ミュージカル『シックス(SIX)』より “Ex-Wives” の英語歌詞を見てみると、ヘンリ8世(テューダー朝第2代のイングランド王)と6人の妻たちの関係性が分かります。
このミュージカルのタイトル『シックス』とは、ヘンリ8世の6人の妻たちのこと。
暴君としての認知度が高い王と彼女達の間に何があったのかを、妻たちの目線で歌うのがこのミュージカルの内容です。
妻たちにはイメージカラーがあり、ポップに歌うこの6人は、まるで現代のガールズグループのように演出されています。
- Catherine of Aragon(キャサリン・オブ・アラゴン)
- Anne Boleyn(アン・ブーリン)
- Jane Seymour(ジェーン・シーモア)
- Anna of Cleves(アン・オブ・クレーヴズ)
- Katherine Howard(キャサリン・ハワード)
- Catharine Parr(キャサリン・パー)
彼女達の証言と共に、ヘンリ8世の歴史を紐解いていきましょう。
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目次
オープニングで分かる6人の妻たちとヘンリ8世との関係性
この曲名 “Ex-Wives” は「元妻たち」という意味です。
冒頭に “ex-” とつくことで “boyfriend(彼氏)” や “girlfriend(彼女)” が “boyfriend(元カレ)” や “girlfriend(元カノ)” の意味になり、”ex-wives” もその一例です。
“Ex-Wives” が素晴らしいのは、6人の妻たちの登場と共に、ヘンリ8世との間に起きたことを「1単語」で表現しているところです。これが非常に刺激的、かつ効果的です。
1人ずつ見ていくとこうなっています。
- キャサリン・オブ・アラゴン … Divorced(離婚)
- アン・ブーリン … Beheaded(斬首)
- ジェーン・シーモア … Died(死去)
- アン・オブ・クレーヴズ … Divorced(離婚)
- キャサリン・ハワード … Beheaded(斬首)
- キャサリン・パー … Survived(残存)
離婚、斬首、死去、残存…!?
ガールズグループなら「Love(愛)、Peace(平和)、Smile(笑顔)」…とでも始まりそうなところを、こんな衝撃的な単語を並べられては、オープニング早々「この妻たちに一体何があったのだ?」と食いついてしまいますよね。
当然ながらこれは実話で、1~5人目はこのようにしてこの世を去っており、その理由がこのミュージカルを通して紹介されていく構成になっています。
オープニングで歌っていること
蘇って集結した6人の妻たち
刺激的な単語の羅列に、心を鷲掴みにされるのもつかの間、このライブ形式の舞台はこのようにして始まります。
And tonight, we are…Live!
―ブロードウェイミュージカル“SIX”より “Ex-Wives”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)
訳すなら意味はこうなるでしょう。
- そして今宵、私達は…生きている!
本来、ライブなどでは「みんなー、戻ってきたよー!」とか「今夜限りの再結成だぜ!」といった感じで盛り上がりを見せる登場シーンですが、それに見立て蘇って集結といった感じで非常にキャッチーなフレーズになっています。
6人の妻たちによる暴露
本題に入る歌い出しはこうなっています。(誰パートかは省略しています。)
Listen up, let me tell you a story
A story that you think you’ve heard before
We know you know our names
And our fame and our faces
Know all about the glories
And the disgraces―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Ex-Wives”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)
内容をまとめるとこうです。
- ねぇ、物語をお話してあげる
- それは、あなた達が以前聞いたことがあるであろうもの
- あなたたちが、私達の名前を知っていることは知っているわ
- 私達の名声も、私達の顔も、栄光も
- そして、私達の不名誉も
イギリスの歴史においてヘンリ8世を知らない人などおらず、ましてや彼の妻たちとの関係性は尚更なので、こんな風に切り出している訳ですね。
この後6人が集結した理由が歌われる訳ですが、特に注目したいのはキャサリン・パーのこのフレーズです。
[CATHERINE PARR] So I picked up a pen and a microphone [ALL] History’s about to get overthrown
意味を見てみましょう。
- だから私はペンとマイクを手に取ったの
- 歴史は間もなくひっくり返ろうとしているところよ
「これから事実を歌う」というような意味で歌われていますが、このパートをキャサリン・パーが歌う重要性は非常に高いです。
それは、他の5人の妻とは異なり、キャサリン・パーがヘンリ8世より長く生き、彼を看取った妻だからです。そして実際に本も執筆しています。
そんな彼女のフレーズを受け、6人の妻たちは自分たちの身の上に起きた真実を歌います。
サビの”historemix”の意味と効果
この曲中で最も印象的なのは、サビの3行目のフレーズです。
このミュージカルの特徴全てが、このフレーズの “historemix” という単語1つに凝縮されています。
これは造語ですが、次の2つの単語の組み合わせになっています。
- history … 歴史
- remix … リミックス
“Welcome to the show, to the historemix” とは「ショーへようこそ、歴史・リミックスという名のショーへ」というニュアンスですが、これ以降の構成が非常に巧みです。
But just for you tonight
We’re divorced, beheaded live
Welcome to the show, to the historemix
Switching up the flow as we add the prefix
Everybody knows that we used to be six wives
Raising up the roof till we hit the ceiling
Get ready for the truth that we’ll be revealing
Everybody knows that we used to be six wives
But now we’re ex-wives―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Ex-Wives”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)
そもそもリミックスとは、音楽制作における構成の1つです。(引用の色付きは、あきかんによる。)
複数のトラックに録音された既存の楽曲の音素材を再構成したり様々な加工を加えることによって、その曲の新たなバージョンを製作すること。
-リミックス(wikipedia)
つまりこのミュージカルでは、歴史を音楽に置き換えて表現しているんです。言い換えればこういうことです。
- 既存の歴史的解釈を再編成したり、様々な新たな歴史的解釈を加えることによって、その歴史の新たなバージョンを製作すること。
「すんごい、カッコイイなっ!」って思いませんか?その上、曲調もリミックスの雰囲気を出しているという、こだわりよう。
『シックス』のコンセプトは、この “historemix” なんですね。
そしてサビではこんなことを歌っています。
Everybody knows that we used to be six wives
Raising up the roof till we hit the ceiling
Get ready for the truth that we’ll be revealing
Everybody knows that we used to be six wives
But now we’re ex-wives―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Ex-Wives”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)
意味はこうです。
- みんな私達のことを6人の妻と認識しているけれど
- 屋根を突き破るまで(爆発するまで)大声で不平を言ってやるわ
- これから暴露される真実に覚悟して
- みんな私達のことを6人の妻と認識しているけれど
- 私達、今や元妻なのよ
もう、失神ですよね!
そして最後の1行が皮肉。6人ともヘンリ8世にとっては過去の女であり、6人の共通点だということを強調しているのが好きです。
6人の妻たちを紹介
それでは6人の妻たちを見ていきましょう。
登場する順が、ヘンリ8世が結婚する順になっていますよ
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Catherine of Aragon/キャサリン・オブ・アラゴン
イメージカラー:ゴールド
Anne Boleyn/アン・ブーリン
イメージカラー:グリーン
Jane Seymour/ジェーン・シーモア
イメージカラー:ブラック
Anne of Cleves/アン・オブ・クレーヴズ
イメージカラー:レッド
(準備中)
Katherine Howard/キャサリン・ハワード
イメージカラー:パープル
(準備中)
Catharine Parr/キャサリン・パー
イメージカラー:ブルー
(準備中)
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こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。