原作『オペラ座の怪人』はミュージカル以上にファントムに深みがある

ミュージカル『オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)』はガストン・ルルーというフランス人作家の小説です。
ミュージカル好きの方であれば、作品の名前は知っていると思いますが、どれだけの方が小説を読んだ事があるでしょうか?
私は原作があるものは基本読んでみたい性格なので、早速読んでみることにしました。
Contents:
この本との出会い
本当は『ノートル=ダム・ド・パリ』を借りに図書館に行ったのですが、貸出中。
では『レ・ミゼラブル』はどうだと目を移してみても1、2巻が貸出中…。
えー…と思っていたところ、ふと目に飛び込んで来たのが『オペラ座の怪人』でした。
「オペラ座か…」と正直浮かない気持ちだったのは、ミュージカルを観ても、映画を観てもそこまで魅力を感じた事がなかったからです。
あらすじ
パリのオペラ座には怪人が住みついている…という噂が立っていた。
それを信じる者と信じぬ者がいたが、ヒロインのクリスティーヌを愛するラウルは、噂を信じぬ者の1人であった。
しかしクリスティーヌを取り巻く環境で起こる怪奇現象の数々と、彼女の異様な立ち振る舞いから、その真実を暴くためオペラ座とクリスティーヌの心の中へと深く入り込んでいく。
感想
読みやすい長さ
フランス文学にしては短い、というのが第一印象でした。
『ノートル=ダム・ド・パリ』も『レ・ミゼラブル
』も文庫本で2巻以上あるので、フランス文学って長いよな…というイメージを持っていたのですが、『オペラ座の怪人
』って1冊で完結するんですよね。
もちろん本に厚みはありますが、フランス文学に触れつつ、読み切り感を得られるには丁度良いかも知れません。
日本語訳自体は、古典(?)作品特有の訳し方(例えば「〜でありますの」などの語尾)や、外国語特有の言い回しがあったりするので、多少スッと入ってこないところはあります。また、作品の中で度々話者が変わるので、時々「?」となり読み返せざるを得ないような時もありました。
推理小説でも、ミステリー小説でもない
表紙には「推理小説」と書いてありますが、「推理」という言葉から連想出来る事件性からはずば抜けた内容で、「ミステリー」とくくれる程陳腐な作品でもありません。
この作品は怪人、クリスティーヌ、ラウル3人の間を巡る、様々な「愛」の形態を1冊にした小説だと感じました。
独特な愛情表現
そしてそれと同時に、その愛に「音楽」を織り交ぜた巧みな作品だと思っています。
強すぎる愛、思いやる愛、見守る愛…
そんな風に1つでは表現しきれない「愛」の形が作品内を行きかっているのですが、強すぎる愛は時に「狂気」となり「欲望」へと変化していくことさえあります。
また、怪人とクリスティーヌの関係性をどのようにして捉えるか…それがまた読みどころです。
音楽の存在感
愛し合っている訳ではない、しかし「音楽」という存在が彼らを結びつけてしまう美しさと不気味さ。
ある意味では彼らはとても純粋で、まるで子どものように約束に忠実であったり、強く信頼したりします。そんな中、ラウルは非常に冷静な立ち位置にあって、音楽にも愛にも引きずられることなく物語を進行していきます。
物語を読むまでは「ダークファンタジー」のような印象を持っていましたが、実話であってもおかしくないと思えるほどのリアリティに、ただひたすらに先の展開を知りたいとページをめくり続けました。
フランス文学にしては短いこの1冊、是非読んで頂きたいです。

・ 自宅でミュージカルを最大限に楽しむ!配信サービスと視聴ツール
・ 家でミュージカル音楽を聴くならUSEN!俳優のトーク番組もアリ!