アンジェリカ・スカイラー、ハミルトンに一目惚れの一部始終②

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “Satisfied” の英語歌詞を見てみると、エリザベスがハミルトンに一目惚れをしていたのと同時に、実はアンジェリカも一目惚れをしていたということが分かります。

ハミルトンに一目惚れした後、ハミルトンと会話を続けたアンジェリカはどんなことを感じたのでしょうか?

Helpless” でエリザベスのこの上ない幸せが披露された後、アンジェリカによって歌われるのがこの “Satisfied” 。冬の舞踏会を回想しながら、その時アンジェリカの胸の内で何が起こったのかが歌われています。

前回に続き、今回も少~し長めの記事になっていますが、アンジェリカの胸の内を知るためにも是非お付き合いください!

各曲については次のリンクからご確認頂けますので、是非ご覧くださいね。

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歌詞のおさらい

ものすごくボリュームのある歌詞に見えますが、1つずつ解読していけばそこまで難しくはありませんから、安心して下さいね。

ANGELICA:
So so so— so this is what it feels like to match wits with someone at your level!
What the hell is the catch? It’s the feeling of freedom, of seein’ the light,
it’s Ben Franklin with a key and a kite! You see it, right? The conversation lasted two minutes,
maybe three minutes, ev’rything we said in total agreement, it’s a dream and it’s a bit of a dance,
a bit of a posture, it’s a bit of a stance. He’s a bit of a flirt, but I’m ‘a give it a chance.
I asked about his fam’ly, did you see his answer? His hands started fidgeting, he looked askance?
He’s penniless, he’s flying by the seat of his pants.
Handsome, boy, does he know it! Peach fuzz, and he can’t even grow it!
I wanna take him far away from this place, then I turn and see my sister’s face and she is…
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Satisfied” (作詞:Lin-Manuel Miranda)

ハミルトンとアンジェリカの会話の様子

アンジェリカが計る知的レベル

まず冒頭の “So so so” とは「さて、さて、さて」といったニュアンスです。話しの本題に入る時に “So” と言ったりするのですが、ここはまさにそうですね。

この歌詞の直前ではアンジェリカがハミルトンに惹かれ、心に火を付けた…と歌われていますが、その後2人の間には会話があったようです。その時アンジェリカが感じたのは “so this is what it feels like to match wits with someone at your level!” ということ。 “wits” は「知力」を指しますから、「さて、あなたの知的レベルに合う相手というのはこういう感じなのね」という意味になります。

こういった社交性の高い場では教養が求められますが、会話をしていれば相手の教養の程度(レベル)は分かります。アンジェリカはそのことを言っているのですね。

2人の会話はどんな風だったのかというのは、 “The conversation lasted two minutes, maybe three minutes, ev’rything we said in total agreement,” の部分で分かります。「会話は2~3分続いて、全ての内容に同意見」、つまり「意気投合」して会話が弾んだということです。

アンジェリカはハミルトンの知識についていけるだけの知性があったということです。さすが、違いますねアンジェリカは。

アンジェリカはどんな気持ち?

ちなみに途中に出てくる “It’s the feeling of freedom, of seein’ the light, it’s Ben Franklin with a key and a kite!” ですが、ここは2つの文章になっています。

  • It’s the feeling of freedom
  • It’s the feeling of seein’ the light, it’s Ben Franklin with a key and a kite

いずれもハミルトンとの会話の心地良さを歌っているのですが、1つ目は「自由な気持ち」です。彼との会話は知的で開放的だった…つまり、アンジェリカにとってとても心地の良い会話が出来ているということが分かります。

では2つ目はどうでしょう?これは「光を見ているような気持ち」です。そして、それに続くのが “it’s Ben Franklin with a key and a kite” なのですが、この意味が少し分かりづらいかもしれませんね。私も初めは良く分かりませんでした。

Ben Franklinとは、Benjamin Franklin(ベンジャミン・フランクリン)のことで、この時代に有名な人物の1人です。

ベンジャミン・フランクリン(英語: Benjamin Franklin, グレゴリオ暦1706年1月17日<ユリウス暦1705年1月6日>[1] – 1790年4月17日)は、アメリカ合衆国の政治家、外交官、著述家、物理学者、気象学者。印刷業で成功を収めた後、政界に進出しアメリカ独立に多大な貢献をした。また、凧を用いた実験で、雷が電気であることを明らかにしたことでも知られている。現在の米100ドル紙幣に肖像が描かれている他、ハーフダラー銀貨にも1963年まで彼の肖像が使われていた。
ベンジャミン・フランクリン(wikipedia)

アメリカ独立に大きく影響力を及ぼした人物でありながら、凧を用いた実験で雷が電気であることを証明した人物でもあります。凧を空に飛ばしている絵を何となく見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。そしてこの実験で使ったのが「鍵と凧」、つまりここで歌われている “a key and a kite” です。

では何故突然こんな実験内容が歌われているか… “it’s Ben Franklin with a key and a kite” とは直訳すると「それはまるでベンジャミン・フランクリンの鍵と凧(の実験)みたいね」ですが、つまりは「電気(electricity)」のこと指しています。

アンジェリカにとって、ハミルトンとの会話は光のよう、そして電気のように刺激的だということでしょう。そんな内容を知的な表現で歌っているところがアンジェリカらしい、ものすごくカッコイイ1フレーズです。

ちなみにベンジャミン・フランクリンは100ドル紙幣に描かれている人で、独立宣言に関わった委員会のひとりですよ。

ハミルトンとの時間

「わずかな」時間

そうして会話が弾んでその後にあった出来事は全て “a bit of a ~” で表現されています。「ほんのわずかな、たった少しの」という意味です。

  • it’s  a bit of a dance…わずかな時間のダンス
  • it’s  a bit of a posture…少し気取って
  • it’s  a bit of a stance…少し構えて
  • He’s a bit of a flirt, but I’m ‘a give it a chance…彼は少し遊び人、だけど私は彼に賭けてみるわ

posture” と “stance” をどう解釈したら良いか悩みましたが、恐らくダンスをしている時の様子を歌っているのだと思います。また、4つ目はハミルトンの性格を見てアンジェリカが思った1フレーズですね。きっと色々な女性に声をかけたりダンスをしたりしていたのでしょう。「遊び人」という印象を受けたものの、それ以上に魅力を感じて「この人に賭けてみよう」と思ったんですね。

ちなみに “I’m ‘a give it a chance” という風に短縮系になっていますが、これは次の様な過程を経て短縮されたものと思われます。

  • I’m going to give it a chance
  • I’m gonna give it a chance
  • I’m ‘a give it a chance

短縮の更に短縮…ということですね。

「家族」に関する質問

さて、ここまでがアンジェリカパートの前半です。長く見えた歌詞もそこまで難しくなかったのではないでしょうか?

後半を見ていきましょう。このパートの直前にアンジェリカとハミルトンの会話があり、その中に “Where’s your fam’ly from?(ご出身はどちら?)” があります。そのことに触れているのが “I asked about his fam’ly, did you see his answer? His hands started fidgeting, he looked askance?” の部分です。ここは2つの文章になっていますね。

  • I asked about his fam’ly, did you see his answer?…私が彼に家族(出身)について聞いた時の、彼の返答を聞いた?
  • His hands started fidgeting, he looked askance?…彼の手はそわそわして、目をそらしたの。

まず、前回の記事でご説明した通り、アンジェリカの “Where’s your fam’ly from?” に対して、 “Unimportant. There’s a million things I haven’t done but just you wait, just you wait…(それは重要ではない。私にはまだやり遂げていないことが山ほどある。でも、今に見てろよ、今に見てろよ…)” と答えています。その時の様子が、今回のパートで明らかになっているんですね。

今まで堂々としていたハミルトンが聞かれたくない質問をされ、そわそわし目をそらした…ここでアンジェリカは気付くんです。

「かわいい坊や」のハミルトン

アンジェリカは気付きました…「この子、見た目と違ってまだ子どもなんだわ!」と。それが更にアンジェリカの恋心に火をつけます。

初対面で会話をした時は知識もあって会話も弾んでそこに惚れたアンジェリカでしたが、 “Where’s your fam’ly from?” の質問を期にハミルトンの別の面が見えてきます。それが、この4つです。アンジェリカの目には「かわいい坊や」と映ったことでしょう。このギャップにズキューンと、来てしまった訳ですね。

アンジェリカが現実に引き戻される瞬間

そうして、アンジェリカの気持ちは有頂天に達します。その後の展開はこうです。

  • I wanna take him far away from this place…ここから離れた場所へと彼を連れだしてしまいたい
  • then I turn…そして振り返って
  • and see my sister’s face…私の妹の顔を見たら
  • she is…彼女は

彼女(エリザベス)はどうだったのか…それが歌われているのがここですね。

ELIZA:Helpless…
ANGELICA:And I know she is…
ELIZA:Helpless…
ANGELICA:And her eyes are just…
ELIZA:Helpless…
ANGELICA:And I realize

ANGELICA AND COMPANY:Three fundamental truths at the exact same time…
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Satisfied” (作詞:Lin-Manuel Miranda)

“helpless” 、「どうしようもない」という意味で “Helpless” では「ハミルトンの気持ちを押さえることが出来ない位どうしようもない」という表現として使われています。ここでは「夢中」という解釈でよいでしょう。

従って、このようになります。

  • she is…彼女は
  • Helpless…夢中(だった)
  • And I know she is…そして私は気付いたの、彼女が
  • Helpless…夢中(だってことに)
  • And her eyes are just…そして彼女の眼差しはまさに
  • Helpless…夢中(だったわ)

同時に妹も恋していることに気付いてしまった瞬間です…アンジェリカの気持ちが盛り上がって、盛り上がってそして現実に引き戻される。 “Helpless” がエリザベスによって歌われるので、更に胸が締め付けられるようです。

アンジェリカが気付いた3つの根本的な事実

恋に落ちた相手が妹と同じだと気付いたアンジェリカ。その時アンジェリカは “And I realize(そして、私は悟ったの)” します。

何を悟ったのか…それが “Three fundamental truths at the exact same time…” で、「(そして私は悟ったの)3つの根本的な事実を、全く同じタイミングで」という意味です。

ハミルトンを連れ去ってしまいたいと振り返ったら、エリザベスが彼に惚れていると分かった…それと同じ瞬間にアンジェリカは3つの根本的事実に気付いたのだと言っています。

ここまでも十分素晴らしい歌詞なのですが、ここから始まるnumber 1, number 2, number 3が激しく素晴らしい。しかもそれにしっかりと回想シーンをかぶせてくるのが素晴らしいんです。

アンジェリカが気付いた3つのことは、次の記事から解説していきますよ!

Satisfied” の、他の記事はこちらから。

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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