カジモド…名前の由来と2つの意味は?実は神聖な意味もあった!


劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』の原作『ノートル=ダム・ド・パリ(上)』を読んでみると、カジモドの名前の由来について触れられていました。
原作を読むと、ミュージカルでは歌われていない、もう1種類の由来を知ることができます。
カジモドの名前の由来は2つあります。
1つ目の意味は「不完全、不出来」、もう1つの意味は「白衣の主日(神聖な日)」です。
両方を押さえることで、カジモドという人物にどんなメッセージが込められているかを理解することができますよ。
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Contents:
「ほぼ」という意味
日本語歌詞に書かれていること
「ノートルダムの鐘(The Bells of Notre Dame)」の日本語歌詞を見てみると、カジモドの名前の由来が次のように歌われています。(引用の色付きは、あきかんによる。)
フロローはその子に名前を付けた
残酷なその名前の意味は できそこない…「カジモド」―劇団四季ミュージカル 『ノートルダムの鐘』 より 「ノートルダムの鐘」(訳詞:高橋知伽江)
名前の意味は「できそこない」とありますね。
英語歌詞に書かれていること
一方の英語はどうでしょうか?(引用の色付きは、あきかんによる。)
And Frollo gave the child a name.
A cruel name that means half-formed…Quasimodo!―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “The Bells of Notre Dame” (作詞:Stephen Schwartz)
英語では “half-formed” 、つまり「不完全」と歌われています。
いずれも「完成していない」、もしくは「不十分、不出来」といった意味です。
カジモドは、こんな残酷な名前を付けられたんですね。
原作に書かれていること
では、原作ではどのように説明されているのでしょうか?(引用の色付きは、あきかんによる。)
クロードは拾ってきた子供に洗礼をほどこして、「カジモド」
という名をつけた。 拾いあげた日にちなんだものだったが、また、
この名が、 可哀そうな赤ん坊のほとんど人間の形をなしていない姿をよく表 しているとも思ったからだ。 事実、独眼で、背中にこぶがあり、
X脚のカジモドは「ほぼ(カジモド)」 人間の形をした生き物であるとしか言いようのない子供だった。 ―『ノートルダム・ド・パリ(上)
』ユゴー作、辻昶・松下和則訳、岩波文庫(p.297)
「ほぼ(カジモド)」のところに注目しましょう。
フランス語でカジモドとは「ほぼ」という意味だと伺えます。辞書で調べてみたところ、こう説明されていました。
- quasi … ほとんど、ほぼ、おおよそ
やはり、フランス語で “quasi” とは「大体」という意味があるんですね。
カジモドはその外見から「ほとんど人間、大体人間」という意味で付けられた名前だということです。
名前の由来を説明している日本語歌詞も、英語歌詞も原作に忠実だと言えます。
「白衣の主日」という意味
発見されたのが「白衣の主日」の朝だった
ミュージカルで説明されていないもう1つの由来とは何でしょうか?
それは「白衣(びゃくえ)の主日(Quasimodo Sunday/カジモド・サンデー)」です。
先ほど紹介した原作の引用に「拾いあげた日にちなんだもの」とありましたが、それが「白衣の主日」のことだったんですね。
「白衣の主日」に触れている原作の文章を、1つ引用してみましょう。(引用の色付きは、あきかんによる。)
話は十六年ほど前にさかのぼる。よく晴れた白衣の主日(
カジモド)の朝のことだったが、ノートル= ダム大聖堂のミサがすんだ後で、 聖堂の前庭の左手の壁にはめこんで固定されたベッド板の上に、 何か生き物が一つ置かれていた。 ―『ノートル=ダム・ド・パリ(上)
』ユゴー作、辻昶・松下和則訳、岩波文庫(p.281)
この引用からも分かる通り、赤ん坊だったカジモドは白衣の主日の朝発見されたことが分かります。
当時ノートルダム大聖堂には「赤ちゃんポスト」のようなものがあり、赤ちゃんを育てられない人が設置されたベッドに子どもを置いていける制度があったそうです。
子どもに恵まれなかったり、育てたいという意志のある女性が子どもを引き取っていい…という文化があったそうなんです。
カジモドもそのベッドに置かれた赤ん坊の1人だったわけですが、その醜さから引き取り手がいないばかりか、注目の的になってしまったのですね。
「白衣の主日」とは?
では肝心の「白衣の主日」とは何なのでしょうか?(引用の色付きは、あきかんによる。)
神のいつくしみの主日(かみのいつくしみのしゅじつ:ラテン語:Dominica in albis)は、カトリック教会の祝日で、復活祭の翌週の日曜日(主日)と定められている。
また、この日を「白衣の主日」とも呼ぶ。
教皇聖ヨハネ・パウロ2世によって2000年に定められた。
―神のいつくしみの終日(wikipedia)
これを読む限りでは「神のいつくしみの主日」と「白衣の主日」は、いずれも復活祭の次の日曜日だと分かります。
「白衣の主日」は、このように説明されていました。(引用の色付きは、あきかんによる。)
復活祭の夜に受洗した信者たちが司祭の手から受けた白衣を一週間身につけ、8日後に脱いだ習慣があったことから、このように呼ばれる。
神のいのちを受けて新しい人になった明かしとして白衣を身に着けていたということですから、とても神聖な儀式であるということが分かります。
「白衣の主日」は、信者たちにとってとても神聖な日なんですね。
2つの由来から分かること
いかがでしたか?
カジモドには2つの意味があることが分かりました。それがこの2つです。
- マイナス要素を含んだ「カジモド」 … 不完全、不出来という意味
- プラス要素を含んだ「カジモド」 … 神聖な日「白衣の主日」という意味
原作を読まなければ、マイナス要素の「カジモド」しか知ることが出来なかったので、読んで良かったなぁ…と思っています。
実際、カジモドの名前を考えるのにヴィクトル・ユーゴーはかなり頭を悩ませたそうですが、結果2つの意味をもつ素晴らしい名前になりました。
相対する意味を持つ「カジモド」。
それはカジモドの外見と内面を上手く表現しているようにも思えます。
『ノートルダムの鐘』をご覧になる際は、2つの意味を知った上でミュージカルを鑑賞をしてみてくださいね。
カジモドの醜い外見をつくっている病気「背むし」については、こちらの記事をご覧ください。

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