『ノートルダムの鐘』で「鐘の音」に込められたメッセージと考察

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「ノートルダムの鐘(The Bells of Notre Dame)」の英語歌詞を見てみると、「鐘の音」を表現する単語に神と死が関係していることが分かりました。
それらを通じて観客に伝えたいメッセージが何なのかを考えます。

「鐘の音」を表現する単語とは次の3つです。
・thunder…怒号
・psalm…讃美歌
・toll…弔いの鐘をつく
これらの単語から「ノートルダムの鐘(The Bells of Notre Dame)」で歌われる「鐘の音」が何を意味し、どんなメッセージを伝えてるのかみていきましょう。
Music from the Musical
・作品名:ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)
・曲名:ノートルダムの鐘(
The Bells of Notre Dame)
・訳詞:高橋知伽江(作詞:Stephen Schwartz)
Contents:
歌詞の比較
日本語
「ノートルダムの鐘(The Bells of Notre Dame)」のオープニング、日本語歌詞ではこのように歌われています。
時には強くとどろき
時にはささやいてこの街の魂を歌う鐘
鳴らせノートルダム―劇団四季ミュージカル 『ノートルダムの鐘』 より 「ノートルダムの鐘」(訳詞:高橋知伽江)
英語
一方の英語歌詞はどうでしょうか?
The big bells as loud as the thunder
And little bells soft as a psalmAnd some say the soul
Of the city’s the toll
Of the bells
The bells of Notre Dame―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “The Bells of Notre Dame” (作詞:Stephen Schwartz)
比較すべき点はここです。
・The big bells as loud as the thunder … 時にはとどろき
・And little bells soft as a psalm … 時にはささやくように鳴る
・And some say the soul of the city’s … この街の魂を歌う鐘
日本語では英語の表面的な意味を訳しているのですが、英語歌詞を理解すると「鐘の音」と「神」との関係性を理解することができます。
そして、訳されていない次のフレーズを理解することで、作品が放つメッセージの受け取り方が変わってきますよ。
・the toll of the bells, the bells of Notre Dame
単語に隠される意味
「神」を連想させる “thunder” と “psalm”
“thunder” は「雷、とどろき」ですから、フレーズをを直訳するとこのような意味になります。
・The big bells as loud as the thunder … 大きな鐘は雷のように大きな音で
しかし “thunder” には次の意味もあるので「大きな鐘は怒号のように大きく(鳴る)」とも解釈できます。
・thunder … 威嚇、非難、怒号
また、耳慣れない単語 “psalm” は「讃美歌、聖歌」の意味です。
・psalm … 讃美歌、聖歌
日本語では「ささやくように鳴る」とありますが、本来は「小さな鐘は讃美歌のようになめらかに(鳴る)」という意味なんですね。
こうやって単語を紐解いていくと、ノートルダムの鐘の音が時に突き放し、時に寄り添う「神の声」のように感じませんか?
「死」を連想させる “toll”
この後登場する”the toll of the bells, the bells of Notre Dame” は、直訳するとこうです。
・the toll of the bells, the bells of Notre Dame … ゆるやかに鳴る鐘の音、ノートルダムの鐘
しかし “toll” にはもう1つ意味がありました。
・toll … (弔いの鐘などを)ゆるやかにつく、(人の死などを)鐘を鳴らして報ずる
つまり「弔いの鐘の音、ノートルダムの鐘」とも解釈することもできるため、ミュージカルの冒頭から人の死を暗示しているとも言えます。
人の死とは、カジモドを育ててきたフロローのことであり、カジモドが愛したエスメラルダのことでもありますね。
「鐘の音」に含まれる、強いメッセージ
ここまで「鐘の音」がどのように表現されているかを説明してきましたが、それを一言で表しているのが “And some say the soul of the city’s” です。
日本語とほとんど変わりませんが、厳密にはこういう意味です。
・And some say the soul of the city’s → そしてある人は言う、それはこの街の魂だと
つまり「ノートルダムの鐘の音はパリの魂」で「パリをつかさどっている精神の根本」とも言い変えられます。
ここで一度立ち止まって考えて頂きたいのですが、何故パリの魂が「ノートルダム大聖堂」ではなく「ノートルダムの鐘の音」なのでしょうか?
それは「鐘の音=カジモド」だからです。
当然と言われればそうなのですが、これの真意を考えたことがありますか?
私の考察はこうです。
・パリ市民にとってノートルダムの鐘の音は魂である。
・それはいわば「神の声」に値する。
・そんな鐘の音をついているのはカジモド。
・よって、カジモドは「神の声の代弁者」ともいえる。
つまり、市民が遠巻きにしていた存在(カジモド)が、実は市民の心に血を通わせていたのです。
目に見えない「鐘の音」、目にすることのない存在を「魂」と言い切っているところに、この作品の強いメッセージを感じませんか?
「鐘の音」を表現する単語1つ1つに意味があり、メッセージがあることを覚えておいてくださいね。
カジモドが差別を受ける原因となっている外見や、名前の由来はこちらの記事をご覧ください。
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