『天使にラブソングを』でシスター達が歌う3曲の元ネタと歌詞の比較

映画『天使にラブソングを(シスター・アクト)』が好きな方のほとんどは、修道女(シスター)達のステージ・パフォーマンス(アクト)が大好きなのではないでしょうか?

慎ましく、真面目な印象の修道女たちが、高らかに歌い上げ、身体を揺らしながら踊る曲は、観る者の心をも躍らせますよね。

映画でのステージ・パフォーマンスは全部で3曲ありますが、それぞれの曲名や、元になっている曲が何か知っていますか?

“Hail Holy Queen” は聖歌が、 “My God” と “I Will Follow Him” は1960年代にヒットした曲を元に、替え歌して歌われていますよ。

アルバムを視聴/楽譜 ・アルバム(英語):Sister Act
・楽譜:

 

Hail Holy Queen(Hail Holy Queen enthroned above)

 

Music from the Musical・英語:Hail Holy Queen enthroned above

・楽譜:Hail Holy Queen

 

主人公のデロリスが聖歌隊の指揮をするようになって初めて披露するのが “Hail Holy Queen” 。

正確には “Hail Holy Queen enthroned above” と言い、ラテン語で歌われる聖歌 “Salve Regina(サルヴェ・レジーナ)” が大元になっています。

“Salve Regina” も “Hail Holy Queen” も「聖母マリア」を指していますので、この曲は聖母マリアへ捧げる歌だと分かります。

 

・ Salve Regina … Hail Queen(元后あわれみの母) … 聖母マリア

 

こちらが大元の “Salve Regina” です。

 

12世紀には、現在歌われる形に近い “Salve Regina” が出来上がっていたそうです。歌詞の意味は次の通り。

 

元后あわれみの母
われらのいのち、喜び、希望。
旅路からあなたに叫ぶエバの子。
嘆きながら泣きながらも涙の谷にあなたを慕う。
われらのために執り成す方。
あわれみの目をわれらに注ぎ、
とうといあなたの子イエスを旅路の果てに示してください。
おお、いつくしみ、恵みあふれる
喜びのおとめマリア。

サルヴェ・レジーナ(wikipedia)

 

“Salve Regina” が後に英訳され、編曲されたものが “Hail Holy Queen enthroned above” です。

 

英語歌詞として始めて登場したの1884年だそうで、その後人気が高まり映画『天使にラブソングを』でも使われるようになったという経緯があるそうです。

 

Hail, Holy Queen enthroned above, O Maria!
Hail, Mother of mercy and of love, O Maria!
Triumph all ye cherubim!
Sing with us ye seraphim!
Heaven and earth resound the hymn!
Salve, salve, salve, Regina!

Our life, our sweetness here below, O Maria!
Our hope in sorrow and in woe, O Maria!
Triumph all ye cherubim!
Sing with us ye seraphim!
Heaven and earth resound the hymn!
Salve, salve, salve, Regina!

And when our last breath leaves us, O Maria!
Show us thy son Christ Jesus, O Maria!
Triumph all ye cherubim!
Sing with us ye seraphim!
Heaven and earth resound the hymn!
Salve, salve, salve, Regina!

Salve Regina(wikipedia)

 

映画で歌われるのは、1・2ブロックのみで、ゴスペル調になっている点が原曲と異なります。

意味はこのようになっています。 ※8行目まで

 

・ あぁ、天上に即位される女王、マリア様

・ あぁ、慈悲と愛の聖なる母、マリア様

・ 勝利を祝え、ケルビム達よ

・ 共に歌え、セラフィム達よ

・ 天と地に聖歌が鳴り響く

・ あぁ、聖母マリア様

・ 私達がここで幸せに生活できているのは、マリア様のおかげ

・ 悲しみと苦しみの中にも希望があるのは、マリア様のおかげ

 

“Salve Regina” よりも明るく、前向きな歌詞になっていますね。

 

 

My God(My Guy)

 

Music from the Musical・英語:My Guy

・楽譜:My Guy

 

2曲目は “My God” 。元になっているのは Mary Wells の “My Guy” という曲です。

“My Guy” は「私の男」という意味で、 歌詞内の”guy” を全て “God” に置き換えて歌っているのが、映画『天使にラブソングを』の “My God” になります。

 

Nothing you can say can tear me away
From my guy
Nothing you could do, ’cause I’m stuck like glue
To my guy

I’m sticking to my guy like a stamp to a letter
Like birds of a feather we stick together
I’m tellin’ you from the start
I can’t be torn apart from my guy

Nothing you could do could make me be untrue
To my guy (My guy)
Nothing you could buy could make me tell a lie
To my guy (My guy)

I gave my guy my word of honor
To be faithful and I’m gonna
You’d best be believing
I won’t be deceiving my guy

As a matter of opinion, I think he’s tops
My opinion is he’s the cream of the crop
As a matter of taste to be exact
He’s my ideal as a matter of fact

No muscle bound man could take my hand
From my guy (My guy)
No handsome face could ever take the place
Of my guy (My guy)

He may not be a movie star
But when it comes to being happy, we are
There’s not a man today who can take me away
From my guy

My Guy(GENIUS)

 

「私は私の男にぴったりくっついているの。私の考えじゃ、私の男が一番よ!」と歌っている可愛らしい曲なのですが、これをシスター達が「」に置き換えて歌うことで、神に誠実に向き合っている曲に様変わりするわけです。

いくつか例を挙げてみましょう。

まず “My Guy” の歌詞通りに歌うと、こういう意味になります。

 

・ Nothing you could do, ’cause I’m stuck like glue to my guy … あなたに出来ることなんてないわ、何故って私、私のにノリみたいにべったりくっついているから

 

・ As a matter of opinion, I think he‘s tops … 私の考えでは、彼(私の)が一番なの

 

・ He’s my ideal as a matter of fact … 彼(私の)は私の理想よ、私の見解では

 

これがシスター達の歌う “My God” になると、このような意味になります。

 

・ Nothing you could do, ’cause I’m stuck like glue to my god … あなたに出来ることなんてないわ、何故って私、私のにノリみたいにべったりくっついているから

 

・ As a matter of opinion, I think he‘s tops … 私の考えでは、彼(私の)が一番なの

 

・ He’s my ideal as a matter of fact … 彼(私の)は私の理想よ、私の見解では

 

恋人に対するラブソングを、たった1単語置き換えただけでシスター達の神に対する忠誠心を示した曲に変えてしまうのですから、すごいですよね。替え歌のセンスが抜群です。

更にセンスの良いのは、曲に入る前のこのやり取りです。

 

Hail girls!
Hail Mary, what’s up?
Well, Juism’s become a real drag!
Everybody hates me!
Ah ha, not that guy over there
Who Him?
They all say he’s different, they say he’s really weird
We don’t care what people say, to us
He’s always there
Really?

―My God(GENIUS

 

意味はこうなります。

※2人とはメアリー・パトリックとメアリー・ロバートのこと

 

・ デロリス:あら、お嬢さんたち!

・ 2人:マリア、どうしたの?

・ デロリス:まぁ、エルサレムには本当にうんざりでね!みんな私を嫌っているのよ!

・ 2人:いいえ、でもあそこにいる男(guy)は違うわよ。

・ デロリス:誰?彼(Him)の事?みんな「彼は他の人と違う、まじで変わっている」って言うけど?

・ 2人:私達は誰が何と言おうと気にしないわ。彼はいつもそばにいる人だから、私達にとってはね。

・ デロリス:ほんと?

 

この導入部分、実は非常に重要。デロリスが演じているのは聖書に登場する「マグダラのマリア」です。

マグダラのマリアは娼婦で、人々にその罪深き行為をとがめられますが、1人だけ彼女を許し、諭した者がいました。

それがイエス・キリスト(God)です。

このように「一度道を外れた人間でも、神は全人類に平等に心を開いている」ことを、地域の若者を始め、信仰に興味のない大人にも分かりやすく伝えながら、「私の(進行する)神/My God」がいかに素晴らしいかを歌い上げているわけですね。

 

I Will Follow Him

 

Music from the Musical

・英語:I Will Follow Him

・日本語:I Will Follow Him (Japanese Version)

・楽譜:I Will Follow Him

 

3曲目は “I Will Follow Him” です。こちらは Peggy March の “I Will Follow Him” が元になっています。

 

I love him, I love him, I love him
And where He goes I’ll follow, I’ll follow, I’ll follow

I will follow him
Follow him, wherever he may go
There isn’t an ocean too deep
A mountain so high it can keep me away

I must follow him
Ever since he touched my hand I knew
That near him I always must be
And nothing can keep him from me
He is my destiny

I love him, I love him, I love him
And where he goes I’ll follow
I’ll follow, I’ll follow
He‘ll always be my true love, my true love, my true love
From now until forever, forever, forever

I will follow him
Follow him, wherever he may go
There isn’t an ocean too deep
A mountain so high it can keep, keep me away
Away from my love

(以下、省略)

I Will Follow Him(GENIUS)

 

I Will Follow Him” は「私は彼に付いていく」という意味で、歌詞ではこんなことを歌っています。

 

・ 彼がどこに行こうともついていく

・ 深い海も高い山も、私と彼を突き放すものはない

・ 彼が私の手に触れた時から、私はそばにいなくてはと思ったの

・ 彼こそが真実の愛

 

こちらも恋する相手に対するラブソングですね。では、シスター達が歌っているのはどのような内容でしょうか?

まず、歌い出しでフレーズを部分的に入れ変え、少し意味を変えています。

 

I will follow Him
Follow Him, wherever he may go

And near Him, I always must be
For nothing can keep me away
He is my destiny

I will follow Him
Ever since he touched my heart
I knew
There isn’t an ocean too deep
A mountain so high it can keep
Keep me away, away from His
love

I Will Follow Him(プチリリ)

 

特に大きく異なるのがこの部分です。

 

・ Ever since he touched my hand … 彼(恋する相手)が私の手に触れた時から

 

・ Ever since he touched my heart … 彼(神)が私の胸を打った時から

 

Peggy March の方は「彼についていこう」と決めた瞬間は「手に触れた時」でした。

一方、シスター達の方が「彼(神)についていこう」と決めた瞬間は「胸をうった時」だったんですね。

“touch” は「~に触れる」という意味ですが、 “touch one’s heart” になると「胸をうつ、心にじんとくる」という意味になるので、なかなかセンスのある替え歌だといえます。

 

しかし更に凄いのは、 “Him” という単語だけで神を表現している点です。

My God” では “guy” を “God” に置き換えることで「神に対する歌」と明確になっていましたが、”I Will Follow Him” では、そうなっていません。

では、どうして「神」を表現している歌だと分かるのか…それは “him” が “Him” に置き換わっているからです。

頭文字が大文字になっただけで、なぜ「神」と分かるのかと感じるかもしれませんが、キリスト教において神を代名詞で表現する場合は大文字になります。

神に身をささげるシスター達が “him(彼)” と歌えば、それは必然的に “Him(神)” を意味することになるというのが、この曲の奥深さではないでしょうか。

 

曲のポイント

・ 3曲のうち、2曲は1960年代にヒットした曲が元になっている

 

・  “My God”は、”My Guy” の歌詞内にある “guy(男)” を、全て “God(神)” に差し替えて歌ったもの

 

・  “I will Follow Him” は、歌詞内の “him(彼)” を “Him(神)” にすることで神を表している

 

・ ラブソング(恋心)を歌うことのないシスター達が、ヒット曲のラブソングを元に、ラブソング(愛を捧げる歌)を歌っているところが面白い

 

Hail Holy Queen” 曲の、他の記事はこちらから。


『天使にラブソングを』 解説・考察トップ


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください