ミュージカル『レント（RENT）』より “Over the Moon” は、有名な童話集『マザーグース』の中にある “Hey Diddle Diddle” が元になっていることが分かりました！
“Hey Diddle Diddle” と “Over the Moon” の関係性を見ていきましょう。
この本との出会い
『レント』の “Over the Moon” が『マザーグース』と関係があるというのは、どこかの記事で読んだことがありました。
…が、調べるのをずっと後回しにしていたんですよね。何故ならちょっと面倒くさそうだから（苦笑）。
“Over the Moon” は、歌詞が意味不明な上に、読んだこともない『マザーグース』をまで手を出すのは苦痛だな…と思っていました。
しかし、転機は突然現れます。
『ハミルトン』の関係資料を探しに図書館へ行った時、目に留まってしまったんですよね、『マザーグース』の文字が。
大抵、見つけたいものは見つからず、見つけようと思っていないものは見つかったりするものです。
『マザーグース』の本はいくつかありましたが、ただ訳されている本では今回の参考になりません。
「どういう意図で書かれた詩なのか、どういった意味を持つ詩なのか」が分かる本を選ぶ必要がありました。
なんと言っても、モーリーンの歌う “Over the Moon” は『レント』きっての難解な曲ですから…（汗）。
そこで今回選んだのがこの本。
詩の意味はもちろん、どういった作品に引用されているのかも書かれていたので、とても参考になりました。
“Hey Diddle Diddle”
“Over the Moon” では『マザーグース』のうち、”Hey Diddle Diddle” という詩が引用されています。
まずはどのような詩か見てみましょう。
Hey diddle diddle,
The cat and the fiddle,
The cow jumped over the moon;
The little dog laughed
To see such sport
And the dish ran away with the spoon.―もっと知りたいマザーグース
（p.50）
確かに、色文字部分が『レント』の曲名と一致しますよね。
しかし、実際に “Over the Moon” の歌詞とじっくり比較してみると、凄いことが分かりました。
“Hey Diddle Diddle” に登場する全てのものが、 “Over the Moon” にも登場しているんです。
- cat … 猫
- cow … 牛
- dog … 犬
- dish … 皿
- spoon … スプーン
つまり “Over the Moon” は “Hey Diddle Diddle” をベースに、ものすごく大きく膨らませた曲だということです。
キーワードは「ナンセンス」
では何故この詩を元にしたのかが気になる所ですよね。
まずは “Hey Diddle Diddle” の訳を見てみましょう。
ヘイ ディドゥル ディドゥル
ねことバイオリン
雌牛が 月をとびこえた
これはおもしろいと
犬がわらった
おさらはおさじと かけおちだ―もっと知りたいマザーグース
読んでみてどう思いましたか？全く理解が出来なかったのではないでしょうか。
それで良いんです。それがこの詩の意味です。
つまりこの詩は「ナンセンス（無意味、ばかげている）」なんですよね。
牛が月を飛び越えたり、お皿がスプーンと駆け落ちしたり…現実で考えたら、あり得ないことを平然と歌っています。
ここがミソなんです。
この “Hey Diddle Diddle” は、ナンセンスを代表するような詩だということですが、モーリーンが “Over the Moon” のシーンで主張している点がそこなんです。
モーリーンは、かつて友達であった自分たちを立ち退かせようとしているベニーに対して抗議し、彼らの行為は「ナンセンス」だという主張をしています。
それを有名な『マザーグース』の詩をベースに揶揄しているのが “Over the Moon” なんですね。
あまり好きではなかった “Over the Moon” でしたが、俄然興味が湧いてきました。
調べ始めたら後へ引けなさそうで、むしろ興奮しています。モーリーンの世界へ突入です。
“Over the Moon” の、他の記事はこちらから。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん（@performingart2）でした！
こんにちは！
ミュージカル考察ブロガー、あきかん（@performingart2）です。