ミュージカル『スリル・ミー』の”Way Too Far”で歌われる「私」の後悔

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

 

ホリプロミュージカル『スリル・ミー(Thrill Me: The Leopold & Loeb Story)』より「戻れない道(Way Too Far)」の英語歌詞を見てみると、計画が実行目前のレオポルドの気持ちが歌われています。

ローブに従ったことに後悔するレオポルド。しかし、後悔先に立たず…。

そんなレオポルドの胸中を、歌詞と共に見ていきましょう。

 

※ 基になっている事件については、次の記事をご覧ください。

※ 記事ではミュージカルにおける「私」を「レオポルド」、「彼」を「ローブ」と表記します。

『スリル・ミー』の解説・考察本を執筆しました!

「レオポルドとローブ事件」はどのような事件だったのか?何故「終身刑+99年」という判決だったのか?そんな疑問を解消しながら、ミュージカル『スリル・ミー』の刺激に迫る解説・考察本。

実際の事件ととミュージカルを比較しながら「実話」、「ニーチェの哲学」、「裁判」の3つの視点から作品に切り込んだ1冊。

Kindle(電子書籍)ペーパーバック(紙書籍)、いずれも Amazon で販売中。

Kindle Unlimitedを初めてご利用の方は、体験期間中に0円で読書可能

 

レオポルドの行き過ぎた協力

 

レオポルドは “way too far(行き過ぎた)” というフレーズを繰り返しながら、完全犯罪を実行目前まで、ローブに協力してきた自分を悔いています

 

[NATHAN LEOPOLD] It had gone way too far
Yet there I was assisting
It had gone way too far
I was acting like his prisoner
Much too late to start resisting

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Way Too Far”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • それは、あまりにも行き過ぎた行為だった
  • でも、僕は手助けしてしまった
  • それは、あまりにも行き過ぎた行為だった
  • 僕は彼の捕虜のように振る舞っていた
  • 抵抗を始めるには遅すぎる

 

ここでレオポルドは “I was acting like his prisoner(僕は彼の捕虜のように振る舞っていた)” と歌っているのが印象的です。

捕虜とは「戦争などにおいて敵の権力内に陥った者」のこと。

つまり、この歌詞においてレオポルドは「ローブの権力内に陥った者」と自分を歌っています。

レオポルドにとって、ローブは魅力的な存在でした。

そして、その魅力を独り占めしたいがために、彼を手助けした結果、行き過ぎた…。

振り返ってみれば、それは彼の捕虜になったも同然で、今さら抵抗しても遅い…ということです。

 

しかしレオポルドは、こうなってしまった具体的な理由を見出すことが出来ていません。

何が間違っていたのか、どうしてここに至ってしまったのか、何故良心に従うことができなかったのかも、もはや分からないのです。

 

 

レオポルドの胸中

 

ローブは非常にひねくれ者です。

発言していることと、考えていること、行動に移していること、それらのどこに真実があるのか、レオポルドにはよく分かりません。

それでも、ローブの性格を「自分しか君を理解することは出来ない」と「僕はわかってる(Everybody Wants Richard)」で歌っています。

 

こういったローブの特性を「戻れない道(Way Too Far)」では”dark side(ダークサイド、邪悪な側面)“と表現しています。

 

His dark side was difficult to swallow
Not difficult to follow
I tried to stay calm
I tried to stay sane
The heart is a muscle that I can’t explain

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Way Too Far”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • 彼の邪悪な側面は飲み込みにくいものでした
  • 従うことは難しくない
  • 僕は冷静を装った
  • 僕は正気を保とうとした
  • 僕にとって心臓は説明できない筋肉だった

 

レオポルドはローブの邪悪な側面を100%理解し、受け入れたとは言えないながらも、従い冷静を保っていました

ここでは、実話におけるレオポルドの「奴隷思想」や「感情の欠落」に触れているように感じます。

 

さて、このようにして2人は次の曲 “Roadster(スポーツカー)” で、完全犯罪を実行に移します。

これをもって、2人は永遠に結ばれるとレオポルドは歌います。

 

And then he’d be tied to me forever
I’m smart but he was clever
Too late to say no
I walked to his car

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Way Too Far”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • そして、彼は永遠に私と結ばれるのだ
  • 僕は賢いけど、彼はずる賢い
  • 断るには遅すぎる
  • 僕は彼の車まで歩いた

 

つまり、契約書で取り交わした内容によって、ローブを満たしたレオポルドは、やっと満たされる番が来るのです。

さて、この先ローブが満たされることはあるのでしょうか?2人の結末はご自身の目で見届けて下さいね。

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください