劇団四季ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター(Jesus Christ Superstar)』の登場人物を解説します。
今回はヘロデ。
イエスが育ったガリラヤの領主について、分かりやすく解説していきます。
※物語の展開に触れる記事です。予めご了承ください。
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ヘロデは「ユダヤの大王の息子」
ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター(Jesus Christ Superstar)』後半、突然登場しては去っていくヘロデ。
ミュージカルをご覧になった方なら「イエス(ジーザス)を嘲笑って楽しんだかと思えば、なじって捨ててしまう」…そんな印象をお持ちでしょう。
では、このヘロデとは何者なのでしょうか?
ヘロデの名前は、ヘロデ・アンティパスといいます。父親はユダヤの大王で、ヘロデ大王と呼ばれていました。
しかし大王の死後、王位継承権や情勢が変わり、ヘロデはガリラヤの領主になります。
それにも関わらず、イエスの死刑が執行される直前まで、ヘロデとイエスが顔を合わせることはありませんでした。
これには、イエスが「ユダヤ人の王」と呼ばれていたことが関係しています。
「ユダヤ人の王・イエス」を恐れたヘロデ親子
ヘロデ大王がユダヤを統治していた時代、彼の元に占星術の学者たちが訪れます。
彼らいわく「星を読んだところ、ユダヤ人の王と呼ばれる者が生まれたとあった。拝みに来たので、許可が欲しい。」とのこと。
他でもない自分が「ユダヤ人の王」であるにも関わらず、知らないところでそう呼ばれる者が生まれた…これは、ヘロデ大王にとって恐怖以外の何者でもありません。
しかしその恐怖に気付かれないよう、ヘロデ大王は学者たちに「ユダヤ人の王を拝みに行って、彼について教えて欲しい」と伝えます。
学者たちは星の示す方へ向かい「ユダヤ人の王」が生まれた家を訪れました。するとそこには、聖母マリアに抱かれたイエスがいたのです。
学者たちはイエスを拝み、贈り物を捧げて帰路につきます。
ところが、ここで「ヘロデ大王のもとへ戻ってはならない」というお告げを受けたため、学者たちはそのまま自分たちの国へと帰ります。
待てど暮らせど学者たちが帰ってこないため、怒った大王は新たな「ユダヤ人の王(イエス)」を抹殺するため、2歳以下の男児を皆殺しにするよう伝えます。
『ノートルダムの鐘』と繋がっているエピソード
さて、大王がこのような命令をくだした頃、イエスの父・ヨセフは天使からこう告げられます。
「妻と子を連れて、エジプトへ逃げなさい。」
こうしてヨセフ、聖母マリア、イエスの3人はエジプトへ逃げるわけですが、劇団四季が好きな方は、ここで何かピンときませんか?
『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』をご覧になった方でしたら、2幕冒頭に「エジプトへの逃避(Flight Into Egypt)」という曲があるのをご存知なはずです。この曲では、まさに聖家族(ヨセフ、マリア、イエス)がエジプトに逃げることが歌われています。
この曲を歌うのは聖アフロディージアスで、聖家族がエジプトへ逃避した際にかくまった聖人です。
エジプトで日々を過ごした聖家族ですが、やがて大王の死が知らされます。本来であれば故郷に戻るところですが、統治状態に不安を抱いたことから、3人はガリラヤへ移り住むことを決めます。
そのガリラヤの領主が作品に登場している、ヘロデです。
「ユダヤ人の王」を皮肉るヘロデ
ヘロデはヘロデ大王の生前から「ユダヤ人の王(イエス)」と顔を合わせたことがありませんでしたが、その存在には怯えていたはずです。
しかし長い年月を経て、イエスと対面する日を迎えます。
ピラトはカヤパから死刑執行の承認を迫られた時「イエスはガリラヤ出身だから、処分はヘロデが決めることだ」と、一度ヘロデに判断を委ねています。
生まれた時から「ユダヤ人の王」と崇められてきたイエスの人気が、地に落ちたタイミングでの対面。これは、ヘロデにとってこの上なく愉快な出来事です。そのため「ユダヤ人の王」という言葉を多用しながら、イエスを皮肉り、嘲笑います。
そして嘲笑うだけ嘲笑って、イエスをピラトへ送り返すのでした。
ヘロデの視点から見ると「イエスは屈辱を感じる相手」です。このことを念頭に置いて、『ジーザス・クライスト=スーパースター(Jesus Christ Superstar)』を楽しんでみてくださいね。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
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ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。