「背むし」とは?その病気と原作に書かれたカジモドの外見


劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』の原作『ノートル=ダム・ド・パリ(上)』を読んでみると、カジモドのルックスについて触れられていました。
「背むし」は差別用語に指定されている言葉で、現在は「くる病」と呼ばれています。
「ビタミンDの欠乏」「カルシウムの摂取不足」「日射量不足」などが原因だそうです。
ミュージカルでは分からないその詳細を、「背むし」という病気と共にご紹介いたします。
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Contents:
「背むし」とは
どんな病気?
『ノートル=ダム・ド・パリ(上)』の邦題は『ノートルダムのせむし男』。この題名で作品を知っている方も多いのではないでしょうか。
現在では差別用語に指定されているので「背むし」という単語を日常的に耳にすることはないでしょう。私も、この題名以外で聞いたことはありません。
名前の由来は背中に虫がいると考えられていたためだとか…。
現在では「くる病」と言い、病気については次のように説明されていました。(引用の色付きは、あきかんによる。)
くる病(Rachitis : くるびょう、佝僂病、痀瘻病)とは、ビタミンD欠乏や代謝異常により生じる骨の石灰化障害である。
典型的な病態は、乳幼児の骨格異常で、小児期の病態を「くる病」、骨端線閉鎖が完了した後の病態を「骨軟化症」と呼び区別する。
語源はギリシャ語の背骨を意味する rhakhis に由来する。
―くる病(wikipedia)
「典型的な病態は乳幼児の骨格異常」とありますから、カジモドはこれに該当すると言えるでしょう。
原因は?
では、くる病はどういう場合に起こりうるのでしょうか?(引用の色付きは、あきかんによる。)
カルシウムの摂取が少ない一部の発展途上国でもくる病が発生しやすい。
ヨーロッパ人の白い肌は欧州の少ない日照に適応した結果であり、黄色人種や、肌の黒いインド系や黒人が日射量が少ない高緯度地域に移住した場合、乳幼児にくる病がしばしば発生する。
―くる病(wikipedia)
主には「ビタミンDの欠乏」「カルシウムの摂取不足」「日射量不足」ということです。
発展途上国で起こりやすいということは、栄養不足の人がなりやすいのかもしれないですね。
カジモドは生まれつきくる病だったと考えられますが、ノートルダム大聖堂で身を潜めて生活をしていたことも要因かもしれません。
カジモドの外見
そんなカジモドの外見については、原作『ノートル=ダム・ド・パリ(上)』で次のように表現されています。(引用の色付きは、あきかんによる。)
四面体の鼻、馬蹄形の口、もじゃもじゃの赤毛の眉毛でふさがれた小さな左目、それに対して、でっかいいぼの下にすっかり隠れてしまっている右目、まるで要塞の銃眼みたいにあちこちが欠けているらんぐい歯、象の牙みたいににゅっと突き出ている一本の歯、その歯で押さえつけられている、たこのできた唇、真ん中がくびれた顎、とりわけ、こうした顔だち全体の上に漂う人の悪さと驚きと悲しみの入りまじった表情。
みなさんにこの顔の印象をお伝えしようとしても、しょせん私の力では及ばないであろう。想像できる方は、やってみていただきたい。
―『ノートル=ダム・ド・パリ(上)
』ユゴー作、辻昶・松下和則訳、岩波文庫(p.106)
最後の文章がなかなか痛烈ですよね。つまり言葉で表現しがたいほどの醜さだということです。
ちなみにこの引用文にはありませんが、原作では「X脚のカジモド」といった描写も度々登場します。これもくる病の特徴の1つだそうです。
どんな病であるかを知るだけでも、作品への向き合い方が変わるのではないでしょうか?
是非、原作も併せて読んでみてくださいね。

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