アンジェリカの知性が光る英語歌詞①『コモン・センス』とは

ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より“The Schuyler Sisters”の英語歌詞を見てみると、歌の中盤でアンジェリカとバーがラップバトルのようなことをしているパートがありますよね。前半がバー、後半がアンジェリカなのですが、アンジェリカのパートは、彼女の知性がものずごく光る内容になっているんです!

今回は、ここでアンジェリカがさらりと言葉にしているトマス・ペインの『コモン・センス』についてまとめました。

まず、前半部分のバーとアンジェリカのカッコイイやりとりについてはこちらの記事をご覧ください。

 

今回取り上げるのはアンジェリカとスカイラー姉妹が歌う次のフレーズ。※韻を踏んでいるところは赤字にしてあります。

 

ANGELICA:
I’ve been reading Common Sense by Thomas Paine
So men say that I’m intense or I’m insane
You want a revolution? I want a revelation
So listen to my declaration:
―ミュージカル“Hamilton”より“The Schuyler Sisters”

 

この中から、1行目の“I’ve been reading Common Sense by Thomas Paine”の部分に注目します。

“Common Sense”と“Thomas Paine”とありますが、それぞれの単語が頭文字が大文字になっていることから、何かの名前だということが分かります。先にも説明した通り、“Common Sense”とは本の名前、“Thomas Paine”とは人の名前です。ですからこのフレーズの意味は「私、トマス・ペインの『コモン・センス』を読んでいたのだけど」という意味になります。

では、それぞれどんな作品で、どんな人物なのでしょうか?

 

 

トマス・ペインとは

トマス・ペイン(Thomas Paine)から見ていきましょう。wikipediaにはこう書かれていました。

 

トマス・ペイン(Thomas Paine、1737年1月29日 – 1809年6月8日)は、イギリス出身のアメリカ合衆国の哲学者、政治活動家、政治理論家、革命思想家。
トマス・ペイン(wikipedia)

 

ここにも書かれているように、イギリス出身でアメリカ独立に際しあらゆる活動をした人だということが伺えます。続く文章を見てみると、元は編集者だったということが分かります。

 

月刊誌『ペンシルベニア・マガジン』の編集主任となり、1775年1月には600人だった購読者を2ヶ月後には1500人に増加させている。植民地の政治問題に触れ、クエーカー教徒の完全な平和主義を批判し、若者への就職準備金や老人への年金支給を含む最低限所得保障が必要なことを説いた論文『農民の正義』(Agrarian Justice)などが書かれたのと同時に、ペンシルベニア州議会に対し独立要求をけしかけている。
トマス・ペイン(wikipedia)

 

へー、すごいですね。たった2ヶ月で購読者を3倍にしているなんて。しかもこの時代で既に就職問題や年金問題に触れているなんて…そして独立要求もけしかけているとは、頭のキレが違います。

 

『コモン・センス』とは

続けて『コモン・センス』についても触れられていました。

 

1776年1月10日、フィラデルフィアでペインが執筆した政治パンフレット『コモン・センス』(Common Sense、「常識」の意)の初版が1部2シリングで販売され、1000部印刷された初版はたちまち売り切れた。その後3ヶ月で12万部を売り切り、その年の末までに56版を数え15万部が売れたという。民主的平和論を説き植民地の権利を守らないイギリスの支配から脱し、アメリカが独立するという考えは「Common sense」(常識)であると説いた。
トマス・ペイン(wikipedia)

 

まず、単語から見ていきましょう。

common”は「社会一般の・公共の」という意味で、“sense”は「感覚・概念」です。ですから直訳すると「社会一般の感覚」、転じて「常識」という意味になっています。

wikipediaの引用を見ても分かる通り、この本で書いてあることは「民主的平和論を説き植民地の権利を守らないイギリスの支配から脱し、アメリカが独立するという考えは“Common sense(常識)”である」ということです。

あー、いちいち言っていることがカッコイイな…。

「イギリスのやり方はおかしい。アメリカが独立して当然だ」というスタンスで書いた本なんですね。そして、1年間で15万部が突破。皆が悶々と感じていたことを論理的に記述したこの本は、それこそこの時代の「常識」となっていったんですね。

『コモン・センス』の内容として抑えるべきポイントは次の通りです。

 

イギリス政治の君主政・貴族政(貴族院・庶民院の二院制議会に立脚)的な要素を批判した。とりわけ、イギリス王政の起源をノルマン・コンクェストに求め、人民の支持なき王の「神聖性」を否定しようとした。また、イギリス経済からの離脱が経済に悪影響を与えるとの懸念に対し、独立によって自由貿易を採用すれば、より合衆国経済は繁栄すると説いた。
コモン・センス(wikipedia)

 

本を読まないにしても、しっかり押さえておきたいポイントです。

 

 

パンフレットって?

wikipediaの引用に書かれている「政治パンフレット」の「パンフレット」って何なのでしょうか?“The Reynolds Pamphlet”も「パンフレット」ですよね。本(書籍)とは何が違うのでしょうか?

 

パンフレット(pamphlet)は製本されていない、つまり装丁がされたりハードカバーがつけられていない冊子のことである。両面に印刷された1枚の紙を複数回折りたたむ(リーフレットと呼ばれる)ものと、何枚かをたたんで折り目で綴じて、簡単な本の体裁にするものがある。パンフレットの定義として定期刊行物とは異なる出版物が「表紙を除いて5ページから48ページまでのもの」というのがUNESCOによる定義であり、それ以上は「書籍」となる。
パンフレット(wikipedia)

 

よく学校説明会や企業説明会などに行くと、その学校や企業についてまとめられた簡単なパンフレットをもらうことがありますが、イメージとしてはそういうものが近いかもしれません。

そして、観劇した時に作品情報が書かれている「パンフレット」は、ここで言うパンフレットよりも、少し体裁がしっかりしすぎているかもしれません。何故なら「装丁がされていなかったり、ハードカバーが付けられていない」ものが「パンフレット」だからです。

wikipediaの画像を見て頂ければ分かりますが、本のような形になっているだけで、書籍というよりは書類っぽい印象を受けませんか?(ただ、れっきとした出版物であることをお忘れなく。)

書籍とパンフレットの違い、何となくお分かりいただけたでしょうか。

 

2シリングっていくら?

『コモン・センス』は2シリングで販売されたとありますが、2シリングっていくらなのでしょうか?まずはwikipediaから見てみましょう。

 

シリング(英語: shilling / ドイツ語: Schilling / スワヒリ語: shilingi)は、いくつかの国の通貨。
ウガンダ、ケニア、ソマリア、ソマリランド、タンザニアの現行通貨。イギリス(補助通貨)とオーストリアにもあったが、現在は共に廃止されている。
シリング(wikipedia)

 

あらゆる国の通貨であると分かりますが、独立前のアメリカはイギリスの植民地でしたから、イギリスの通貨が一般的だったのでしょう。現在イギリスでは廃止されている通貨の様ですね。読み進めると、他の通貨との関係性は次の通りだと分かります。

 

1ポンド = 20シリング = 240ペンス(1シリング = 12ペンス)。
シリング(wikipedia)

 

1ポンドがいくらか分かれば計算が出来るので、1700年代のイギリス・ポンドがいくらだったか調べてみると、次のyahoo知恵袋にたどり着きました。

 

あくまでも1816年代の1ポンドの価値ですが、約27,000円だったそう。1ポンド=20シリングですから、1シリング(27,000÷20=)1,350円ですね。2シリングですから、これの倍で2,700円。ハードカバーでしたらこれくらいの金額はしますが、パンフレットでこれだけ売れたということは、それだけ皆興味関心があったということでしょう。

 

 

歌詞の意味

さて、前置きが長くなってしまいましたが、歌詞に戻りましょう。歌詞の復習です。

 

ANGELICA:
I’ve been reading Common Sense by Thomas Paine
So men say that I’m intense or I’m insane
You want a revolution? I want a revelation
So listen to my declaration:
―ミュージカル“Hamilton”より“The Schuyler Sisters”

 

1行目は読んでその通り「私、トマス・ペインの『コモン・センス』を読んでいたんだけど」です。

先にも説明した通り、『コモン・センス』とは独立に向けた考えが書かれた本です。もちろん多くの女性も独立活動には関心を持っていたでしょうが、このような内容の本を女性が読むというのは少なかったでしょう。

そこで2行目です。“intense”には「過激な・熱心な」、“insane”は「正気でない」という意味がありますから、ここは「だから男の人たちは私の事を過激で正気じゃないと言うわ」ですね。まさに『コモン・センス』を女性が読むなんて異常だと思われている様子が伺えます。

3行目は韻を踏んでいる“revolution”と“revelation”。前者は「革命」、後者は「意外な新事実、すっぱ抜き、暴露」という意味です。ですから「あなた(男)たちは革命が欲しい?私は新事実が欲しいわ」というような意味になるでしょう。ここでアンジェリカが言う“revelation”の具体的な意味は分かりませんが、男たちの働く精神(mind at work)を見に来たくらいのアンジェリカですから、「啓示(教え)」という意味も含まれているのかもしれません。(なぜそう考えるかは次の記事でご理解頂けると思います。)

そして最後の行です。“declaration”とは「宣言」ですから、「だから私の宣言を聞いてよ」となります。この宣言が何なのかは次の記事でご説明しますが、ここがまた更にカッコイイ部分なんです!これについては、この記事の終わりにある、続きの記事をご覧くださいね。

いかがでしたか?

フレーズの構成的にはあまり難しくはないパートですが、トマス・ペインの『コモン・センス』を知っているかどうか、この時代にこれを女性が読むことについて理解が出来れば、アンジェリカがいかに進んだ、意識の高い女性だということが分かりますね。

きっと彼女のこういった性格が、多くの男性と友好を深められるきっかけとなったのでしょう。アンジェリカと多くの歴史上の人物との友好関係については、次の記事をご覧ください。

 

続きはこちらの記事をご覧くださいね。

 

♪『ハミルトン』の曲一覧はこちらから:ハミルトン/英語歌詞を徹底分析!

*良い記事だと思って下さった方、是非「いいね!」をお願い致します*
*facebookページへ参加して下さる方はこちらから→LOVE performing arts
*twitterをフォローして下さる方はこちらから→LOVE performing arts (@performingart2)

「なるほど!」と思ったらシェア♪

あわせて読みたい

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です