“Don’t Lose Ur Head”で歌われるアンが斬首されるまで


ミュージカル『シックス(SIX)』より “Don’t Lose Ur Head” の英語歌詞を見てみると、ヘンリ8世の2人目の妻・アン・ブーリン(Anne Boleyn)の本音が歌われていることが分かります。
アンは、ヘンリ8世が1人目の妻・キャサリン・オブ・アラゴンとの離婚協議中の裏で、夢中になり、文通を交わした相手。
しかし彼女もまた、ヘンリ8世の要望を満たせず、斬首されます。
6人の妻のうち、コメディ要素満載に歌われる彼女の胸中、今回は王妃になり、斬首されるまでを観ていきましょう。
※アン・ブーリンの詳しい人物像は、こちらの記事でまとめています。
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キャサリン・オブ・アラゴンを横に押しやり、私利私欲のために王妃になることを押し通したアン・ブーリン。
しかし、結婚生活は彼女の想像していたものとは全く異なりました。
Henry’s out every night on the town
Just sleeping around like “What the hell?”
If that’s how it’s gonna be
Maybe I’ll flirt with a guy or three
Just to make him jell
Henry finds out and he goes mental
He screams and shouts like
So judgemental!
You damn witch
Mate, just shut up!
I wouldn’t be such a b…
If you could get it up―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Don’t Lose Ur Head”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)
自分だけが可愛がられて、贅沢ができるかと思いきや、いざ結婚生活が始まったらヘンリ8世は他の女性とも関係を持ち始めます。
その理由は、キャサリン・オブ・アラゴン同様、第1子が「娘」だったため。
アン・ブーリンとの間に息子が出来ることを望んでいたヘンリ8世は落胆し、アンを見切ったかたちになります。
しかし、ここで収まらないのが我らがアン・ブーリンです。彼女の本音を、彼女らしい口調で見ていきましょう。
- ヘンリ8世は毎晩外出
- そこらじゅうで寝まくって「まじふざけんな!」
- そういうことなら
- 私だって男達といちゃつくわ、彼を嫉妬させるために
アンは遊んでしまうんですね…(笑)。ここが、キャサリン・オブ・アラゴンとアン・ブーリンの違うところ。
そして、それがヘンリ8世の逆鱗に触れ、判断が下るわけです。
- そうしたら彼気付いちゃって
- 叫んで怒鳴ったわ
- すごく非難されたの!
- この魔女目とか
- でも、ねぇちょっと黙って
- 私こんなことにならなかったわ
- もしあなたのモノが勃てば
いや…言い方(苦笑)。
それで「首を落とせ」との命令が下ります。それにしても、これが史実とは驚きですね…。
この後サビが歌われますが、今まで歌われてきたサビとは聴こえ方が変わるのも、この曲の面白さです。
ちなみにサビの最後で「Say ‘Oh, well!’/Or go to hell!(「仕方ない」って言って/もしくは「地獄へ落ちろ」って)」と歌っていますが、その直後にアンサンブル(他の妻たち)が「Just go to hell!(地獄へ落ちろ!)」と返すのが痛快です。
そして、最後はこのようにして終わります。
[ANNE BOLEYN]
Sorry, not sorry about what I said[ENSEMBLE]
Sorry, not sorry about what she said[ANNE BOLEYN]
Sorry, not sorry about what I said
Don’t lose your head―ウェストエンドミュージカル“SIX”より “Don’t Lose Ur Head”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)
意味はこうです。
- アン:ごめんって、でも謝んない、私が言ったこと
- アンサンブル:謝罪はしている、でも言ったことに心からは詫びていない
- アン:ごめんって、でも謝んない、私が言ったこと
- アン:あんまり夢中にならないで(お遊びがすぎて頭をなくすことのないようにね)
最後の1文がダブルミーニングになっていることを、お忘れなく…!
