ホリプロミュージカル『スリル・ミー(Thrill Me: The Leopold & Loeb Story)』より「隠された真実(Why)」の英語歌詞を見てみると、長い年月投獄されていたネイサン・レオポルドが「何故」殺人事件を犯してしまったのかを回想していることが分かります。
レオポルドが殺人を犯した動機は、一体何だったのでしょうか?
※ 基になっている事件については、次の記事をご覧ください。
※ 記事ではミュージカルにおける「私」を「レオポルド」、「彼」を「ローブ」と表記します。
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ローブに従った理由(ミュージカル)
ミュージカル『スリル・ミー』は、レオポルドと仮釈放委員会のやりとりから始まります。
台本には「54歳のレオポルド」とあるので、このシーンでは事件を起こした19歳の時から長い年月が経っていることが分かります。
仮釈放委員会は、事件の経緯も、証拠も全て揃っているが、「何故(why)」事件を起こしたのか?事件を起こした「理由(why)」は何なのか?「動機(why)」は結局何だったのか?を尋ねます。
↓ 釈放されたレオポルド。
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しかしレオポルドはそのシンプルな質問に対して、もう回答したと伝え、「隠された真実(Why)」では、このように歌っています。
I went along with Richard
That’s the reason why
They put me here in 1924―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Why”(作詞:Stephen Dolginoff)
意味はこうです。
- 私はリチャードに従っていた
- それが理由です
- それが、1924年に私がここに入れられた理由です
また、こうも歌われています。
It wasn’t on a dare or on a whim
It’s hard to comprehend now
That the reason why
Was simply that I went along with him―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Why”(作詞:Stephen Dolginoff)
意味はこうです。
- けしかけられたのでもなく、気まぐれでもありません
- 今やもう理解することさえ難しい
- それが理由です
- 彼に従っていた、たったそれだけのことなのです
この「従っていただけ(went along)」というのが、仮釈放委員会が理解に苦しむ点なのですが、実際、レオポルド自身も、今や過去の自分を理解することさえ難しいと歌っており、それほどに、ローブに没入していたことが分かります。
ローブに従った理由(実話)
過去の自分を理解することが難しいと歌うレオポルドですが、実は、実際にこのような発言がレオポルド本人がしています。
“Looking back from the vantage point of today, I cannot understand how my mind worked then. For I can recall no feeling then of remorse. Remorse did not come until later, much later. It did not begin to develop until I had been in prison for several years; it did not reach its full flood for perhaps ten years.
―Charles River Editors(2015)”Leopold and Loeb: The History and Legacy of One of 20th Century America’s Most Notorious Crimes and Trials (English Edition)“(Kindle版)、検索元 amazon.com(第5章、1段落)
意味はこうです。(あきかん訳/意訳含む)
- 今、振り返ってみると、あの時の自分の心の動きがよくわからない。あの時、後悔の念を抱いたことを、全く思い出せないからだ。自責の念に駆られるのは、もっとずっと後だ。獄中での反省が芽生えたのは数年後であり、それが全開になるのは恐らく10年後だっただろう。
ニーチェに傾倒していたレオポルドは「ローブこそ超人だ」と考えていた側面がありました。
それに加えて、同性愛者であったことから性的欲求が満たせなかったこと、ローブに対して恋愛感情を持ったこと、ローブには性的に満たされたかったことなどが絡み合い、ローブは「絶対的な存在」となっていきます。
「彼に従っていただけ」という言葉の裏には、こういった背景があることを理解しておくと、よりミュージカルを理解しやすくなるはずです。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。