一体何語?「酒場の歌」で使われている言語とその意味

あきかん

こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん@performingart2です。

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「酒場の歌(The Tavern Song/Thai Mol Piyas)」の英語歌詞を見てみると、冒頭が英語でも、フランス語でも、ラテン語でない言語で歌われており、意味を理解することが出来ません。

この記事では、これが何語で、どんな内容が歌われているか解説します。

※物語の展開に触れる記事です。予めご了承ください。

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「酒場の歌」は、何語で歌われているのか?

酒場の歌(The Tavern Song/Thai Mol Piyas)」の歌詞冒頭を見てみましょう。

Ando birto zhas
Thai mol piyas
Amare love das
Thai mol piyas

ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “The Tavern Song(Thai Mol Piyas)” (作詞:Stephen Schwartz)

うーむ…全く意味が分かりませんね。これ、何語なのでしょうか?

ロマ語で歌われていた

色々と調べた結果どうやら「ロマ語(Romani)」ではないかという情報に行きつきました!ロマ語とは「ジプシー(ロマ)の使う言語」を指します。(「ロマニ語」とも言います。)

ジプシー自身、あるいはジプシーの言語・文化に関することを指す

Romani(weblio)

ジプシーが歌う曲ですから、ロマ語で間違いなさそうですね。

ジプシーがどのような人々かは、こちらの記事でまとめています。なお「ジプシー」という呼称は、現在、差別用語に指定されています。「ロマ」という呼称が推奨されている背景も含めて解説しています。併せてご覧ください。

歌われている内容

では、彼らはロマ語で何と歌っているのでしょうか?調べてみたところ、先ほどの歌詞は次の意味だと分かりました。

  • Ando birto zhas=into the tavern we go=居酒屋に行って
  • Thai mol piyas=and wine we drink=ワインを飲む
  • Amare love das=our money we give=自分たちのお金を払って
  • Thai mol piyas=The Tavern Song=酒場の歌

“tavern” は英語で「酒場・居酒屋」という意味ですから、この曲のタイトルは「酒場の歌(The Tavern Song/Thai Mol Piyas)」なんですね。

ジプシーが日中稼いだなけなしのお金で、ワインを心ゆくまで楽しんでいる様子が分かります。

「酒場の歌」から分かる、ジプシー(ロマ)の置かれる状況

どんちゃん騒ぎをしながらも、どこか物悲しさ漂う「酒場の歌(The Tavern Song/Thai Mol Piyas)」。この曲からはジプシー(ロマ)の置かれた立場も垣間見えます。

Fill up the tankards, let’s have another one
In all the town, there’s no sweeter wine
We’re gonna get down, and dance till oblivion
It’s gonna come before dawn

ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “The Tavern Song(Thai Mol Piyas)” (作詞:Stephen Schwartz)

ここでは「タンカード(大ジョッキ)を満たそう、もう1杯飲もう。私たちは羽を伸ばす、そして踊る、忘却のかなたに達するまで。」といった内容が歌われています。

普段は隅に追いやられて立場の無いジプシー。そんな彼らの楽しみは、なけなしのお金で飲むお酒とダンスなのかもしれませんね。

ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』で、ジプシー達がお金を稼ぐ方法はダンス以外にも存在します。

クロパンがどんな方法で稼いでいるかは、こちらの記事をご覧ください。

なぜ「イヴのりんご」?「酒場の歌」に出る酒場の名前の由来とは

ちなみに「酒場の歌」が歌われる酒場の名前をご存知でしょうか。

酒場の歌(The Tavern Song/Thai Mol Piyas)」の英語歌詞を見てみると、酒場の名前は「イヴのりんご(La Pomme d’Eve)」だと歌われています。何故このような名前が付いたのでしょうか?

「イヴのりんご」とは

「イヴのりんご」と聞いてピンと来た方は一体どれくらいいらっしゃるでしょうか?

アダムとイヴの話を少しでも聞いたことのある方なら「イヴ」がどういう人で、「りんご」が何をもたらしたかは大体説明が出来るでしょう。

イヴは旧約聖書に登場する人類初の女性で、りんごは神に食べることを禁じられていた禁断の果実(知識の実)です。

今回は「イヴのりんご」が持つ意味と、何故このシーンの酒場の名前がそう名付けられたかを私なりに考察してみました。

これが絶対正解…という訳ではありませんが、是非参考にしてください。

日本語歌詞では「イヴのりんご」と歌われていますが、英語歌詞では “La Pomme d’Eve!” となっています。

これはフランス語で “pomme” は「りんご」、 “Eve” は「イヴ」ですから、どちらの歌詞でも「イヴのりんご」と歌っていることが分かります。

原作『ノートル=ダム・ド・パリ』でも「ポンム・デーヴ(イヴのリンゴ)軒」が登場するので、原作に登場する酒場を引用しているのでしょう。

では「イヴのりんご」とは一体何なのでしょうか?

検索すると「禁断の果実」にヒットしたので、この説明を見てみましょう。(引用の色付きは、あきかんによる。)

創世記では、禁断の果実とは、善悪の知識の木(知恵の樹)の果実を指す

アダムとイヴはエデンの園にある果樹のうち、この樹の実だけは食べることを禁じられるが、イヴはヘビにそそのかされてこの実を食べ、アダムにも分け与える(イブが先と書くのは旧約聖書においてであり、イスラム教のクルアーンにおいてはどちらが先に口にしたかは書かれていない)。

この果実を口にした結果、アダムとイブの無垢は失われ、裸を恥ずかしいと感じるようになり局部をイチジクの葉で隠すようになる。これを知った神は、アダムとイブを楽園から追放した。彼らは死すべき定めを負って、生きるには厳しすぎる環境の中で苦役をしなければならなくなる。

禁断の果実(wikipedia)

神が創造した最初の男がアダム、女がイヴで2人は楽園で生活をしていましたが、禁断の果実「りんご」を口にし知識を得たことから「恥ずかしい」という感情が生まれてしまったということです。

結果、楽園からも追放されます。

この物語についてはなんとなく聞いたことある方もいらっしゃるでしょう。

なぜ酒場の名前が「イヴのりんご(La Pomme d’Eve)」?

こういった物語の背景から「禁断の果実(イヴのりんご)」は、次のような意味を持つようにもなります。(引用の色付きは、あきかんによる。)

禁断の果実(きんだんのかじつ、Forbidden fruit)とは、それを手にすることができないこと、手にすべきではないこと、あるいは欲しいと思っても手にすることは禁じられていることを知ることにより、かえって魅力が増し、欲望の対象になるもののことをいう

禁断の果実(wikipedia)

「立入禁止」と書いてあれば入りたくなるし、「見ないで」と言われれば見たくなるし…という現象を「禁断の果実」とも表現するんですね。

では「酒場」の関係性はどのような点に見出すことが出来るでしょうか?

私は、フロローにとっての「禁断の果実」を指していると解釈しました。

フロローはこの酒場に集まるジプシー達を徹底的に軽蔑しています。

しかしその一方で目が背けられないのです。興味津々なんですね。

飲めない「酒」、抱けない「女」、軽蔑する「ジプシーたち」…

フロローにとっての「手を出してはいけないのは分かっている…でも…」が、この酒場には埋め尽くされているんですね。

これってまさに「禁断の果実」状態だと思いませんか?

だからこそ、この酒場は「イヴのりんご」と名付けられ、演出的にも歌詞的にもフロローの欲情をよりかきむしるような内容になっているのだと考えられます。

また「イヴのりんご」には「イヴがヘビにそそのかされてりんごを食べたことが、楽園追放に繋がった」という考えから、女性を軽視する表現になる場合もあります。

この辺りは中世ヨーロッパの「キリスト教の概念」や「魔女狩り」を知ることで、より深く理解することができます。

これらについては【ミュージカル『ノートルダムの鐘』が現実的な3つの理由:~ 中世の身体障がい者、ジプシー、そして魔女狩り ~】で詳しくまとめていますので、読んで視野を広げてみて下さいね。

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん@performingart2でした!

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