エリザベスがハミルトンに願う、たった1つのこととは?

ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より“That Would Be Enough”の英語歌詞を見てみると、“that would be enough”というフレーズが何度も繰り返されていることが分かります。

このフレーズには、エリザベスのどんな想いが詰まっているのでしょうか?

【ブロードウェイミュージカル“Hamilton”/“That Would Be Enough”/作詞:Lin-Manuel Miranda】

歌詞のおさらい

今回はこの曲の中盤を見てみましょう。

 

HAMILTON:
Will you relish being a poor man’s wife
Unable to provide for your life?

ELIZA:
I relish being your wife
Look around, look around

Look at where you are
Look at where you started
The fact that you’re alive is a miracle
Just stay alive, that would be enough

And if this child
Shares a fraction of your smile
Or a fragment of your mind, look out world!
That would be enough

I don’t pretend to know
The challenges you’re facing
The worlds you keep erasing and creating in your mind

But I’m not afraid
I know who I married
So long as you come home at the end of the day
That would be enough
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “That Would Be Enough”(作詞:Lin-Manuel Miranda)

 

涙腺崩壊寸前です。この曲を聴くたびに、こんな風に強く、優しい女性でありたいと思わされます。この曲、本当に好き。

 

“that would be enough”に注目

前回の記事では、ハミルトンの性格を熟知したエリザベスが、妊娠したことをワシントンに伝えることで、彼を一時帰宅させたことが分かりました。戦場にいたかったハミルトンにまっすぐ向き合い、諭していましたよね。

そんなまっすぐな妻に対してハミルトンはこう漏らします。

 

  • Will you relish being a poor man’s wife…貧乏な男の妻で幸せか?
  • Unable to provide for your life?…満足のいく生活をさせてやれなかったとしても?

 

ハミルトンは幼い頃に両親を失い、1人でここまで生きてきました。そんな彼が裕福な家庭に育ったエリザベスに今だ引け目を感じているということが、この歌詞から伝わってきます。それに対してエリザベスは“I relish being your wife(あなたの妻で幸せよ)”と返し、エリザベスのソロが始まります。

本番はここからです。ここからが素晴らしい。

この先、この曲題にもなっている“that would be enough”が5回出てきますが、是非ここに注目してください。何度も繰り返されるこの言葉は、エリザベスが贅沢も豊かさも求めていないことを強調づけ、ただハミルトンに生きていて欲しいという、たったその1つだけの願い夫に伝えていることが分かりますよ。

 

 

エリザベスがハミルトンに伝えたいこと

“that would be enough”とは「それで十分なの」という意味ですが、そのフレーズを繰り返し歌うエリザベスは、具体的にハミルトンにどんなことを伝えているのでしょうか?

 

生きていてくれれば

まず1つ目は今、ハミルトンが生きているという奇跡です。戦場にいて命を顧みずに世間に貢献をしたいハミルトンですが、それは当たり前のことではないということをエリザベスは伝えたいのです。“Look around, look around at how lucky we are/To be alive right now”でも歌われている通り、今彼が生きているのは当然のことではないのだと触れています。

 

  • The fact that you’re alive is a miracle…あなたが生きているという事実は奇跡なの
  • Just stay alive, that would be enough…生きていて、それだけで十分なの

 

妻として、エリザベスは彼が大きな富を成しえなくても、ただ生きていてくれさえいれば良いのだということを歌っているのですね。

 

子どもと共有してくれれば

そして2つ目には、今エリザベスが身ごもっている子どもにして欲しいことを歌っています。

 

  • And if this child…そしてもしこの子どもが
  • Shares a fraction of your smile…あなたの笑顔をほんのわずか
  • Or a fragment of your mind, look out world!…もしくはあなたの気持ちをほんの少しでも共有できれば
  • That would be enough…それで十分なの

 

この歌詞からも分かる通り、大きなものは望んでいませんよね。笑顔や気持ちを共有して欲しいとはつまり、ハミルトンが生きていなければできないことです。しかも「ほんのわずか」「ほんの少し」で良いと歌っているわけですから、毎日そうあって欲しいと願っているのでもないので、余計に胸をぎゅっと締め付けられる思いです。

 

一緒にいてくれれば

そして3つ目。この3行好きなんですよね…メロディーも含めて。本当にぐっときます。

 

  • I don’t pretend to know…知ったつもりになんてなっていないわ
  • The challenges you’re facing…あなたが挑戦しようとしていること
  • The worlds you keep erasing and creating in your mind…あなたが頭の中で消したり生み出したりしているその世界のことを

 

エリザベスは決してハミルトンの行動を否定しているわけではないのです。彼が思い描いているこの世の中の将来を、理解していると伝えています。そしてそういった夫の妻であることの覚悟と自覚がその次の歌詞から垣間見えます。

 

  • But I’m not afraid…でも怖くなんてないわ
  • I know who I married…誰(どんな人)と結婚したか分かってる
  • So long as you come home at the end of the day…1日の終わりに家に帰ってきてくれさえすれば
  • That would be enough…それで十分なの

 

ここも先の2つと一緒ですね。エリザベスの「ただ生きていて欲しい」という気持ちがひしひしと伝わってきます。

次の記事も引き続き“that would be enough”に注目しながら読んでくださいね。

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