“In This Corner” で分かるローラとドンの守っているもの

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

ミュージカル『キンキ―ブーツ(Kinky Boots)』より “In This Corner” の英語歌詞を見てみると、レフリーがどのようにローラとドンを紹介しているかが分かります。

In This Corner” とは「こちらのコーナー」という意味で、ボクシングなどにに使われますね。

両者真逆のタイプの男性ですが、それぞれのサポーター達が歌う表現から、2人の男性が、どんな価値観を守って戦っているか…が分かりますよ。

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ローラの登場

レフリーによる紹介

 

ローラは細身ながら、父親によってプロ並みのボクシング技術を叩き込まれた男性です。

それをレフリーを務めるドラァグ・クイーンは、このように紹介しています。

 

IN THIS CORNER, LEAN AND BROWN
WEIGHING IN IN A GOLD LAME GOWN, YUH YUH
IN THIS CORNER, HERE TONIGHT!
IN THE CRADLE OF A BRIGHT WHITE LIGHT

-ブロードウェイミュージカル “Kinky Boots” より “In This Corner” (作詞:Cyndi Lauper)

 

ローラを紹介するフレーズを、1つずつ見ていきましょう。

 

  • lean and brown … 引き締まっていて、浅黒い
  • weighing in in a gold lame gown … ゴールドのラメでキラキラしたガウンで重みを増している
  • in the cradle of a bright white light … 真っ白な明るいライトに包まれて(登場)

 

これらの表現から、ローラは引き締まっていながら、穏やかさ、明るさがあることが感じられます。

 

サポーターによる応援

 

ローラ側のサポーターは「ドンを倒せ」と言う代わりに、こんな風に叫んでいます。

 

HIT HIM IN HIS BIG MOUTH!
HIT HIM IN HIS INSECURITY, YEAH
HIT HIM OFF HIS HIGH HORSE!
HIT HIM SO EVERYONE CAN SEE
YEAH

-ブロードウェイミュージカル “Kinky Boots” より “In This Corner” (作詞:Cyndi Lauper)

 

意味はこうです。

 

  • 大口をぶちのめせ
  • 自信をぶちのめせ
  • 傲慢さ(high horse)をぶちのめせ
  • みんながハッキリ分かるようにぶっ飛ばしてしまえ

 

つまりここで叫んでいるのは、ドンの最も大切にしている「男らしさ」をズタズタにしてしまえということですね。

 

 

ドンの登場

レフリーによる紹介

 

では、ドンの方はどうでしょうか?

 

IN THIS CORNER, HEAVY WEIGHT
BREATHING HEAVY LIKE A BUTTERMILK CAKE
CAN A REAL MAN
EVER CONFESS
HE WAS BEATEN BY A GUY IN A DRESS

-ブロードウェイミュージカル “Kinky Boots” より “In This Corner” (作詞:Cyndi Lauper)

 

ドンを紹介するフレーズを、1つずつ見ていきましょう。

 

  • heavy weight … 重量級
  • breathing heavy like a buttermilk cake … (密度の高い)バターミルクケーキのような厚い呼吸
  • can a real man … 本物の男は
  • ever confess … 認めることができるだろうか
  • he was beaten by a guy in a dress … ドレスを身にまとった男性に倒されたって

 

ここで面白いのは、ドンは倒される前提で歌われているということです。

ドンが負けたらどんなことになるか…それを、見たくないという不安さえ感じさせられます。

それくらいドンは頑なに「男らしさ」を守ってきた男性だということですね。

 

サポーターによる応援

 

ドン側のサポーターは「ローラを倒せ」と言う代わりに、こんな風に叫んでいます。

 

OOOH HIT HIM IN THE LIPSTICK
HIT HIM IN HIS FEMININITY YEAH
HIT HIM OFF HIS HIGH HEELS
HIT HIM IN THE CHEEK AND SEND HIM BACK TO LONDON-TOWN!

-ブロードウェイミュージカル “Kinky Boots” より “In This Corner” (作詞:Cyndi Lauper)

 

意味はこうです。

 

  • 口紅をへし折ってしまえ
  • 女性らしさをへし折ってしまえ
  • ハイヒールをへし折ってしまえ
  • 頬に1発かまして、ロンドンへ送り返してやれ

 

つまりここで叫んでいるのは、ローラの持ち合わせる「女らしさ」をズタズタにしてしまえということです。

しかし、本当の意味で考えると、ローラの守っているものは「女らしさ」ではありません。

自分らしさ」です。

自分らしさを貫き通した結果、ドンの言う「女っぽさ」が表面に出ていますが、仮に表面的な意味での「女らしさ」をへし折ったところで、ローラにはかすり傷さえつかなかったことでしょう。

これが、ローラの強さなのだと、私は信じています。

***

実話を徹底的に調べ、映画、ミュージカルと比較した本を2021年12月に執筆しました。『キンキーブーツ』のより深い面白さは記事最後で紹介している本にまとめています。

是非、観劇前後にお読みいただき、繰り返し『キンキーブーツ』をお楽しみくださいね!

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!