった。私の水筒(canteen)は漏れてしまっていて、喉が渇いていた。

 

夢の中で見知らぬ土地にいるというのはありそうなことなのですが、“cyber”という単語に注目してみると、このような意味があると分かりました。

 

  • cybler…コンピュータに関わる、インターネット(上)の

 

他の語に付いて、インターネットが形成する情報空間(サイバースペース)に関連した、の意を表す。
サイバー(コトバンク)

 

この言葉は「サイバーテロ」や「サイバーアタック」という言葉で馴染みがあるのではないかと思います。ネットを介してテロを起こしたり、ウイルス攻撃をしたりするすることを指す訳ですが、いずれも「ネット上」という共通点があります。そういった点から考えると「サイバーランド」というのは、「電脳世界」「ネット世界」「人工世界」のことを言っていて、転じて「感情のない世界」のようなことを言っているのではないかと思います。

何故このようにマイナスイメージの世界を感じ取ったかというと、その世界は“desert”であると歌われているからです。“desert”は「砂漠」という意味ですが、それ以外に次のような意味もあります。

 

  • desert…(ラテン語では)見捨てられた場所

 

つまりモーリーンは、感情の行き交わない、サイバーランドという見捨てられた土地にいる…ということなのではないでしょうか。そして、つまりそれはベニーから立ち退きを強いられている状況を指していると言えるでしょう。

そんなことを考えていると、ある方の次のような意見を見つけました。

 

Cyberland is sterile and cold–it is a business. It is not a home.
broadway world

 

「サイバーランドとは、創造性に乏しく、冷たいビジネスのこと。温かな家ではない。」と言っています。これは的を射た意見ですね。まさに、ビジネスの為に立ち退きを迫っているベニーは「血も涙もない、感情のない世界」の人間ですもんね。

続くフレーズはそのまま解釈しても良さそうなのですが、1点気になるのが“My canteen had sprung a leak(私の水筒は漏れてしまっていて)”の部分です。何故なら“canteen”には「水筒」以外に次のような意味もあるからです。

 

  • canteen…ナイフ・フォーク・スプーンのセット

 

先の記事でも説明している通り、“Hey Diddle Diddle”が元になっているこの歌詞には、共通の登場人物がいくつか出てきます。そして私の推測では、それらの登場人物が『レント』の登場人物を指しているはずなのです。

そこで、“Hey Diddle Diddle”にも“Over the Moon”にも登場する“spoon”と“dish”が、ボヘミアン達の中の誰かであった場合…“canteen”を「水筒」という表向きの意味と、裏の意味と両方で解釈する必要があるな…と感じています。

これについては、先を読み込んでみてその可能性が出てきた場合に、このページで追記させて頂きますね。

 

 

“Diet Coke”とは何の象徴か

では、次のフレーズを見ていきましょう。

最初の2行では「深い穴(abyssには「地獄・混沌」という意味も)の外にエルシィという雌牛が歩いていた」こと、モーリーンが「何か飲み物がないか」聞いたことが歌われています。すると、エルシィはこう言うんですよね。

 

  • She said, “I’m forbidden to produce milk…彼女(エルシィ)は言った、「私は牛乳を生産することを禁じられているの」
  • In Cyberland, we only drink Diet Coke.”…「サイバーランドでは、私達、ダイエット・コーラしか飲まないのよ」

 

普通、雌牛は乳が出ますよね。なのにそれが禁じられている。そしてこの世界ではコーラ(しかもダイエット・コーラ)しか飲まないのだと。そこで考えてみました、牛乳に対してのダイエット・コーラは次な違いがあるということを。

 

  • milk…牛乳/自然に生産されるもの
  • diet coke…ダイエット・コーラ/人工的に生産されるもの

 

つまり、自然が禁じられ、人工的なものが許されるという表現です。つまり、今回のモーリーンの自由な表現のようなものが抑制されているということを指しているのではないでしょうか?

次のような意見を見つけました。

 

Diet coke is a processed, chemically-altered drink. Milk is pure and from nature.
Maureen is stating that she would rather have her “natural” habitat and not the shiny, processed one that will come when Cyberland takes over the area.
broadway world

 

「ダイエット・コーラは、加工された人工的な飲料で、牛乳は自然で混じりけのないもの。モーリーンはサイバーランド(ビジネス)によって建て替えられた“キラキラに加工された”住まいよりも、“自然”な住まいを選択すると主張している。」とのことです。

なるほど、そういう見方もあるかもしれません。

私は文字通り「私達は自由な表現を禁じられている、ビジネスに占拠されたこのエリアでは人工的なことしかできないのよ」という解釈をしました。

 

“Jump over the moon”の意味は?

そしてそれに続くのがこのフレーズです。

 

  •  She said, “Only thing to do is jump over the moon”…彼女(エルシィ)は言った、「ただ1つやるべき事は、月を飛び越える事よ」と。

 

これは曲名にもなっているので、ものすごく悩みました。“over the moon”には「非常に幸せで、大喜びして」という意味があるのですが、どうもこの状況には当てはまらないな…と思ったんですよね。

そんなことを思っていると、後半“moon”という単語の部分でモーリーンが自分のお尻をバシッと叩く動作が目に入ったのです。(文末動画参照)

つまり“moon”には「月」以外に少なくとも「お尻」という意味があるはずだと思ったのです。そこで調べてみると、動詞でこのような意味がありました。

 

  1. 人の臀部を露出する(expose one’s buttocks to) (例)moon the audience …観客に向かって尻を出して見せる
  2. 無関心であるか空想的な状態で何もしていない(be idle in a listless or dreamy way)
  3. 起きている間に夢のような物思いまたは空想をもつ(have dreamlike musings or fantasies while awake
    moon(weblio)

 

…ほぅ!なるほど!これを発見した時はガッツポーズでしたね。

理由は2つ。

1つ目は“moon”が持つ「無関心であるか~」という意味です。これを“jump over the moon”に当てはめると「無関心で何もしない状況を飛び越えろ」という意味になると思いませんか?つまり、ベニーが立ち退きを迫る状況に対して、ただ無関心に嘆くのではなく立ち上がれ…と言っているのではないでしょうか?そしてモーリーンは体を張ってそのような行動に移しています。

2つ目は“moon”が持つ「人の臀部(お尻)を露出する」という意味です。モーリーンと言えば、この曲の後にある“La Vie Boheme”の冒頭でお尻をさらけ出すシーンがありますが、まさに“moon”にはそういう意味があるんですよね。

こうやって見ていくと、モーリーンと“moon”の関係は意図的だということが推測されます。何故なら、“Tango:Maureen”でモーリーンを説明する時に“moon over”という表現が出てくるからです。これがどういう意味かは次の記事で説明しているのでお読みくださいね。

 

ベニーが手を加えた後、どうなるか

ビジネスに支配されようとしている状況に対して、人間として自然な行為を行おうとしているモーリーン。そんな彼女はベニー達が今自分たちの生活している場所をどのようにしようとしているかを語ります。

 

  • “They’ve closed everything real down … like barns, troughs, performance spaces…彼らは全てを取り壊した。例えば納屋とか、かいばおけ(エサ入れ)とか、表現する場を
  • And replaced it all with lies and rules and virtual life…そしてそれらを嘘と、規律と、仮想生物と入れ替えてしまったの
  • But there is a way out …でも、出る方法はある

 

最初のフレーズは、雌牛に関することも織り交ぜながら「自分たちが生きていく場所を奪った」と痛烈に批判していることが分かります。言い換えれば、生活する場所、食事をする場所、そして自己表現をする場所を奪われたということでしょう。

次のフレーズはビジネスと通じるところがありますよね感情の行き交わないものが並べられていることが分かり、ここでも自然と人工の対立で表現されています。“virtual(虚像/空想)”の対義語は“real(実像/現実)”ですから、ベニー達のように利益を重視するような人間たちのことを「仮想生物」、そして自分を含めたボヘミアン達を「生身の人間(real life)」だと言いたいのではないでしょうか。

いかがでしたか?

しょっぱなからかなりボリュームのある記事でしたが、最後までお読み下さり有難うございました。続きもお楽しみに!

 


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