アンジェリカによる、結婚式での乾杯のあいさつ
ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より“Satisfied”の英語歌詞を見てみると、曲の冒頭でハミルトンとエリザベスを祝福する言葉になっていることが分かります。
アンジェリカはどのようなことを歌っているのでしょうか?
やっと来ました、“Satisfied”。
ひとことでは説明しきれないアンジェリカのハミルトンへの想いが一気にどばっと押し寄せるこの曲は、私の大好きな、大好きなナンバーです。
さて、この曲を理解する上で重要なのは、まずアンジェリカの妹・エリザベスとハミルトンの出会いを知ることです。これについては“Helpless”で1つずつ説明をしていますので、まずは次の記事をご覧ください。
【ブロードウェイミュージカル“Hamilton”/“Satisfied”/作詞:Lin-Manuel Miranda】
目次
歌詞の意味
ローレンスによるアンジェリカの紹介
それではまずは冒頭の歌詞を見ていきましょう。ローレンスがアンジェリカを呼び、アンジェリカが歌い始めるところですね。
LAURENS:Alright, alright. That’s what I’m talkin’ about! Now everyone give it up for the maid of honor, Angelica Schuyler!
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Satisfied”(作詞:Lin-Manuel Miranda)
まず最初の“Alright, alright”は日本語に言い換えるなら「はい、はーい」や「OK、OK」といった感じで全体の注目を集めるようなニュアンスです。“That’s what I’m talkin’ about!”は直訳で「それが俺が今話していたことだよ」です。アンジェリカについて話しをしていた…ということでしょう。
“Now everyone give it up for the maid of honor, Angelica Schuyler!”については、2つの慣用句を理解すると分かりやすいですよ。
- give it up…拍手を送る
- maid of honor…花嫁付き添い役の未婚婦人(ブライズメイドのことと解釈してよいでしょう)
ここでは、ローレンスが「ブライズメイドのアンジェリカ・スカイラーに大きな拍手を!」と場を盛り上げているんですね。そしてその次からが、アンジェリカの乾杯の挨拶です。
アンジェリカの乾杯のあいさつ
アンジェリカの乾杯のあいさつはこのようになっています。
ANGELICA:
A toast to the groom!
To the bride!
From your sister, (Angelica)
Who is always
by your side.
To your union,(To the revolution! )
and the hope that you provide.
May you always…
be satisfied.
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Satisfied”(作詞:Lin-Manuel Miranda)
toastとは食パンを焼いた「トースト」のことも指しますが、この場合は「乾杯、祝杯」という意味です。誰に対する乾杯かというと、groom(花婿・ハミルトン)、bride(花嫁・エリザベス)です。
誰からの乾杯か…それが“From your sister, (Angelica)/Who is always by your side.”で歌われています。「いつでもあなたのそばにいる、あなたの姉(アンジェリカ)から」です。とてもありきたりなフレーズに聞こえるかもしれませんが、ミュージカルを通して見れば本当にずっと傍にいるな…ということが分かります。それは特にマリア・レイノルズ事件の時が顕著ではないでしょうか。詳細はまた別の記事にまとめますが、この事件については次をご覧ください。
そして、その祝杯は新郎新婦だけでなく、“To your union,(To the revolution! )/and the hope that you provide.”にもあげられています。
unionは「新しいアメリカという国」、revolutionは「革命」、そしてthe hope that you provideは「今まで心に留めてきたこの国への期待」といったところでしょう。この全てに乾杯をする…と歌っているのですね。妹思いなだけでなく、アンジェリカの社会性と知性が感じられる一文です。
注目すべき単語は“Satisfied”
さて、この乾杯が終わった後がこの曲の本番ですが、注目して頂きたい単語があります。それは“Satisfied”です。
曲題にもなっているのだから、当然!と思うかもしれません。しかし、この曲の内容を理解すれば理解する程、このたった1つの単語に詰められた想いがどれほど重いものなのかを感じ取って頂けるはずです。
乾杯の終わりは“May you always…/be satisfied.”とあり、「ここにいる全員が、満たされますように」と歌っていますが、曲の終わりはこうなっています。
ANGELICA:
She’ll be happy as his bride.
And I know
He will never be satisfied. I will never be satisfied.
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Satisfied”(作詞:Lin-Manuel Miranda)
何故“I will never be satisfied(私は満足することがない)”と歌っているのか?この“Satisfied”という言葉を中心に描かれるこの世界を、1つ1つ解説していきます。続きは次の記事をご覧くださいね。