劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「神よ 弱き者を救いたまえ(God Help the Outcasts)」の英語歌詞を見てみると、ノートルダム大聖堂に初めて入ったエスメラルダがイエス・キリストに祈りを捧げていることが分かります。
簡単な単語、簡単な文章で歌われるこの歌詞の深さは予想以上に深いものです。一体彼女はキリストを前にどんなことを祈っているのでしょうか。
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中世ヨーロッパにおける「身体障がい者」の扱いはどのようなものだったのか?「ジプシー」はなぜ迫害され、「魔女狩り」はどのようにして起こったのか?
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目次
エスメラルダとキリストの共通点
まず、この歌詞のサビ部分の説明に入る前に、エスメラルダがどんなことをキリストに語りかけたかを知るとより理解が深まります。
是非こちらの記事を先にお読みください。
切実な祈りの内容
前半:「地球上で慈悲は見つけられない…」という嘆き
それでは「神よ 弱き者を救いたまえ(God Help the Outcasts)」の歌詞の中身を見てみましょう。サビの前半フレーズです。
God help the outcasts
Hungry from birth
Show them the mercy
They don’t find on earth―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “God Help the Outcasts” (作詞:Stephen Schwartz)
この4行は2行ずつで1文になっています。整理すると、次のような2つの文章になりますよ。
- God help the outcasts hungry from birth
- Show them the mercy they don’t find on earth
まず、1つ目のフレーズでは神を前に「(ジプシー達のような)浮浪者(outcasts)を助けて欲しい」と嘆願しています。
その浮浪者とは “hungry from birth(生まれた時から飢えていた)” 人達です。
“outcasts” に “hungry from birth” がかかっているので、ここは「神よお助け下さい、生まれた時から飢えていた浮浪者達を」です。
“Show them the mercy” の” them(彼ら)” とは、直前の “outcast hungry from birth” を指すので、ここは「そんな彼ら(生まれた時から飢えていた浮浪者たちに)にお情けを」という意味になります。
続く “they don’t find on earth” は、 “mercy” にかかるので「その情けを(生まれた時から飢えていた)彼らは地球上で見つけることは出来ない」という意味になります。
つまり前半で歌っているのは「生まれた時から飢えていた、(我々ジプシーのような)浮浪者をお助け下さい。地球上では見つけることの出来ない慈悲を彼らに…」ということになります。
言い方を変えれば「現実では誰も情けなんてかけてはくれない。だからせめて、浮浪者の気持ちが分かるあなた(神)が彼らに情けをかけてはくれませんか。」という意味になります。エスメラルダの切実さが伝わってい来るフレーズだとは思いませんか?
後半:「神以外に助けてくれる人などいない…」という訴え
続けて後半部分を見ていきましょう。
God help my people
They look to you still
God help the outcasts
Or nobody will―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “God Help the Outcasts” (作詞:Stephen Schwartz)
ここで言う “my people” 、直訳すると「私の人間」ですがニュアンスとしては「私の仲間達」となります。 “outcasts” を “my people” と言い換えている訳ですね。
“look to ~” には「頼る、当てにする」という意味がありますが、ここでいう “they(彼ら)” とは「浮浪者(outcasts=my people=浮浪者=ジプシー達)」を指していますから「私の仲間達(浮浪者)は、じっとあなたを当てにしているわ」と理解しましょう。
そして、最後の2行は1文にすると “God help the outcasts or nobody will” ですが、 “will” の後に隠れているフレーズを想像すると、 “God help the outcasts or nobody will (help the outcasts)” となります。
つまり「神が浮浪者を助けない限り、誰も(浮浪者を助けたりは)しない」ということですね。
人種差別が歌われていることを意識しよう
ミュージカル『ノートルダムの鐘』のテーマの1つに人種差別がありますが「神よ 弱き者を救いたまえ(God Help the Outcasts)」で歌われているのはその現実です。
神に祈るという行為からエスメラルダの真剣な願いが手に取るように分かります。
是非、英語の歌詞も理解した上で、ミュージカルをご覧くださいね。
※尚、キリスト教において正確には「神≠イエス・キリスト」ですが、このシーンは何かしら偶像を前に歌っていると考えられるので、分かりやすくするために「神=イエス・キリスト」という解釈で説明しています。キリスト教における詳しい概念について知りたい方は、是非ご自身で調べてみて下さいね。
中世ヨーロッパにおける「身体障がい者」や「ジプシー」の扱いについては【ミュージカル『ノートルダムの鐘』が現実的な3つの理由:~ 中世の身体障がい者、ジプシー、そして魔女狩り ~】で詳しくまとめています。
中世ヨーロッパのリアルを知ることで、作品の見え方に深みが出ます。読んで視野を広げてみて下さいね。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。