エスメラルダが歌う、自身とキリストとの共通点とは?

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「神よ 弱き者を救いたまえ(God Help the Outcasts)」の英語歌詞を見てみると、初めてノートルダム大聖堂に入ったエスメラルダがイエス・キリストに話しかけるように歌うところから始まります。

彼女は自身とイエス・キリストとの共通点を歌っていますが、キリスト教徒ではない彼女はどのような点でイエス・キリストと共通するところがあるのでしょうか

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中世ヨーロッパにおける「身体障がい者」の扱いはどのようなものだったのか?「ジプシー」はなぜ迫害され、「魔女狩り」はどのようにして起こったのか?

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半信半疑のエスメラルダ

 

神よ 弱き者を救いたまえ(God Help the Outcasts)」の歌詞の冒頭を見てみましょう。

 

I don’t know if you can hear me
Or if you’re even there
I don’t know if you would listen
To a gypsy’s prayer

―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “God Help the Outcasts” (作詞:Stephen Schwartz)

 

4行になっていますが、2行ずつが1つづきになっているので、2つの文章になっています。整理すると次の通りです。

 

  • I don’t know if you can hear me or if you’re even there
  • I don’t know if you would listen to a gypsy’s prayer

 

いずれも “I don’t know if you~” で始まっています。これは「あなたが~であるかどうか、私には分からない」という意味です。

エスメラルダがノートルダム大聖堂の中で、神に祈りを捧げるシーンですから、ここでいう “you” とは、 “God(神、キリスト)” のことですね。

それでは「~」にはそれぞれ何と書かれているか…ですが、こういうことが歌われています。

 

  • 私の声が聞こえるのか、もやはあなたがそこにいるのか(私には分からない)
  • ジプシーの祈りに耳を傾けるかどうか(私には分からない)

 

初めてノートルダム大聖堂に入り、これから祈りをしようというエスメラルダの半信半疑する様子から始まっているといえますね。

 

キリストとエスメラルダの共通点とは

 

続きの歌詞を見てみましょう。

 

Yes, I know I’m just an outcast
I shouldn’t speak to you
Still I see your face and wonder
Were you once an outcast too

―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “God Help the Outcasts” (作詞:Stephen Schwartz)

 

前半:自分の立場を明確にしているエスメラルダは賢い

 

まず1行目ですが、冒頭に “yes” が入ることで後に来る文章が強調されます。ここでは「えぇ、そうよ」といったニュアンスで捉えると良いでしょう。

また “just” も強調ですから、ここは「えぇ、そうよ、私はただの浮浪者だって分かっている」ですね。

2行目は見ての通り「私はあなたに話しかけるべきではない」です。

何故、エスメラルダがそう考えているかというと、彼女はジプシーでありキリスト教徒ではないからです。

祈りを捧げるよりも前に、異教徒であるということからGod(キリスト)に突き放されるのではと考えたのでしょう。

自分の身分・立場は分かっている」とエスメラルダ側から先に申し出ている様子が感じ取れる一文ですね。

 

後半:共通点を投げかけるエスメラルダが強くて美しい

 

3行目のstillは「対立的な内容を伴った場合に “それでも” 」という意味になります。

前半では「疑心」を口にしていたエスメラルダですが、still以降は彼女の中にある「確信」が歌われており、この2つが対立しているために、ここのstillは「それでも」という意味になっています。

その「確信」というのが “Were you once an outcast too” です。

この文を分かりやすくすると “were you an outcast?” で「あなたは浮浪者(放浪者)ではなった?」です。

ここに “once” と “too” を入れて「あなたも、かつては浮浪者(放浪者)ではなかった?」となります。

ですから、ここの4行は「それでも私はあなたの顔を見てそして不思議に思うの、『あなたもかつては浮浪者(放浪者)ではなかった?』と…」という意味になります。

 

 

キリスト教の理解に努めよう

 

キリストが放浪者という点で、いまいちピンとこない方もいらっしゃるでしょうか?

イエス・キリストは様々な試練や苦境を乗り越えながら、キリスト教を広めるために各地を回った存在です。

このように「放浪」を経験した者として、エスメラルダはキリストに共通する部分を見出し、 “outcast” と表現しているのですね。

このパートは「ジプシーの私なんかに耳を傾けて頂けるなんて思わない。でも、あなただって私達と同じような放浪者だったわ。だから同じ者として、私があなたに祈り、あなたがその祈りの声を聞いてくれても良いでしょう?」という気持ちが含まれており、 “outcast” 同士、同じ目線に立って欲しいというエスメラルダの願いが込められているのです。

 

キリスト教の理解が、より作品を深める

 

いかがでしたか?

神よ 弱き者を救いたまえ(God Help the Outcasts)」は全体を通して歌詞がシンプルでとても分かりやすくなっています。

故に心の奥深くに響くものがありますが、今回紹介した部分はその極みと言えるでしょう。

『ノートルダムの鐘』はキリスト教のと知識なしでは面白みも半減ですから、簡単な触りの部分だけでも理解しておくといいですね。

理解出来れば感動は更に深まります!こちらのブログでもどんどん紹介していきますので、是非、歌詞を読み込んでみて下さいね。

※尚、キリスト教において正確には「神≠イエス・キリスト」ですが、このシーンは何かしら偶像を前に歌っていると考えられるので、分かりやすくするために「神=イエス・キリスト」という解釈で説明しています。キリスト教における詳しい概念について知りたい方は、是非ご自身で調べてみて下さいね。

 

中世ヨーロッパにおける「身体障がい者」や「ジプシー」の扱いについては【ミュージカル『ノートルダムの鐘』が現実的な3つの理由:~ 中世の身体障がい者、ジプシー、そして魔女狩り ~】で詳しくまとめています。

中世ヨーロッパのリアルを知ることで、作品の見え方に深みが出ます。読んで視野を広げてみて下さいね。

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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