「いつか」と歌うエスメラルダ…しかしフィーバスはそう歌っていない

あきかん

こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん@performingart2です。

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「いつか(Someday)」の英語歌詞を見てみると、歌の締めくくりの部分でフィーバスは “one day” と、エスメラルダは “someday” と歌っています。

似ている単語ですが、この2つには決定的な違いがあります。これを知るだけで、きっと、もっと泣ける…。

『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』における “one day” と “someday” の違いを解説します。

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エスメラルダはsomeday、フィーバスはone dayと歌っている?

いつか(Someday)」で盛り上がりを見せる、最後のブロック。ここで “one day” と “someday” が使い分けられています。

いつの日か、思い描いてきた願いは全て現実となる。だからその日まで、私たちは月に祈ろう。」というのが、歌詞の内容です。

Phoebus:
When the world’s older
When things have changed

Both:
Someday
These dreams will all be real
Til then, we’ll
Wish upon the moon
Change will come

Phoebus:
One day

Esmeralda:
Someday

Both:
Soon

ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Someday” (作詞:Stephen Schwartz)

フィーバスとエスメラルダは、それぞれ次のように歌っています。

  • Phoebus: Change will come / one day / soon.
  • Esmeralda: Change will come / someday / soon.

フレーズの構造は一緒で “one day” と “someday” だけ、使い分けられています。

ここで注目したいのは、いずれも「いつか」という意味を持つ単語である一方で、厳密には次の違いがあるということです。

  • one day:現実味のあるいつか、人の努力や意志によって引き寄せるいつか
  • someday:漠然としたいつか、時の流れによって自然に訪れるいつか

“one day” の意味

“one day” と歌うフィーバスは、生き残る者です。

歌った願いは漠然とした未来で叶えるのではなく、明確な(具体的で現実味のある)未来で叶える意志を読みとれます。

“someday” の意味

一方のエスメラルダは “someday” と歌っています。死刑を前にして死にゆくエスメラルダにとって、未来は遠のくものかもしれません。

薄れる意識の中で、漠然と「いつか、願いが叶ってくれればいい」と歌われているように受けとれます。

“soon” にも2重の意味が!?

残るものは “one day” と、去る者は” someday” と。

単語を使い分けることで、それぞれの1語に、各々の想いが託されていると分かりました。これを踏まえると、最後の “soon” も微妙に解釈が分かれるのように感じます。

  • フィーバス:すぐ、近い将来
  • エスメラルダ:そのうちに

共に同じ単語を歌いながら、意味が絶妙に異なるのことで、引き裂かれる思いがします。

観劇の際は、この意味の違いを念頭に置いて頂けると嬉しいです。

エスメラルダの願った「いつか」をフィーバスは「今」実践していた!

さて “one day” と “someday” の違いが分かったところで「フィナーレ(Finale)」に注目してみましょう。

フィナーレ(Finale)」の英語歌詞を見てみると、エスメラルダの思い描いてきた「いつか」を、フィーバスが「今」実現する瞬間を目の当たりに出来ます。

劇団四季版の歌詞

エスメラルダを助けたカジモドを追って、扉を破ってでも捕えようとするフロロー。この時、フィーバスは「いつか(Someday)」 のメロディーにのせてこう歌い上げます。

パリの人々よ
そんなことを許すのか
もう耐えるのはやめよう
立ち上がれ
正義のために

劇団四季ミュージカル 『ノートルダムの鐘』 より 「フィナーレ」(訳詞:高橋知伽江)

盛り上がりのシーンですよね。フィーバスが民衆たちと一丸となって立ち向かっている様子が歌詞からも伺えます。

しかし、私は最後のパートが「正義のために 立ち上がれ」と表現されていることに、少し寂しい想いがしています。というのも、英語版での歌詞は、より奥が深く、心に沁みる内容になっているためです。

英語版の歌詞

英語歌詞では、次のように歌われています。

Hear me, people of Paris
How much oppression will you allow

Someday your patience will finally break
Why not make someday come right now

ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Finale” (作詞:Stephen Schwartz)

最初の2行はパリの民衆に向けて「奴らの抑圧をいつまで許すのか!?」と問いかけており、ほぼ劇団四季版と同じです。

重要なのは残りの2行。2箇所に登場する “someday” に注目しましょう。

1つ目の “someday” は、単純に「いつか」という意味で使われており、意味はこうなります。

  • いずれ(いつか)、みんなの忍耐は爆発する

抑制され続け、我慢し続ければ、いつか(someday)忍耐できなくなる日が来る…ということですね。

では後半の “Why not make someday come right now” は、どのような意味になるのでしょうか。

結論から言うと、このような意味になります。

  • その「いつか」を、今この瞬間に早めてみてはどうだろうか

記事前半でも説明した通り「いつか(Someday)」で、残る者(フィーバス)は “one day” と、去る者(エスメラルダ)は “someday” と歌っていました。one dayは「現実味のあるいつか」でsomedayは「漠然としたいつか」でしたね。

エスメラルダは、人種差別が無く、貧困のない、輝かしい未来をずっと思い描いてきた女性です。自分が死んでしまったとしても、その願いが「いつか(someday)」現実になれば…と歌っています。

そういった思いを抱えているのはエスメラルダだけではない。忍耐している者も同じなのです。だからこそ、いずれ爆発するであろうその忍耐を「今」爆発させようと伝え、エスメラルダが思い描いたいつかを「今」実現しにいくのではないでしょうか。

ずっと先だと思っていた漠然としていた「いつの日か(someday)」を、「今(right now)」と繋げることで、願いを先延ばしにせずに、勝ち取りに行く印象が際立ちます。

フィーバスを先頭に共に闘うジプシーたち…これこそ、エスメラルダが目にしたかった時代の夜明けではないでしょうか?

さて、そんな楽曲「いつか(Someday)」ですが、実は「オーリム/いつか(Olim)」と歌詞が同じって、ご存知でしたか?詳しくは、こちらの記事をご覧くださいね。

違いを知って観劇を…

“someday” と “one day” の違い、劇団四季版と英語版の違い、お分かり頂けたでしょうか?

こういった細かい情報を知ることで、この作品のテーマとも言える「人種差別や平等」について、より考えさせられたり、観劇後の重みが変わって来ることがあります。

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作品への理解度・解像度を上げるためにも、ぜひ、お読みくださいね。

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん@performingart2でした!

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