スラングを理解して『RENT』を深めよう

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

東宝ミュージカル『レント(RENT)』より “On The Street” の英語歌詞を見てみると、冒頭にホームレス、警察、マークのやりとりがありますが、見慣れない単語・聞き慣れない単語が多く、ピンと来ないフレーズがあるのではないでしょうか?

そんな単語を1つずつ解説しながら内容を説明していきますよ。今回はスラングを解説いたします。


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台詞のおさらい

 

On The Street” の冒頭のやりとりはこのようになっています。

 

(The POLICE OFFICERS stride offstage.
MARK continues to film BLANKET PERSON.)

BLANKET PERSON (To MARK):
Who the fuck do you think you are?
I don’t need no goddamn help
From some bleeding heart cameraman
My life’s not for you to
Make a name for yourself on!

ANGEL:
Easy, sugar, easy
He was just trying to —

BLANKET PERSON:
Just trying to use me to kill his guilt
It’s not that kind of movie, honey
Let’s go — this lot is full of
Motherfucking artists
Hey artist
You gotta dollar?
I thought not

(BLANKET PERSON crosses to downstage left with another HOMELESS PERSON.)

―ブロードウェイミュージカル “RENT” より “On The Street” (作詞:Jonathan Larson)

 

ホームレスの発言に注目してみましょう。スラングが乱発されているのにお気づきでしょうか?スラング、つまり「汚い言葉」は人に対して使いたくない言葉ですし、聞きたくない言葉でもあります。

しかしながら、このシーンでは生活が困窮した結果、心にゆとりのなくなったホームレスが使っています。気持ちを吐き捨てるように言葉を吐く、そんな形でスラングが使われていることを理解しましょう。

 

 

汚い言葉(スラング)

fuck

 

警官達がいなくなった後も、ホームレスの撮影を続けたマークに対して、ホームレスが怒って言うフレーズがこれです。

 

  • Who the fuck do you think you are?

 

普通に言うならば、 “the fuck” を外して…

 

  • Who do you think you are? … 君、自分のこと何だと思っているの?

 

と言っても良いのですが、これに “the fuck” が入ることで全体のフレーズ自体が汚くなり「お前、一体何様だと思ってんだよ!」というニュアンスに様変わりします。つまり、嫌な気持ちを全面に押し出して強調する要素があります。

fuck” とは「性交する(セックスする)」という意味で俗語です。日本語で言い換えるなら「ヤる」とか「犯す」といったニュアンスですから、いい意味では基本的に使いません。

fuck” を含めたフレーズを1つずつ丁寧に「こうだからこういう意味になります」と説明するのは非常に難しいので、とにかく “fuck” がフレーズに入っていた場合は「文章全体が汚い意味ニュアンスになっているんだな」とか「(精神的に)程度の低い人間がなんだな」とか、そういう風にイメージできるようになれば十分です。

こちらのブログに分かりやすい解説がありましたので、気になる方はのぞいてみるといいですよ。

 

 

goddamn

 

さて、お次はコレですね。

 

  • I don’t need no goddamn help

 

これも、次のような言い方で十分です。

 

  • I don’t need help … 助けなんていりません

 

しかし、こちらも “goddamn” が入ることで「助けなんていらねーよ」といったニュアンスになり、嫌な気持ちが全面に出ています。

“goddamn” とはこの2つの単語が組み合わさった単語だと言われています。

 

  • god … 神、キリスト
  • damn … 呪う、罵る、けなす、地獄に落とす

 

つまり「神を呪う、神をけなす、神を地獄に落とす」というような意味が元で、それが “goddamn” という1単語になり「くそっ!」とか「ちくしょう!」とかいう意味を持つようになりました。

ちなみに先ほどの “fuck” も、単体では同じ意味を持つので、映画で計画が失敗してしまったようなシーンでは “fuck!” や “goddamn!” 、 “damn!” がよく使われますよ。

“goddamn” に関する分かりやすい説明は、こちらのブログを参考にしてみてくださいね。

 

 

motherfucking

 

さて、最後はコレ。

 

  • Let’s go — this lot is full of motherfucking artists

 

これも、こういうフレーズで十分です。

 

  • Let’s go — this lot is full of artists … 行こう、この地区は芸術家でいっぱい

 

ただ、これだと “artists” に対するホームレスの印象が抜け落ちているんですね。言いたいことは「この地区はイカレた芸術家気取りがうじゃうじゃいるよ」でしょう。従って “artists” の前には「芸術家」を修飾する単語が入ります。なので、例えば “stupid(バカな)” とか “crazy(イカレた)” でも良いわけです。

それなのに何故 “motherfucking” を使っているのか…何故ならこれは、今日紹介した中でも一番汚い言葉だからです。それを理解するために、先ほどのように単語を分解してみましょう。するとこうなります。

 

  • mother
  • fucking

 

“fucking” は冒頭で説明した “fuck” と同じですから、「性交する(ヤる、犯す)」です。そして “mother” は悩まずとも「母親」を意味します。

ここで何か気付いた方がいらっしゃったら…そうです、残念ながら正解です。 “motherfucking” の文字通りの意味は「母親を犯す」になります。そこから転じて、「見下げはてた、不快な、あきれた」という意味になりました。

よって、ここは「行こう、この地区は見下げはてた芸術家がうじゃうじゃしてるね」といったニュアンスです。

いかがでしたか?

スラングを3つも紹介しましたが、どれも言われたくないものばかりでしたね。本当に汚い言葉の数々ですので、読者のみなさんは絶対に使わないでください!

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!