劇団四季ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター(Jesus Christ Superstar)』の登場人物を解説します。
今回は一番弟子のペテロ。
元漁師だった弟子について、分かりやすく解説していきます。
※物語の展開に触れる記事です。予めご了承ください。
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目次
ペテロは元漁師の、一番弟子
イエスの12使徒について知る時に、名前と立場を覚えやすいのは、間違いなくこの2名です。
- イスカリオテのユダ:裏切り者
- ペテロ:一番弟子
それもそのはず、彼らはいずれも「最後の裁判」でイエスにある予言をされています。それがあの有名な台詞です。
- このうちの1人は私を裏切るだろう
- ペテロは私のことを3度知らないと言うだろう
もちろん、前者はイスカリオテのユダ、後者はペテロのことを指しています。
ペテロは一番弟子であるにも関わらず、イエスのことは知らないと言い、また最期を見届けることもありませんでした。それでも一番弟子であることは変わらず「天国の鍵」を授かり、ヴァチカンの初代教皇となっています。
ここでは『ジーザス・クライスト=スーパースター(Jesus Christ Superstar)』で描かれることのないペテロの活躍も含めて、詳しくみていきましょう。
イスカリオテのユダについては、こちらの記事をご覧ください。
弟子になった経緯は、イエスの奇跡を目にしたから
ペテロはもともとガリラヤ湖畔の漁師町で暮らしている漁師でした。
ペテロには弟・アンドレがいます。アンドレも12使徒で、イエスへの弟子入りは彼の方が早かったそうです。そんな弟を持ったペテロがイエスと出会ったのは30代半ばだと言われています。
様々なエピソードがある中で、ペテロがイエスに弟子入りしたエピソードは有名です。
ペテロとアンドレは徹夜で漁をしたが、魚は1匹もとれない。2人がふてくされていると、イエスが通りかかる。既に弟子入りいていたアンドレがイエスに気付く。2人に気付いたイエスが舟に乗り込むと、彼らは漁がうまくいかないとこぼす。するとイエスはこう言った。
「沖に出して網を打ちなさい」
無駄骨だと思いながらもペテロが網を打つと、嘘のような大漁であった。唖然とするペテロに向かってイエスはこう言った。
「これからは魚でなく、人をとる漁師になりなさい」
マタ4:18-22、マコ1:16-20、ルカ5:1-11
この出来事をきっかけに、ペテロは弟子になります。
一番弟子になった経緯は、イエスを「キリスト(救世主)」と呼んだから
ペテロがイエスから一番弟子に任命された理由は、定かではありません。
しかし、イエスから見たペテロが「純情」であったことが、彼を一番弟子にさせたと考えられています。その顕著なものに、ペテロがイエスをはじめて「キリスト(クライスト/救世主・救い主)」と呼んだというエピソードがあります。
ペテロから「キリスト」と呼ばれ、イエスはこう言いました。
あなたはペトロ(岩)。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。
マタ16:18
そしてこの時「天国の鍵(天国の門をひらくための鍵)」をペトロに授けました。これはつまり、初代教皇の座が約束されたことを意味しています。
また、実はペトロの本名は「シモン」ですが、このエピソードからギリシャ語で「岩」を意味する「ペトロ」がシモンのあだ名となりました。
「イエスのことは知らない」と3度言った理由
ではなぜ、将来を約束されながら、ペテロは「イエスのことを3度知らない」と言ったのでしょうか。
イスカリオテのユダがイエスの居場所をカヤパに密告し、イエスが捕まった際、ペテロは予言通り「イエスのことは知らない」と3度否認してしまいます。
『ジーザス・クライスト=スーパースター(Jesus Christ Superstar)』だけ観ると「逃げた一番弟子」のように映りますが、ペテロなりの立場がありました。
ペテロの立場も踏まえながら、3度否認したことの意味について、知っていきましょう。
カヤパについては、こちらの記事をご覧ください。
イエスを手放す代わりに、弟子を守ったペテロ
イエスがカヤパに捕えられた時、イエスと行動を共にしていた使徒も、当然、捕まる可能性がありました。
そのため、イエスが逮捕されると一目散に逃げ、身をひそめます。
それでもイエスとの関係性を疑われ、イエスが捕らえられているカヤパ官邸に出向くことになったペテロ。権力者であるカヤパと衰弱した師・イエスを前に「イエスのことは知らない」と3度否認し、誓います。この時ペテロは、イエスの予言を思い出します。
状況から見れば「保身のために、イエスを見捨て、逃げた弟子」と受け取れます。しかし、一番弟子としての立場を考えると「イエスを手放す代わりに、自分に続く10人の使徒を守った」とも言えるのです。
ペテロによる3度の否認により、使徒11人の罪は不問となり、その後の追及も免れました。
ペテロは、3度知らないと言った時のイエスの悲しい目を、忘れることができず、幾度も泣いたそうです。弟子を代表してカヤパ官邸に出向き、恐怖の中で決断を下した結果、大きな悲しみを背負うことになった一番弟子の重み。それを知ると、ペトロに対する見方が、少し変わって来るのではないでしょうか。
ちなみに、イスカリオテのユダはカヤパにイエスの居場所を密告したため、逮捕の対象ではありませんでした。しかしそれを後悔し、銀貨30枚をカヤパに返却しようとします。しかし、返却を拒否され、取返しをつかないことを悟ったユダは、カヤパ官邸の庭に銀貨を投げ捨て、城外で首を吊って自害します。
ペテロの活躍は、イエスの復活後
ペトロがイエスを3度の否認したことで、イエスは1人で十字架を背負うことになります。イエスの死と復活を受け、使徒11人は今まで受けてきた言葉の数々を理解し始め、宣教に命をかけます。
ペテロは生涯を宣教に費やしました。晩年はローマで活動、ときのローマ皇帝はネロ。なかなかの暴君は、ある時自分の罪を異教徒であるキリスト教徒にかぶせればいいと考えるようになります。
キリスト教徒の代表であったペテロは捕まりますが、一度、逃げることが叶います。しかし、その時、復活したイエスとすれ違い、イエスから「(自分が)十字架にかかりにローマへ行く」と言われてしまいます。またしても自分の身代わりとして死のうとしているイエスを前に、ペトロは泣き、自らローマへと赴くのでした。
ペトロは自ら申し出「逆さ磔」の状態で殉教します。「師と同じ十字架にかかる資格はない」という理由からです。
ローマで死んだペトロの墓の上に建つのが、ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂です。
いかがでしたか?ペテロの立場を知ると、3度否認したことの意味の深さに触れられるのではないでしょうか。
『ジーザス・クライスト=スーパースター(Jesus Christ Superstar)』を観劇する際は、ペテロにまつわるエピソードを思い出してみてくださいね。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
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ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。