『SIX』ヘンリ8世の6人の妻を紹介(1/6)キャサリン・オブ・アラゴン

 
こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん@performingart2)です。
 

ミュージカル『シックス(SIX)』より “Ex-Wives” の英語歌詞に登場する6人の女性は、ヘンリ8世の6人の妻たち。

その1人目はキャサリン・オブ・アラゴン(Catherine of Aragon)という人物です。

ミュージカルにおけるイメージカラーはゴールド。彼女がどのような人物だったか、簡潔に見ていきましょう。

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Ex-Wives” がどのような曲かは、こちらの記事で解説しています。

 

“Ex-Wives” で歌われている概要

 

Ex-Wives” の後半では、6人の妻たちが、それぞれどのようにヘンリ8世との結婚生活を終えたかが、簡潔に歌われています。

キャサリン・オブ・アラゴンは「離婚(Divorced)」。彼女のパートではこのように歌われています。

 

My name is Catherine of Aragon
Was married twenty-four years, I’m a paragon
Of royalty, my loyalty is to the Vatican
So if you try to dump me
You won’t try that again

―ブロードウェイミュージカル“SIX”より “Ex-Wives”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)

 

要点をまとめると、このようなことが歌われています。

 

  • 結婚生活24年間
  • 私は忠誠のかがみ(見本)
  • 私の忠誠はローマ教皇に向かっている
  • だからもしあなたが私を振ろうと思っているならやめた方が良いかもね

 

ここを詳しく解説していきます。

 

押さえておくべき3つのこと

ヘンリ8世の兄の妻だった

 

キャサリンを知る上で、絶対に押さえておかなければいけないことがあります。それは、キャサリン・オブ・アラゴンが、もともとはヘンリ8世の兄・アーサーの妻だったという事実です。

ではなぜ、キャサリンはヘンリ8世と結婚したのでしょうか?それは、アーサーとの死別によるものでした。アーサーとキャサリンの結婚は、イングランドとスペインの安泰のためでしたが、愛し合っていた2人だっただけに死別はショックだったことでしょう。

当時、妻となる女性側から持参金を持ち込むことにより結婚がなされており、若くして未亡人となった女性は、持参金を持ち帰り帰国するのが一般的でした。

しかし、その巨額な持参金の返却を惜しんだヘンリ7世(ヘンリ8世の父親)が、ヘンリ8世との結婚を持ち掛けます。

※ちなみにヘンリ7世は、自身の妻を亡くした際、キャサリンとの結婚を申し出ますが、諸々の事情により取り下げています。

 

ヘンリ8世との離婚

離婚理由は「男の子ども」を望めないため

 

ヘンリ8世と結婚したキャサリンは、王妃としての務めを果たします。教養があり、国政に関与し、国民から慕われ、教育や慈善活動にも熱心だったようです。

しかし、1つだけ果たせなかった務めがあります。それが男子の出産です。

度々戦争が行われていた情勢などから、王家の安定的な継続は切実な問題でしたが、7人出産したうち生きたのはメアリー(後のイングランド女王メアリー1世)のみでした。

こういった理由から、ヘンリ8世のキャサリンに対する関心が次第に薄れていってしまいます

後継者をキャサリンに望めないと考えたヘンリ8世は、キャサリンとの離婚を計画します。

 

離婚は簡単ではなかった

 

「離婚」と聞くとシンプルな話に聞こえますが、当時と現在の「離婚」では意味がまるで異なります

まず、大前提として「離婚」が認められていませんでした

また「離婚」は存在せず、正確には「婚姻の無効」で「この婚姻は正当なものではなかった」ということを議論し、成立させるというものでした。

ヘンリ8世は次のことを主張し、キャサリンとの婚姻の無効を進めようとします。

 

  • 兄・アーサーと肉体関係にあったため、自分との婚姻は無効である

 

なぜ「肉体関係」を重視する必要があったかというと、婚姻の判断基準となっていた『旧約聖書』の『レビ記』では兄弟の妻と肉体関係を持つことがを禁じられていたためです。

ここで頭の回転の速い方だと「それならば、そもそもキャサリンとヘンリ8世は結婚できなかったのでは?」と思われるでしょう。なぜなら2人が結婚する際にも「肉体関係」の議論はなされて良いはずだからです。

その点でいうと、当時2人が結婚する際も『旧約聖書』の『レビ記』にのっとって「キャサリンとアーサーは肉体関係があったのかどうか」は議論されていました。しかし当時は「肉体関係はなかった」との判決が出ているため、キャサリンとヘンリ8世の結婚は成立しています。

早い話が、ヘンリ8世はこれまでの流れを、後継者が望めないことを理由に(公の理由ではなく、私的な理由)、覆そうとしているわけです。

 

 

教皇をめぐる争い

 

ヘンリ8世の申し出に当然ショックを受けるキャサリンですが、ここで冒頭で紹介したパートに注目してみましょう。

 

I’m a paragon
Of royalty, my loyalty is to the Vatican

―ブロードウェイミュージカル“SIX”より “Ex-Wives”(作詞:Toby Marlow, Lucy Moss)

 

これは「私は忠誠のかがみ、私の忠誠はバチカン(ローマ教皇)に向いているの」という意味です。

最初「忠誠」と聞くと、あたかも夫・ヘンリ8世に尽くした女性のように受け取られますが、直後「ローマ教皇に」と歌われることで、そうではないことが分かります。

さらに「So if you try to dump me/You won’t try that again(だからもしあなたが私を振ろうと思っているならやめた方が良いかもね)」と歌っている訳ですから、ミュージカル『シックス』ではヘンリ8世に挑発的で、ニュアンスとしては「なめんなよ」くらい言っているととらえて良いでしょう(笑)。

では、婚姻の無効に対するローマ教皇をめぐる、ヘンリ8世とキャサリンの動きはどのようになっているのでしょうか?

 

  • ヘンリ8世:特赦を求め始めた
  • キャサリン:婚姻の無効を認めぬよう圧力をかける
  • ヘンリ8世:離婚容認への圧力をかける
  • 教皇:イングランドでの教会裁判を許可
  • キャサリン:教皇特使に「アーサーと共に寝ることはしたが、肉体関係は持っていない」と告げる
  • ヘンリ8世:主要貴族に対して、離婚の意図(後継者を望めない)を表明
  • 教会裁判が開廷

 

この時代、教皇の権力は薄れていたそうですが、一連の離婚問題で教皇の立場が再注目され、国民は驚きつつも権威を感じたそうです。

ここまでで、離婚における教皇の立場は非常に重要だと分かりますが、結論から言うとキャサリンとヘンリ8世は「婚姻の無効」となります。

「婚姻の無効」が実行されたのは、自体がなかなか解決しない中で、キャサリンに興味を失ったヘンリ8世はアン・ブーリン(次の妻となる)と肉体関係を持ち、子どもができたからです。

ヘンリ8世はキャサリンとの「婚姻の無効」をするために、あらゆる文献を紐解き、教皇の首位権は違法であるという論文をまとめ「婚姻の無効」を実行しています。

この結果を受け、キャサリンはもはや王妃ではなくなり軟禁状態に置かれ、唯一の娘・メアリーとも会えぬまま生涯を終えることとなりました。

ヘンリ8世は自身の考えを貫くために、教皇に圧力をかけ、ローマと分裂し、その権力を自らのものとした過去がありますが、キャサリンは正面から真摯に教皇と向き合っていることが分かります。

こういったことが、歌詞に反映されているわけですね。

 

キャサリンと国民

 

なかなか難しい人生を送ったキャサリンでしたが、国民からは愛されていたようです。

離婚後軟禁状態に置かれたキャサリンでしたが、近辺の住民と積極的に接触し、住民たちは王妃ではなくなったキャサリンを「クイーン」と呼び続けたそうです。

48歳でこの世を去った際も、その葬儀に参加することを禁止されていたにも関わらず、多くの住民が参列したとされています。

また、一度ははく奪された娘・メアリーの王位継承権も、メアリーが女王になったことでキャサリンとヘンリ8世の婚姻関係が有効と見なされ、キャサリンの名誉は完全に回復したそうです。

 

いかがでしたか?

たった5行で歌われていることの背景には、これだけの歴史が詰まっていることが分かりました。

キャサリン・オブ・アラゴンの本心は “No Way” で歌われていますので、そちらをご覧くださいね。

 


それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん@performingart2)でした。

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