『スリル・ミー』の”Thrill Me”に見られるレオポルドの「奴隷思想」

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

 

ホリプロミュージカル『スリル・ミー(Thrill Me: The Leopold & Loeb Story)』より「スリル・ミー(Thrill Me)」の英語歌詞では、レオポルドの欲求が爆発しています。

レオポルドの感情の内側と、レオポルドの持っていた「奴隷思想」について見ていきましょう。

 

※ 基になっている事件については、次の記事をご覧ください。

※ 記事ではミュージカルにおける「私」を「レオポルド」、「彼」を「ローブ」と表記します。

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契約書を交わした理由

 

スリル・ミー(Thrill Me)」はレオポルドによって歌われる曲です。

契約書を交わしたにも関わらず、犯行を手伝わされるばかりで、自分が満たされることのない日々が続き、溜まった感情が爆発します。

 

そもそも2人が契約書を交わしたのは、お互いの欲を満たすためでした。

犯罪欲求に飢えていたローブは、完全犯罪を実行するために共犯者を求めていた。

性的欲求に飢えていたレオポルドは、ローブを求めていた。

そんな2人の欲を満たし合うように、それぞれがお互いの要求に応えます。

レオポルドは犯罪に協力する代わりに、ローブに性的欲求を満たしてもらう約束を、書面で取り交わしたのです。

 

レオポルドの感情の爆発

 

しかしレオポルドは「今日はそういう気分じゃない」などという理由で、レオポルドの欲求を満たすことを先延ばしにします。

そういう態度をとるローブに対して、レオポルドはこのように歌い上げます。

 

[NATHAN] Don’t forget what you promised on paper
What you’d do when we finished a caper
Every time I demand what’s required
You complain that you’re simply too tired
Thrill me

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Thrill Me”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • 書面で約束したことを忘れないでよ
  • 犯罪を辞めることになったらどうする
  • 僕が要求されたことを要求するたびに
  • 君はただ疲れたからと不満を言う
  • 僕を興奮させてよ

 

レオポルドはローブの興奮(犯罪欲求)を満たしているのに、自分の興奮(性的欲求)は満たされていないということです。

ローブはレオポルドが犯罪を手伝わなくなると困るので、ここは大きな駆け引きになっています。

また、印象的なのはここの歌詞です。

 

[NATHAN] If this keeps going on I’ll go crazy
I’m aroused, you’re conveniently lazy
So my rage and impatience keep growing
But they get my adrenaline going
Thrill me

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Thrill Me”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • もしこれが続くなら僕は発狂する
  • 僕は興奮しているのに、君は好都合なことに怠慢だ
  • だから、私の怒りといら立ちはどんどん大きくなっていく
  • でも、アドレナリンは出続ける
  • 僕を興奮させてよ

 

怒りといら立ちでいっぱいなのに、ローブに対する恋愛感情が募り続けるレオポルドの様子が手に取るように分かります。

今すぐにでも、満たして欲しいといった様子が伺えます。

 

 

レオポルドの「奴隷思想」(実話)

 

ここで、実話におけるレオポルドの「奴隷思想」について触れておきましょう。

私は『スリル・ミー』を初めて観た時、何故レオポルドがここまでローブに執着するのかが分かりませんでした。彼が仮に「恋愛対象」であったとしてもです。

しかし、実話を読んでいく上で分かったことがあります。それはレオポルドに「奴隷思想」があったということです。

 

レオポルドは幼少期から相手を「王」とし、自分を「奴隷」と位置付けて空想することを好んでいました

自分が奴隷になることで、相手にとって必要な存在であることを認識していたようです。(例え虐げられる立場であっても)

そんなレオポルドは、ローブを「超人」と崇め始めるようになります。(ニーチェ哲学により傾倒していたのは、レオポルドの方だった)

つまりレオポルドは、2人は恋愛関係に加えて「王と奴隷」といった関係性にもあると捉えていました。

ローブがレオポルドに対して裏切るような行為をする一方で、レオポルドにとって絶対的な存在であったローブに「自分は決してそんなことをしない」ということが、最後に歌われています。

 

But don’t treat me with kid gloves
I’ll always obey you
One perfect accomplice
Who’d never betray you, if you
Thrill me
Thrill me

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Thrill Me”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • 僕を子供扱いしないで
  • 僕はいつでも君に従います
  • 完璧な共犯者1名
  • あなたを裏切らない人、もしあなたが
  • 僕を興奮させてよ
  • 僕を興奮させてよ

 

レオポルドがローブから離れられない理由は、恋心だけでなく、奴隷思想にもあったことを知ると、2人の関係をより深く体感できるはずです。

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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