ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “Guns and Ships” の英語歌詞では、アメリカ独立戦争において重要な役割を果たしたラファイエットの活躍ぶりと、ハミルトンの必要性が歌われています。
ラファイエットとハミルトンは、それぞれどのような場面で活躍したのでしょうか?
ラファイエットはアメリカ独立戦争に参加した、フランス人貴族です。
彼はアメリカに大砲と軍艦を調達し、独立戦争に大きな影響をもたらした人物で、その「大砲と軍艦」がこの曲名になっています。
※ この記事は、西川秀和先生(@Poeta_Laureatus)の記事を参考にさせて頂きました。詳しい歴史的背景は、こちらをご覧ください:西川秀和 note
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目次
アメリカ独立戦争における、ラファイエットの存在の大きさ
独立戦争に加わった、フランス人貴族
“Lafayette!(ラ・ファイ・エッ!)” の掛け声が特徴的な “Guns and Ships” 。
「銃と船」、戦場に置き換えれば「大砲と軍艦」というとても分かりやすい曲名ですが、実はアメリカ独立戦争を大砲と軍艦でアメリカを支援し、共に戦ったのが、若干24歳のフランス人のラファイエットなのです。
そんな彼を称賛しながら歌い上げるのが “Guns and Ships” という曲の内容です。
ラファイエットの人となりについては、こちらの記事をご覧ください。
“Alexander Hamilton” 、”A Winter’s Ball” 、そして “Guns and Ships” のように、アーロン・バーによる歌い出しは多いですよね。
この曲調でアーロン・バーが歌う場合は、これから登場する人物を紹介する場合が多いのですが、 “Guns and Ships” で紹介されるのはラファイエットです。
アメリカ独立戦争を決定づけるヨークタウンの戦いを目前に、アーロン・バーは戦地の状況を説明しながらラファイエットを紹介します。
BURR:
How does a ragtag volunteer army in need of a shower
Somehow defeat a global superpower?
How do we emerge victorious from the quagmire?
Leave the battlefield waving Betsy Ross’ flag higher?
Yo. Turns out we have a secret weapon!
An immigrant you know and love who’s unafraid to step in!
He’s constantly confusin’, confoundin’ the British henchmen
Ev’ryone give it up for America’s favorite fighting Frenchman!―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
内容はこうなっています。
・ どうやったらこの落ちぶれた、シャワーすらろくに浴びられていない志願兵達は
・ 世界的な超大国を打ち負かすことができるんだ?
・ どうやったら泥沼(窮地)から、戦勝者たる姿で現れることができる?
・ ベッツィー・ロスの旗を高く掲げて、戦場を後にすることができる?
・ それが、実は隠された兵器があると分かったんだ
・ 君たちも知っている大好きな、恐れ知らずの、あの移民のことだよ!
・ 奴は常にイギリスを混乱させて、うろたえさせ続けた
・ みんなで称えようぜ、アメリカ人の大好きなフランス人戦士を!
前半では「劣勢のアメリカが、どうやったら星条旗を掲げ、勝者になることが出来るんだ…?」と歌っていて、戦争の厳しさが伝わる内容になっています。
世界的な超大国(global superpower)とは、もちろんアメリカの敵国・イギリスのこと。
ベッツィー・ロスは星条旗を作成したアメリカ人女性のことで、ベッツィー・ロスの旗(Betsy Ross’ flag)は星条旗のことを指しています。
ベッツィー・ロス(Betsy Ross、1752年1月1日 – 1836年1月30日、エリザベス・グリスコム、エリザベス・アシュバーン、エリザベス・クレイプールとも)とは初めて星条旗を作成し、旗中の六稜星をより制作し易い五芒星に変えたことで知られるアメリカ合衆国の女性。
―ベッツィー・ロス(wikipedia)
しかしその状況を変えたのが「秘密の兵器(secret weapon)」。つまり、イギリスが認知していない兵器があったんですね。
それを仕入れ、アメリカを優位に立たせた、アメリカ人が大好きなフランス人移民が…
Lafayette!
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
…というわけです。
ひゃー、カッコイイ!
ラファイエットは、自身の戦いぶりをこんな風に歌っています。
I’m takin this horse by the reins makin’
Redcoats redder with bloodstainsAnd I’m never gonna stop until I make ‘em
Drop and burn ‘em up and scatter their remains, I’m (Lafayette!)Watch me engagin’ em! Escapin’ em!
Enragin’ em! I’m (Lafayette!)―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
このパートはこの曲の中でも、最も疾走感に溢れる部分ですね。
・ 俺は馬の手綱を握りしめながら、赤い服(の奴ら)を、血で更に赤くしてやったぞ
・ 俺は絶対に立ち止まらない、俺は奴らを倒し、焼き払い、まき散らすまでは
・ 見ろ、俺の戦う様を!俺が奴らをすり抜ける様を!俺が奴らが怒る様を!
・ 俺がラファイエットだ!
“Redcoats” とは「赤い服」、つまり「赤い軍服を着たイギリス兵」のこと。
彼らを斬りつけ、前進していく様子がありありと想像できますね。
大砲と軍艦の調達
そして、ラファイエットはもう一度フランスへ戻ることにします。
I go to France for more funds
I come back with more
Guns
And ships
And so the balance shifts―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ここで歌われているのが、ラファイエットが大砲と軍艦を調達したということです。
・ 俺は軍資金集めのためにフランスに戻った
・ 俺は帰ってきた、より多くの
・ 大砲、軍艦、そして(イギリスとの)バランスが変わった
“balance shifts” は「バランスが動いた」という意味で、大きく傾いていた天秤が逆側に傾くイメージ。
つまりラファイエットの調達により、今まで優勢だったイギリスが劣勢に傾き、劣勢だったアメリカが優勢に傾いた…ということです。
そして、ここで初めてワシントンが歌に加わります。
WASHINGTON:
We rendezvous with Rochambeau, consolidate their gifts―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ここでは「ワシントンがロシャンボーと合流しよう、力を集結しよう」といったニュアンスの発言していることが分かります。
ロシャンボーもフランス人で、共ににアメリカと闘った人物です。
1780年、ロシャンボーは中将に昇進し、7,000名のフランス将兵とともにアメリカに渡り、アメリカ独立戦争でイギリス軍と交戦中のジョージ・ワシントン将軍指揮する大陸軍への合流を目ざした。(中略)1781年7月、ロシャンボーの部隊はロードアイランドを離れ、コネチカットを横切り、ハドソン川岸にいたワシントンと合流した。そこから米仏連合軍は南に軍を進め、ヨークタウンを包囲した。9月22日にはラファイエットが率いる部隊も合流し、10月19日にはイギリス軍のコーンウォリス将軍を降伏させた。
―ジャン=バティスト・ド・ロシャンボー(wikipedia)
ジョージ・ワシントン、ロシャンボー、そしてラファイエットが合流し、力を集結したわけです。
ハミルトンの必要性
ラファイエットが歌う、ハミルトンの必要性
しかし、ここでラファイエットがあることを言及します。
LAFAYETTE:
We can end this war at Yorktown, cut them off at sea, but
For this to succeed, there is someone else we need:―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
内容はこう。
・ 俺たちはこの戦争をヨークタウンで終わらせることができる、海で彼らをせき止められれば
・ しかし、これを成功させるには、もう1人必要な奴がいる
そしてジョージ・ワシントンは “I know(分かってる)” と返答。それが誰なのかというと…
WASHINGTON AND COMPANY:
Hamilton!―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
です。何故ハミルトンが必要なのか、ラファイエットのパートだけ抜き取ってみていきましょう。
LAFAYETTE:
Sir, he knows what to do in a trench
Ingenuitive and fluent in French, I mean (Hamilton!)Sir, you’re gonna have to use him eventually
What’s he gonna do on the bench? I mean (Hamilton!)No one has more resilience
Or matches my practical tactical brilliance—―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ラファイエットはこんなことを歌っています。
・ 将軍、奴は塹壕(ざんごう)でどう戦うべきか分かっている
・ 賢く、フランス語が堪能な奴、つまりハミルトンだ!
・ 将軍、あんたはやがて彼を使うことになる
・ 奴がベンチ入りして、何ができる?そう、ハミルトンのことだ!
・ 誰一人として、彼以上に復活力がある奴はいない
・ 俺の卓越した戦術に見合う奴は
ラファイエットがハミルトンをどれだけ必要としているかが伝わってきますよね。
追い打ちをかけるように “You wanna fight for your land back?(あんたの国を取り戻したいんだろ?)”と言い、ワシントンが “I need my right hand man back!(俺は俺の右腕を取り戻さなければ!)” と応じるところは、ますますカッコイイですね。
もちろんワシントンの右腕とはハミルトンのことで、 “Right Hand Man” という曲もあります。
ワシントンが歌う、ワシントンの必要性
ラファイエットは「あんたの考えをちょっと手紙で送れば、じきにあんたの右腕は戻ってくるってことさ!」とワシントンに伝え、ワシントンはこう歌います。
WASHINGTON:
Alexander Hamilton
Troops are waiting in the field for you
If you join us right now, together we can turn the tide
Oh, Alexander Hamilton
I have soldiers that will yield for you
If we manage to get this right
They’ll surrender by early light
The world will never be the same, Alexander…―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Guns and Ships” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ここで歌われているのは、恐らく、ハミルトンに宛てた手紙の内容とでしょう。
書かれている内容はこうです。
・ アレクサンダー・ハミルトン
・ 軍隊は戦地でお前を待っている
・ もしお前が今加われば、共に逆転勝利できるかもしれない
・ アレクサンダー・ハミルトン
・ 君の兵隊は用意している
・ もしここをうまく乗り切れれば
・ 奴らは降伏するだろう、すぐにでも
・ 世の中はまるで別のものになるだろう、アレクサンダー
いかがでしたか?
アメリカ独立戦争でラファイエットがどのように活躍し、ハミルトンを必要としたかがお分かり頂けたと思います。
そして、ここからクライマックスのヨークタウンの戦い( “Yorktown(The World Turned Upside Down)” )へと向かっていきますよ。
“Guns and Ships” の、他の記事はこちらから。
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ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。