「ヨハネ伝第19章41節」とは?『ジーザス・クライスト=スーパースター』を飾るラストシーンのもつ意味

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

劇団四季ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター(Jesus Christ Superstar)』より「ヨハネ伝第19章41節(John Nineteen: Forty-One)」には、歌詞がありません。この音楽が流れ、作品は幕を閉じていきます。

しかし楽曲にはタイトルがついていて、ここまでで1つの作品だと分かる構成になっています。

この記事では、1つ前の曲「磔(The Crucifixion)」がラストではなくヨハネ伝第19章41節(John Nineteen: Forty-One)がラストである意味について考えます。

※物語の展開に触れる記事です。予めご了承ください。

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『ジーザス・クライスト=スーパースター』は、イエスを1人の青年と捉えたミュージカル

ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』に登場するイエス・キリスト(ジーザス・クライスト)は「神の子」です。

神の子と聞くと、感覚的によく分からないし、遠い存在のような気がするし、難しいミュージカルのような気がしてしまいます。

しかし、本作ではイエスが1人の青年として描かれており、人間として苦悩するイエスを目にすることができます。そのため、我々が普段イメージするイエスや聖書の物語と比べて、ヒューマンドラマに満ちた仕上がりになっており、感情移入がしやすい1作に仕上がっています。

一方で、キリスト教で重要な「イエスの復活」が描かれずに終わっていることから、発表当時は物議をかもしたとか。復活があるからこそ、イエスは「神の子」であり「言葉は真実であった」と証明されますが、復活が描かれないとなれば「イエス=人間」という構図が成立してしまい、受け入れられなかったのが原因です。

『ジーザス・クライスト=スーパースター』には、このような賛否両論があることを知った上で、エンディング「ヨハネ伝第19章41節(John Nineteen: Forty-One)」について考えていきましょう

イエスについてはこちらの記事でまとめているので、併せてご覧ください。

「ヨハネ伝第19章41節」は、イエスが復活する直前の節

私は『ジーザス・クライスト=スーパースター』のエンディングが「ヨハネ伝第19章41節」なのは、非常に意味深いと感じています。なぜならこれは「ヨハネによる福音書」における埋葬、そして復活直前の節だからです。

ヨハネ伝第19章41節」とは「ヨハネによる福音書19章41節」のことです。

新約聖書には4つの福音書があり、それぞれイエスの出生から復活がまとめられています。この4種は全体的に同じ流れではありますが、それぞれに個性があり、読み比べてみると違いが見受けられ、興味深いです。

  1. マタイによる福音書
  2. マルコによる福音書
  3. ルカによる福音書
  4. ヨハネによる福音書

4人のうち、マタイとヨハネは12使徒で、ヨハネはイエスが最も愛した弟子といわれています。そのヨハネのまとめた福音書の第19章41節に、どのような記述があるのか見てみましょう。

イエスが十字架につけられた所には園があり、そこには、だれもまだ葬られたことのない新しい墓があった。

ヨハネによる福音書(19:41)

印象深い情景をとらえており、余韻を感じる一文ではないでしょうか。

1つ前の曲「磔(The Crucifixion)」では4福音書における、イエス最後の言葉が網羅されています。

一方で「ヨハネ伝第19章41節(John Nineteen: Forty-One)」では「ヨハネによる福音書」の一文にピンポイントを当てられています。なぜなのでしょうか?

私の考えでは、これは4福音書の中で、唯一イエスの墓の情景を綴った一文だからだと考えています。言い換えれば、他の3福音書には磔刑に立ち会った人、イエスの亡骸を麻布にくるんだ人などの動きが書かれているにとどまり、このような情景は描かれていません。

もちろん「ヨハネによる福音書」でも、これらの動きはまとめられていますが、その後に情景が描かれ、「第19章42節」をもってイエスは墓に葬られます。そして「第20章」から「イエスの復活」がまとめられています。

ここで印象的なのは『ジーザス・クライスト=スーパースター』のラストに、十字架の立つ土地と新しい墓という情景を選んでいるという点です。しかも、歌詞なしで

磔となり、最後の言葉を残したイエス。その後、イエスの復活を描かないのはもちろん、人間としての「死」を明確に示す「埋葬」も描かないことで、無限の奥行きを感じるエンディングになっているように感じます。

「神の子」を限りなく人間として描きながらも、実は、人間であったことを断定していないのが「ヨハネ伝第19章41節(John Nineteen: Forty-One)」の持つ意味であり、『ジーザス・クライスト=スーパースター』を観た後に残る余韻なのかもしれません。

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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