アンジェリカ・スカイラー、ハミルトンに一目惚れの一部始終①

ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より“Satisfied”の英語歌詞を見てみると、エリザベスがハミルトンに一目惚れをしていたのと同時に、実はアンジェリカも一目惚れをしていたということが分かります。

初めてハミルトンを目にした時の、アンジェリカの気持ちはどのようなものだったのでしょうか?

さて…いよいよアンジェリカの思いが分かる時が来ました。なぜ「いよいよ」なのか?それは私はこの曲が大好きだからです(笑)

この記事、ちょーっと長くなりますが、この曲を知る上で大切なこと全てを盛り込みました。お時間とって読んで頂けると、とてもとても嬉しいです!

 

“Rewind”に注目!

まず、本題に入る前にこの曲の中でとっても重要な単語を1つ押さえておきましょう。それは“Rewind”です。乾杯の挨拶をした後、この“Rewind”が夢の中に入っていくような音響効果と共に繰り返され、今回解説する歌詞へと入っていきますよね。

この“Rewind”がどういう意味だか調べた方いらっしゃいますか?“Rewind”とはこういう意味になんです。

 

 

そうです、映画や音楽を逆再生するときの「巻き戻し」という意味です。

なので、この瞬間から舞台上の演出も“Satisfied”の乾杯シーンから“Helpless”内でハミルトンと出会うところまで逆再生されます。これが鳥肌もの!

また“Rewind”と共に“I remember that night”と歌われていることから、冬の舞踏会(“A Winter Ball”)まで時間を巻き戻していることが分かります。そしてアンジェリカ本人の口から歌われるのが、あの冬の舞踏会でハミルトンに出会った時の気持ちです。

つまり、“Satisfied”はアンジェリカの回想シーンなんです。では、どんなことを回想しているのか…それを1つずつ見ていきましょう。

エリザベスのハミルトンに対する思いが歌われている“Helpless”については、こちらの記事をご確認下さい。

 

歌詞のおさらい

今回注目するのは、“Rewind”直後のこのパートです。

 

ANGELICA:
I remember that night, I just might regret that night for the rest of my days.
I remember those soldier boys tripping over themselves to win our praise.
I remember that dreamlike candlelight like a dream that you can’t quite place,
but Alexander, I’ll never forget the first time I saw your face.
I have never been the same, Intelligent eyes in a hunger-pang frame,
And when you said “Hi,” I forgot my dang name, set my heart aflame, ev’ry part aflame,

FULL COMPANY:
This is not a game…
―ミュージカル“Hamilton”より“Satisfied”

 

 

回想したこととは?

3つのこと

まず、最初の3行は全て“I remember”から始まっていますね。どんなことを思い出しているのでしょうか?まずシンプルにすると1つずつこうなります。

 

  1. that night…あの夜
  2. those soldier boys…あの軍人君たち
  3. that dreamlike candlelight like a dream…夢のようにおぼろげなキャンドルライト

 

全て冬の舞踏会で見たことを思い出していることが分かりますね。そしてそれらがどのようだったかが、各行で詳しく書かれています。

 

  1. I just might regret that night for the rest of my days…私の人生の中で後悔するかもしれないあの日
  2. tripping over themselves to win our praise…私たちの勝利を称賛してつまずいて転んだりするあの軍人君たち
  3. that you can’t quite place…どのように知り合ったか思い出せない

 

“can’t quite place”とはイディオムの類だそうです。日本語で解説しているページがなかったので以下を引用しますが、「知っている顔ではあるけれども、どこの人でどうやって知り合ったのか分からない」という意味になるようですよ。

 

It’s an idiom that involves memory and context. If you “can’t quite place” something or someone, the thing/person is familiar, but you can’t remember where it belongs, or how you know it.
What is the meaning of “you can’t quite place it”?(Yahoo Answers)

 

ですからこのシーンの場合、おぼろげな夢のようなキャンドルライトは思い出せるけれど、ハミルトンとの正確な出会いの経緯までは思い出せない…ということになりますね。

 

 

ハミルトンの容姿

「どう出会ったかは正確に思い出せない」に続くのは“but”。よってここは「どうであったかは正確に思い出せない、でも…」となり、何かは思い出したんですね。しかも“I’ll never forget”とありますから、「どうであったかは正確に思い出せない、でも私は絶対に忘れない」となります。何を絶対に忘れないのかというと、

 

  • the first time I saw your face…初めてあなたの顔を見た時のこと

 

そしてそれに加えて、

 

  • Intelligent eyes in a hunger-pang frame…痩せこけた顔に賢そうな目

 

とあります。“hunger-pang frame”の意味がずっと分からずに調べていたのですが、これも英語での解説ならあったので、引用します。

 

Hmm, what part could she possibly be referring to? Also, does “hunger pang frame” mean Hamilton was kinda scrawny (history seems to corroborate this) or does it just mean Angelica was thirsty for him? Either way, it’s brilliant.
A Deep Dive into the Hamilton Stunner “Satisfied”(OnStage Blog)

 

あくまでもこの記事を書いた方の考えではありますが、“hunger-pang frame”とは“scrawny”のことではないかと言っています。“scrawny”とは「やせこけた、骨ばった」という意味があります。何故そのように考えるかというと、恐らく“hunger-pang”が「空腹時の胃痛」、“frame”が「骨格」を意味するからです。“hunger-pang”は胃痛を指すわけですが、ハミルトンが貧乏であったことも含めて「空腹時」に意味の重きを置いたのがこの“hunger-pang frame”だと考えてよいでしょう。

 

アンジェリカが動揺するほどの影響力

アンジェリカは知的で社交的でどんな時もスマートに対応が出来る女性です。そんなアンジェリカがハミルトンの初対面では動揺してしまうことがこの続きで歌われています。

先程飛ばしてしまった“I have never been the same,”はアンジェリカの気持ちで、「いつもと同じではいられなかった」とあります。この1フレーズだけでも、どれだけハミルトンの容姿に心動かされてしまったかが分かりますね。

“And when you said “Hi,” I forgot my dang name”では「そしてあなた(ハミルトン)が“やぁ”と言った時、私の名前は飛んでしまった」と、頭が真っ白になった様子が描かれています。

dang”とはあまり綺麗ではない言葉ですが「チッ」とか「クソッ」という意味です。従って、ここは「そしてあなた(ハミルトン)が“やぁ”と言った時、私のくだらない名前さえも飛んでしまった」といったニュアンスです。どんなに緊張しても絶対忘れることなどない自分の名前さえも飛んでしまう位の影響力だということです。

そしてどうなったか…

“set my heart aflame(私の心に火をつけ)”、“ev’ry part aflame(全身が燃え上がって)”、“this is not a game(これは遊びじゃないって分かった)”…

こうしてアンジェリカのハミルトンへの恋が始まったのです。

 

 

ハミルトンとアンジェリカの会話

その後の2人の会話を見てみましょう。“Helpless”では描かれていなかったアンジェリカとハミルトンの会話です。どんな会話をしていたのでしょうか?

 

HAMILTON:You strike me as a woman who has never been satisfied.
ANGELICA:I’m sure I don’t know what you mean. You forget yourself.
HAMILTON:You’re like me. I’m never satisfied.
ANGELICA:Is that right?
HAMILTON:I have never been satisfied.
ANGELICA:My name is Angelica Schuyler.
HAMILTON:Alexander Hamilton.
ANGELICA:Where’s your fam’ly from?
HAMILTON:Unimportant. There’s a million things I haven’t done but just you wait, just you wait…
―ミュージカル“Hamilton”より“Satisfied”

 

満足しないという共通点

タイミングとしては、エリザベスがハミルトンに一目惚れをする前のシーンです。重要なのは最初の3行。

まずハミルトンが行っている“You strike me”ですが、“strike me”というのは「私の胸を打つ」といったニュアンスです。「~と印象付ける」という意味で解釈しても良いでしょう。アンジェリカはどんな女性としてハミルトンの胸を打ったのでしょうか?それが次の部分ですね。

 

  • as a woman who has never been satisfied…満足したことのない女性として

 

…??どういう意味?と思いますよね。それはアンジェリカも同じだったようです。

“I’m sure I don’t know what you mean. You forget yourself.”で「どういう意味だか分からないわ、立場をわきまえなさい」と言う意味になるでしょう。“forget yourself”にはあらゆる意味がありますが、中に「身の程を忘れる、我を忘れる」という意味があるので、シーンに適しているのはこれでしょう。

しかし、一見つっけんどんに見えるこのやり取りですが、アンジェリカは嬉しそうです。ハミルトンもアンジェリカもとても知的で利口な人物の為、真意は何なのか探り合っているところも楽しんでいるのでしょう。

するとハミルトンがこう返します。“You’re like me. I’m never satisfied.(あなたは僕に似ている。僕は満足することがない。)”。…こう聞くとちょっと怖いですよね。でもこのミュージカルの内容全てを知れば分かって頂けるのではないでしょうか?幼少期、どん底状態から大学に入り、ワシントンの右腕になってキャリアを上へ上へと築き上げていったハミルトンが、どこか途中で満足していたとしたら、きっと歴史上に名を残すことはなかったでしょう。

一方のアンジェリカも男性に交じって知識を深め、時代に乗っていく常に向上心のある女性です。そういった様子を「似ている」と表現しているんです。

ちなみにエリザベスはというと、この2人とは異なります。それが“That Would Be Enough”でとても良く分かります。“Helpless”と“Satisfied”はセットで聴くと内容が深められる曲ですが、さらに“That Would Be Enough”も加えるとなお良いです。これについては“That Would Be Enough”でご説明しますね。

 

ハミルトンの変化

そうして会話をして自己紹介をし、アンジェリカが“Where’s your fam’ly from?”と聞きます。“fam’ly”とは“family(家族)”の短縮系ですね。ファミリーに対して「ファムリー」という発音になり、カジュアルです。

「ご出身はどちら?」という至って普通な質問ですが、ハミルトンには少々耳の痛い質問です。先も少し触れましたが、ハミルトンは幼少期とても貧乏でした。かなり若い時に両親をなくしています。詳細は次からご確認頂けますので、是非お読みください。

 

こういった経緯を知らないエリザベスに対して、ハミルトンは“Unimportant. There’s a million things I haven’t done but just you wait, just you wait…(それは重要ではない。私にはまだやり遂げていないことが山ほどある。でも、今に見てろよ、今に見てろよ…)”と答えています。

just you wait”はミュージカル内で何度も出てくるフレーズですが、「今に見てろよ」という意味です。このフレーズを繰り返すあたりからしてみても、ハミルトンは貪欲で“Satisfied(満足)”することないと分かりますね。

ここのシーンについて詳しいことは次の記事で触れていますので、是非併せてお読みください。

 

 

絶対押さえたい“Satisfied”の意味

それでは、ハミルトンもアンジェリカも「満足しない性格」なのになぜこの曲の題名は“Satisfied”なのでしょうか?そう思われた方、かなりセンス良いですよ!そうなんです、この曲のミソはそこなんです。

この曲の一番最後のフレーズを見てみましょう。

 

ANGELICA:
She’ll be happy as his bride.
And I know
He will never be satisfied. I will never be satisfied.
―ミュージカル“Hamilton”より“Satisfied”

 

“She’ll be happy as his bride.”のSheとはエリザベスのこと。ですから、ここは「彼女(エリザベス)は彼(ハミルトン)の花嫁としてきっと幸せになるわ」です。“Helpless”から見ても分かる通り、エリザベスはこの上なく幸せそうにしていますよね。そして「満足」しています。

“And I know(そして私は分かっている)”に続くのは何か…

“He will never be satisfied. I will never be satisfied.”で、「彼は満足なんてしない、私は満足なんてしない」です。ハミルトンは野心家で貪欲。だから結婚で落ち着くということはありません。実際2幕ではあらゆるトラブルの核となっていきます。

一方のアンジェリカは?詳細は次の記事以降で解説していきますが、アンジェリカはハミルトンに対する自分の気持ちを殺して、エリザベスの気持ちを優先し、結婚へと導いていきます。その過程で見えてくるのが、「自分は●●だから、○○しよう」という、自分の現状に満足しようとする様子です。

満足することのないアンジェリカが、私はこれで良いんだ…と満足しようとするのがこの曲なのです。

その裏腹な内容と題名が素晴らしく、尚更このシーンを引き立てていると言えます。では、その内容とは一体どんなものなのか…次の記事からご確認下さい。

 

♪『ハミルトン』の曲一覧はこちらから:ハミルトン/英語歌詞を徹底分析!

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