劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「タンバリンのリズム(Rhythm of the Tambourine)」の英語歌詞を見てみると、登場人物にはない人の名前が2人も出てきます。
これ、一体誰なのでしょうか?
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日本語歌詞にも登場する人物たち
エスメラルダ登場のシーン…情熱的に踊る彼女のダンスと歌声に魅了された方も多いのではないでしょうか?
さて、今回お伝えするのは登場人物にいない男性2人についてです。
「タンバリンのリズム(Rhythm of the Tambourine)」最初の方のブロックにその登場人物が現れます。まず1つ目のブロックを見てみましょう。
Hey, soldier boy
I see how you stare
Hey, butcher man
I see how you admire―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Rhythm of the Tambourine” (作詞:Stephen Schwartz)
ここは日本語版でもその通り訳されていますね。
” Hey(ねぇ)” と声をかけながら観客の中にいるであろう軍人(soldier boy)や肉屋(butcher man)を誘惑するように踊っているのです。
” soldier boy” の部分は本来” boy” を入れなくても良いのですが、” boy” を入れ「軍人のぼうや」というニュアンスにすることでより挑発度を増していると言えます。セクシーさ満点です!
” I see how you~” は「あなたがどんな風に~しているか見える(分かる)わよ」となりますので、2行目は「あなたがどんな風に見とれているか分かるわよ」ですし、4行目は「あなたがどんな風に眺めているか分かるわよ」という意味になります。
「どんな風に」のニュアンスとしては「下心を含んだ目で」ということになるでしょう。
日本語歌詞には登場しない人物たち
さて、問題の男性2人は2つ目のブロックに出てきます。
Come gather ‘round
Hey Jacques and Pierre
Come see me dance
To the rhythm of the tambourine―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Rhythm of the Tambourine” (作詞:Stephen Schwartz)
“Come gather ‘round(寄って来て集まって)” の後に “Hey Jacques and Pierre” とありますね?
1ブロック目同様、” Hey” と言っているだけあって、誰かに声を投げかけているのですが…その相手が2人の男性「Jacques(ジャック)」と「Pierre(ピエール)」です。
しかしながら、その2人が実際目の前にいるかといえばそうことではないんですね。
「ジャック」と「ピエール」はフランス人によくある名前です。
ここは実際にジャックやピエールが存在しているかが重要なのではなく、ニュアンス的に「一般のどんな人でも」ということを意味していると解釈しましょう。
日本に置き換えて言えば「佐藤さん」とか「鈴木さん」ってよくある名前ですよね?
実際そこにいなくても「ほら、佐藤さんも鈴木さんも寄っておいでよ」と言うことで、なんとなく「そこにいるみんな」に話しかけている雰囲気が伝わってくるのではと思います。
ですから「お堅い軍人さんに商売をやっている人間、そして一般人も全部ひっくるめて集まって、私のダンスを見て」という状況がつかめればここはOKです。
フランス人によくある名前を使って表現しているところが、とても上手だなと感じています。
日本語版にはない面白さを英語版で楽しんでみて下さいね。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。