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『レント』の“Over the Moon”を徹底的に考える④

東宝ミュージカル『レント(RENT)』より“Over the Moon”の英語歌詞を見てみると、その内容は意味不明で理解することが非常に難しいと分かります。

しかし、モーリーンがパフォーマンスで主張したかったことが何なのかを突き詰めながらこの歌詞を読み込んでいくと、全貌が見えてきたのです。今回はこの曲の終盤(前半)について解説します。


【ブロードウェイミュージカル“RENT”/“Over The Moon”/作詞:Jonathan Larson】

“Over the Moon”はどういう曲なのか?

さて、この難解な歌詞に真っ向から向き合おうと考えた私ですが、それにはあるきっかけがありました。モーリーンが歌っている内容の端々から、ベニーに対する批判や軽蔑ともとれる表現の数々を感じ取ったのです。

どうやら難解な歌詞の裏には、痛烈な主張がありそうだ…ということを嗅ぎつけたのです。この記事は①から読んで頂くと理解しやすいので、是非最初からお読みくださいね。

 

そして、これ以降で解説していく内容はあくまでも私なりの解釈です。ネット上で交わされていた様々な解釈も織り交ぜながら記事を書いていきますので、もし「こういった解釈もあるのではないか」といったご意見・ご感想がありましたら、是非コメントを残してくださいね。

それでは今回は曲の終盤を見ていきましょう。歌詞はこのようになっています。

 

MAUREEN:
Then a little bulldog entered. His name (we have learned) was Benny.
And although he once had principles,
He abandoned them to live as a lap dog to a wealthy daughter of the revolution.
“That’s bull,” he said.
Ever since the cat took up the fiddle, that cow’s been jumpy.
And the dish and the spoon were evicted from the table — and eloped
She’s had trouble with that milk and the moon ever since.
Maybe it’s a female thing.
‘Cause who’d want to leave Cyberland anyway?…
Walls ain’t so bad.
The dish and the spoon for instance.
They were down on their luck – knocked on my doghouse door.
I said, “Not in my backyard, utensils! Go back to China!”
―ブロードウェイミュージカル“RENT”より “Over The Moon”(作詞:Jonathan Larson)

 

Over the Moon”ではこの終盤のパートを理解することが肝になってきます。1つずつじっくり見ていきましょう。

 

変わってしまったベニー

ここは記事の①でもお伝えする部分になりますが、“Benny”という名前を見受けられる通り、ベニーについて話している場面になります。

 

  • Then a little bulldog entered. His name (we have learned) was Benny.
  • And although he once had principles, he abandoned them to live as a lap dog to a wealthy daughter of the revolution.
  • “That’s bull,” he said.

 

ここではベニーを犬、特に“bulldog(ブルドッグ)”と表現しているのが印象的ですが、単なるドッグではなくブルドッグとなっているところがミソなんですね。

 

  • bulldog…ブルドッグ、がんこな人

 

ブルドッグは犬種であると同時に、「頑固な人」という意味も持ち合わせます。従って、1行目は「するとそこへ小さな頑固者(ブルドッグ)が入ってきた。彼は名前をベニーと言った。」となります。ここを頑固者を意味する“jarhead”、“bigot”、“mule”などにしなかったのは、『マザーグース』の“Hey Diddle Diddle”に犬が登場するからです。ただ、犬だけではこういった意味合いを持たないので、“bulldog”にしているんですね。

「彼はかつて信念を持っていたのに、途中で捨て去り、大改革の娘(daughter of the revolution)の腰ぎんちゃくになると決めたの」と物凄い皮肉を言っているのが2行目になりますが、ここで言っている“lap dog”というのは、次のような意味になります。

 

  • lap dog…(ひざにのせてかわいがる)愛玩(あいがん)用小犬、人の言いなりになる人,腰ぎんちゃく

 

ベニーをdogにで表現する上で、もう1つの皮肉な表現がこれですね。

「大革命の娘」というのはもちろんアリソンのことで、これはベニーが玉の輿に乗ったという大革命をやじった言い方でしょう。つまりボヘミアン精神を捨てさり、現実に落ち着いてしまった奴だと言い放っているんですね。

それに対してベニーは“That’s bull”と言った、と歌詞内にはあります。“bull”には次のような意味があります。

 

  • bull…たわごと、うそっぱち、ばかな!、牡牛

 

意味としては「そんなたわごとを言うな」と言ったニュアンスで理解すれば良いです。

ただ、この単語自体が“bulldog”とかかっていることや、“cow(雌牛)”に対しての“bull(牡牛)”になっているところがカッコイイ。“That’s bull”は普通に使われるフレーズではありますが、「たわごと」を意味する別のフレーズを使っても良かったはずです。数ある表現の中から“bull”の入ったこのフレーズを使う必要性をひしひしと感じます。

 

 

その他ボヘミアン達はどうなったか

“Hey Diddle Diddle”との比較

さあ、ここまでは何とか読み解けた気がしていますが、問題はここからなのです。猫とかスプーンとかお皿とか…本格的に『マザーグース』を引用している部分に突入していきます。

まず、下の部分を文字通りに理解してみましょう。ちなみに、直前が“That’s bull,”とカンマで終わっていることと、今回紹介する歌詞の終わりの方に“knocked on my doghouse door(犬小屋の戸を叩いた)”とありdogの話がmy(私)の話になっているので、これ以降もベニー目線での話になっているように思います。

 

  • Ever since the cat took up the fiddle, that cow’s been jumpy…猫がバイオリンを手に取って以来、雌牛は飛んだり跳ねたりするようになって
  • And the dish and the spoon were evicted from the table — and eloped…お皿とスプーンはテーブルから立ち退きを迫られ、駆け落ちした
  • She’s had trouble with that milk and the moon ever since…彼女はそれ以来そのミルクと月の問題を抱えていた
  • Maybe it’s a female thing…それは女性的問題だったのかもしれない

 

これを『マザーグース』の“Hey Diddle Diddle”と照らし合わせて見てみると、内容的にはほぼ同じなんですよね。

 

Hey diddle diddle,(ヘイ ディドゥル ディドゥル)
The cat and the fiddle,(ねことバイオリン)
The cow jumped over the moon;(雌牛が 月をとびこえた)
The little dog laughed(これはおもしろいと)
To see such sport(犬がわらった)
And the dish ran away with the spoon.(おさらはおさじと かけおちだ)
もっと知りたいマザーグース / 鳥山淳子 【本】(p.50)

 

表現や言い回しは変わっていますが、引用元と比較してみると次の部分がこのように変わっているということが分かりますね。左が“Hey Diddle Diddle”、右が“Over the Moon”です。

 

  • The cat and the fiddle → the cat took up the fiddle
  • The cow jumped over the moon → that cow’s been jumpy
  • The little dog laughed to see such sport → (前のブロックの)Then a little bulldog entered
  • And the dish ran away with the spoon → And the dish and the spoon were evicted from the table

 

ほぼ言っていることは変わりませんが、こんなことを言うためにモーリーンはステージに立っている訳ではありません。“dog”がベニーなのであれば、それ以外の登場人物も誰かに当てはまるはずです。そこを考えていきましょう。

 

誰が誰なのか

ここに何の登場人物がいるのか改めて整理してみると、次だと分かります。

 

  1. cat
  2. cow
  3. dog(bulldog)…ベニー(頑固者)
  4. dish
  5. spoon

 

“dog”はベニーだと分かりましたから、それ以外の4つも『レント』の登場人物の誰か知らに当てはまるはずですよね。『レント』に登場するのは…

 

  1. マーク
  2. ロジャー
  3. ミミ
  4. モーリーン
  5. ジョアン
  6. コリンズ
  7. エンジェル
  8. ロジャー

 

です。数が合わないですが、現実的にロジャーから迷惑をこうむっている人物を見ていくと段々見えてくると思います。

まず、“And the dish and the spoon were evicted from the table(お皿とスプーンはテーブルから立ち退きを迫られ)”の部分が一番分かりやすいのですが、立ち退きを迫られているのは紛れもなくマークとロジャーですよね。なので、初めはお皿とスプーンはそれぞれマークとロジャーだと思ったんです。そういう予想を立てている方が多い気がします。

しかし、気になったんですよね、あえて“and eloped(駆け落ちした)”と付け加えていることに。

駆け落ちって、恋愛感情を持った同士がするものなので、ここは男女ではないかな…と思ったのです。そうすると、もう1人この建物に住んでいる人がいますよね。

そうです、ミミです。

…ということは、これらの食器に当てはめているのは、ミミとロジャーなのではないでしょうか?

ちなみに、私の推測では、“dish(お皿)”がミミで、“spoon(スプーン)”がロジャーです。何故なら、それぞれ次のような意味があるからです。

 

  • dish…大皿、(皿に盛った)料理、食物、美人、くじく,やっつける
  • spoon…スプーン、さじ形のもの、いちゃつく恋人、ばか、まぬけ

 

“dish”は“She is a real dish.”などの言い方をするのですが、こういった場合「彼女は超美人だ」といった意味になります。従って、dishとは美人な女性を指す表現なんですよね。

一方の“spoon”にはこういう意味があるとは知りませんでした。ロジャーのことを「いちゃついている、ミミの恋人」と言い切れるわけではありませんが、ミミに恋をする相手であることに変わりはありませんから、ここはこの2人の組み合わせてで良いのではないかと思っています。

次に1つ戻って“Ever since the cat took up the fiddle, that cow’s been jumpy(猫がバイオリンを手に取って以来、雌牛は飛んだり跳ねたりするようになって)”の部分です。ここの表現では猫が行動を起こしたことで、雌牛に変化が起きたという訳なので、これらの動物も対になっていると考えています。

そこでまず“cow(雌牛)”なのですが、結論から先に言うと、私はこれは間違いなくモーリーンだと思っています。

この雌牛、曲の中では現状を打破するための道しるべを示す、女神のような存在じゃないですか?これって、行動を起こした先にいるモーリーン自身の姿だと思うんですよね。

この曲の中には2人のモーリーンがいて、1人は地獄のような現状(サイバーランド)で乾ききっているモーリーン、もう1人は行動を起こして自分の理想を手に入れたモーリーン。その2人が対峙し、自分で自分に問いかけ、奮い立たせているという内容だと思ったのです。

特にそう考えるきっかけとなったのが“jumpy”という単語です。

 

  • jumpy…飛んだり跳ねたりする、病的にぴくぴくする、神経過敏、興奮しやすい

 

“Hey Diddle Diddle”の方では、“jump”は単純に「飛び越える」という意味で使われていますが、この曲で使われる“jumpy”とは「神経過敏」だという意味だとピンと来ました。そう考えると、雌牛であるモーリーンは何かがきっかけでとても興奮しやすくなってしまったと発言しているのです。

ではその原因はというと、“Ever since the cat took up the fiddle(猫がバイオリンを手に取って以来)”なんですよね。ここがまた難しいのですが、catとfiddleにもそれぞれとても興味深い意味があります。

 

  • cat…猫、ネコ科の動物、陰口をきく女、意地悪女、ジャズ狂、男、やつ
  • fiddle…バイオリン、詐欺

 

“fiddle”は詐欺という意味がありますから、明らかに良い意味ではないですよね。モーリーンが良く思っていない相手はベニーしかいないので、これもベニーなのかなと思いました。

私は猫は男女それぞれの意味があったので、誰に当てるか悩んだのですが、“took up(take up)”に「奪う」という意味があることと、“cat”に「意地悪女」という意味があったので、これもよく思っていない相手なのかなと考え…「あぁ、アリソンか!?」と。

そうやって考えていくと、先に文字通りにご説明したところは、このような意味に様変わりするんですね。

 

  • Ever since the cat took up the fiddle, that cow’s been jumpy…アリソン(意地悪女)がベニー(詐欺師)を奪ってからというもの、モーリーン(雌牛)は興奮しやすくなって
  • And the dish and the spoon were evicted from the table — and eloped…ミミ(美人)とロジャー(恋人)はアパートから立ち退きを迫られ、駆け落ちした

 

 

雌牛の状況

ここまでは何だか良さそうです。次はどうでしょう?

 

  • She’s had trouble with that milk and the moon ever since…モーリーン(雌牛)はそれ以来ミルクと月の問題を抱えていた
  • Maybe it’s a female thing…それは女性的問題だったのかもしれない

 

難しいんですよね、ここをどう解釈するか…正直自信がありません。

1点確実なのは、モーリーンはベニーが変わってしまってからというもの、自分に落ち着きがなくなって体に変化が現れたということでしょう。

「乳を出すことが出来ない」というのはこの曲の冒頭でも歌っていたことですし、「月の問題」というのは恐らく以前記事にも書いた「この状況を飛び越えろ」ということだと思っているので、「モーリーン(雌牛)はそれ以来、自然にできるはずのことができなくなり、この状況を切り抜ける方法を考えなくてはならないという問題に直面した」ということを言いたいのかな…?

2つ目の“femal thing”はとても意味深長な言い方をしている部分ですが、これを「生理的な問題」と解釈するべきか「女性問題」と解釈するべきかが難しい。単純にホルモンバランスの崩れで「乳が出なくなった」と解釈するか、「ベニーの女性問題でこうなってしまった」と解釈するべきか。恐らく後者なんでしょうけれど、この1文で提供されている情報量が少なすぎて、何とも言えない…。

ちなみに話は戻りますが、“milk”には「金を搾り取る」という意味もあるらしく、これはこの歌詞と関係するのかすごく気になっています…。

 

食器と犬小屋と中国

さて、今回は記事が長くなっていますが、もうひと頑張りしてみましょう。モーリーンはその後このように問いかけています。文字通り見るとこうなります。

 

  • ‘Cause who’d want to leave Cyberland anyway?…というか、どちみち誰がサイバーランドから去りたいのか?
  • Walls ain’t so bad…壁はそんなに悪くはないし
  • The dish and the spoon for instance…例えばお皿とスプーンなんかは
  • They were down on their luck – knocked on my doghouse door…運が悪かっただけだろうし それで俺の犬小屋を叩いたんだ
  • I said, “Not in my backyard, utensils! Go back to China!”…だから俺は言ってやった「食器たち、俺の家の近くはダメだ!中国へ戻りな!」とね

 

はい、さっぱり意味が分かりません。正直限界が近づいて来ています…。

最初の2行はそのままの意味として捉えて良いと思うんですよね。「壁」というのは「住み心地」と解釈しても良いのではないでしょうか。つまり、「俺(ベニー)達が提供しているサイバーランド、そんなに住み心地悪くはないだろ?」という事だと思います。

3、4行目のお皿とスプーンはミミとロジャーなので、「駆け落ちしたけど、もともと運が底を尽きていて、そんな時に俺を頼ったんだ」と言っているのだと思います。でも、ここを出た者を今さら助けるなんて、お門違い。それで「ここはダメだ、別を当たりな!」といった具合に締め出しているのが5行目でしょうね。

ここで何故あえて“China”なのかを考えてみましたが、この単語には「中国」以外に他の意味があります。それがこれです。

 

  • China…陶磁器、瀬戸物、焼き物

 

中国を含めたアジアの食器って、陶磁器が多いですよね。それで陶磁器を英語では“China”と呼ぶのですが、この歌詞で登場するお皿もスプーンも、食器です。

アメリカで一般的に使われるこれらの食器はステンレスのものが多いでしょうが、この“Go back to China!”というのは「陶磁器に戻れ」という意味にもなる訳で、ちょっとしたジョークなのだと思います。「(ステンレス製の)食器が(陶磁器の)食器にかえる」というか…これこそナンセンスなギャグなのだと思うんですけれども、それ以上の深い意味をここから見出すことは出来ませんでした…すみません!

 

さて、最後に“Not in my backyard”です。これは1つのフレーズで次のような意味があるようですよ。

 

NIMBY(ニンビー)とは、英語: “Not In My Back Yard”(我が家の裏には御免)の略語で、「施設の必要性は認めるが、自らの居住地域には建てないでくれ」と主張する住民たちや、その態度を指す言葉である。日本語では、これらの施設について「忌避施設」「迷惑施設」「嫌悪施設」などと呼称される。
NIMBY(wikipedia)

 

つまり、「保育園が必要なのは分かるけど、うちの近所はイヤ」とか「刑務所が必要なのは分かるけど、うちの近所はイヤ」そういう態度ですね。よくありますよね、こういうことって。つまり、ベニーはボヘミアン達やホームレスのような存在を否定はしないが、うちの近所にいるのは嫌だ…ということを言いたいのかも…と思っています。

言い換えればこんな感じかなと思います。

 

  • ‘Cause who’d want to leave Cyberland anyway?…というか、どちみち誰がサイバーランドから去りたいのか?
  • Walls ain’t so bad…壁はそんなに悪くはないし
  • The dish and the spoon for instance…例えばミミとロジャーなんかは
  • They were down on their luck – knocked on my doghouse door…運が悪かっただけだろうし それで俺に助けを求めたんだ
  • I said, “Not in my backyard, utensils! Go back to China!”…だから俺は言ってやった「お前たち、俺の家の近くはダメだ!故郷へ帰りな!」とね

 

ふはーぁ!大変だった!難所だった!辛かった!

いかがでしたか?

以上はあくまでも私の考察にすぎませんが、ご意見・ご感想ありましたら是非コメント残してくださいね。

 

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