アンジェリカの知性が光る英語歌詞②『独立宣言』と日本への影響

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “The Schuyler Sisters” の英語歌詞を見てみると、歌の中盤でアンジェリカとバーがラップバトルのようなことをしているパートがありますよね。

実はアンジェリカと妹たちがが歌っていたのは『独立宣言』の名フレーズなのですが、実はこのフレーズ、日本にも影響を与えた一文なんですよ!

今回ご紹介するアンジェリカのパートについては、こちらも併せてご覧ください。


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絶対注目してほしい、その歌詞とは

今回取り上げるのはアンジェリカとスカイラー姉妹が歌う次のフレーズ。※韻を踏んでいるところは赤字にしてあります。

ANGELICA:
I’ve been reading Common Sense by Thomas Paine
So men say that I’m intense or I’m insane
You want a revolution? I want a revelation
So listen to my declaration:

ALL SISTERS:
“We hold these truths to be self-evident
That all men are created equal”

ANGELICA and (COMPANY):
And when I meet Thomas Jefferson (unh!)
I’mma compel him to include women in the sequel

WOMEN: Work!
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “The Schuyler Sisters” (作詞:Lin-Manuel Miranda)

この中から、2ブロック目に注目します。

今回、この”We hold these truths to be self-evident/That all men are created equal”に注目しようと思った理由…それは「どうして台詞部分なのにわざわざ “ ” が付いているんだろう?」と疑問に思ったからです。

すると、これが『独立宣言』に書かれている1つのフレーズだということが分かったんですね。詳細は次の記事にまとめているのでご覧ください。

『独立宣言』と日本への影響

『独立宣言』が日本に入ってきたのはいつ頃?

さて、ここからは予備知識です。ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』には直接関係ありませんが、日本人として知っておきましょう。『独立宣言』が成された時代、日本はどんな時代だったかご存知ですか?

宣言公布当時の日本は、江戸幕府10代将軍徳川家治の統治下にあった。アメリカとはまだ直接の外交や貿易は存在せず、独立宣言が持ちこまれることもなかった。その後、開国により欧米の文物が流入するなかで、はじめて受容された。
アメリカ独立宣言(wikipedia)

江………江戸!?!?

なんだかとっても時代錯誤な感じがしますね(笑)。

アメリカと外交もしていなかったので、もちろん情報として『独立宣言』が持ち込まれることもありませんでした。

では、日本に『独立宣言』が入ってきたのは、それからどれくらい経ってからのことなのでしょう?先の説明では「開国により」欧米の文物が流入したということです。

日本にペリーが来航したのが1853年ですから、『独立宣言』が採択された1776年から少なくとも77年はかかっているということになります!随分長い年月がかかったんですね。

福沢諭吉が訳していた!

そして、それを訳したのが福沢諭吉です。そうです、あの1万円札の人です!意外と身近なところにいましたね。

福澤諭吉は著書『西洋事情』で、「千七百七十六年第七月四日亜米利加(アメリカ)十三州独立の檄文(げきぶん)」としてアメリカ独立宣言の全文を和訳して紹介しています。

『西洋事情』(せいようじじょう)は、福沢諭吉が幕末から明治にかけて著した書物。当時欧米の状況を紹介したもの。初編3冊、外編3冊、2編4冊の10冊からなる。
西洋事情(wikipedia)

江戸幕府に命じられた福沢諭吉が1860年にアメリカに渡ったそうなので、実際は日本に入ってきたというよりはアメリカにて色々と見聞してきたという方が近いでしょう。そしてその情報を持ちかえった福沢諭吉が、先に紹介した『独立宣言』の一文を以下のように訳したんですね。

天ノ人ヲ生スルハ、億兆皆同一轍ニテ之ニ附與スルニ動カス可カラサルノ通義ヲ以テス。即チ通義トハ人ノ自カラ生命ヲ保シ自由ヲ求メ幸福ヲ祈ルノ類ニテ他ヨリ如何トモス可ラサルモノナリ。人間ニ政府ヲ立ル所以ハ、此通義ヲ固クスルタメノ趣旨ニテ、政府タランモノハ其臣民ニ満足ヲ得セシメ初テ眞ニ権威アルト云フヘシ。政府ノ処置此趣旨ニ戻ルトキハ、則チ之ヲ変革シ、或ハ倒シテ更ニ此大趣旨ニ基キ人ノ安全幸福ヲ保ツヘキ新政府ヲ立ルモ亦人民ノ通義ナリ。是レ余輩ノ弁論ヲ俟タスシテ明了ナルヘシ
アメリカ独立宣言(wikipedia)

すごいですね、福沢諭吉は。

『学問のすゝめ』にも影響していた!

しかも、彼の代表作『学問のすゝめ』においても、『独立宣言』の精神は影響しています。wikipediaの『アメリカ独立宣言』のページでは次の様な記載がありました。

このうち、冒頭の章句および思想は、のちの『学問のすゝめ』初編冒頭に引用され、人々に広く知られるところとなった。
アメリカ独立宣言(wikipedia)

それがどういった文章かというと…これです。

人には上下の別があるとする儒教思想に由来する、それまでの日本人の常識を完全に否定する「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」という冒頭の一節は著名だが、この「云(い)ヘリ」は現代における「云われている」という意味で、この一文のみで完結しているわけではない。しかも、この言葉は福澤諭吉の言葉ではなく、アメリカ合衆国の独立宣言からの翻案であるとするのが最も有力な説である。
学問のすゝめ(wikipedia)

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」…このフレーズ、一度は聞いたことありませんか?このフレーズは『独立宣言』が元になっているんですねー!あー、知らなかったー!すごーい、奥が深ーい!(感動)

これ、上下関係を重んずる儒教思想の日本では、日本の状況を完全に否定することになるのですが、福沢諭吉は「人間に上下はない!」と言い切っているわけではないそうなんですね。

「されども今廣く此人間世界を見渡すにかしこき人ありおろかなる人あり貧しきもあり冨めるもあり貴人もあり下人もありて其有様雲と坭との相違あるに似たるは何ぞや」
学問のすゝめ(wikipedia)

という文章が、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」の後に続き、意味はこうなるそうです。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言われている__人は生まれながら貴賎上下の差別ない。けれども今広くこの人間世界を見渡すと、賢い人愚かな人貧乏な人金持ちの人身分の高い人低い人とある。その違いは何だろう?。それは甚だ明らかだ。賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとに由ってできるものなのだ。人は生まれながらにして貴賎上下の別はないけれどただ学問を勤めて物事をよく知るものは貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるのだ。」
学問のすゝめ(wikipedia)

はー。良いこと言う!

つまり、「賢人と愚人の差、身分の高い人と低い人の差、これは学問しているかどうかによって決まるのだ」ということを言っているんですね。だから『学問のすゝめ』なんですね!

まさか、『ハミルトン(Hamilton)』の記事を書いていて、こんなことまで勉強出来るとは…

みなさん、今からでも遅くないですよ!自分の興味のあることからで良いんです!是非、日々新たな知識を身につけていきましょう。そうすることで視野が広がるはずです。

実は『日本国憲法』も影響を受けていた!

そしてそして、なんと『独立宣言』は1946年に公布された『日本国憲法』も影響を受けているのです!

第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
アメリカ独立宣言(wikipedia)

いかがでしたか?

アメリカのみならず、日本もとても影響を受けた宣言なのだと改めて理解することができましたね!

なんだか今回は歴史の授業のようになってしまいましたが、『ハミルトン(Hamilton)』に限らない+αの情報や発見があったはずです。引き続き、新たな発見を期待していて下さい。

The Schuyler Sisters” の、他の記事はこちらから。

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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