ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “Farmer Refuted” の英語歌詞を見てみると、アレクサンダー・ハミルトン(Alexander Hamilton)とサミュエル・シーベリー(Samuel Seabury)が言い合っていることが分かります。
今回は、シーベリーの主張がどんなものかみていきましょう。
サミュエル・シーベリーは独立前のアメリカで、ハミルトンのライバルとして認知されている人物ですよ。
※ 歴史的背景は、西川秀和先生(@Poeta_Laureatus)の記事を参考にさせて頂きました。詳しくは、こちらをご覧ください:西川秀和 note
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“Farmer Refuted” で歌われている内容は?
“Farmer Refuted” を聴いた大半の方は「アレクサンダー・ハミルトンが誰かと言い合いをしているな」と感じるでしょう。
それ、正解です。
“Farmer Refuted” は、独立に向けて戦いたいと思っているアレクサンダー・ハミルトンと、反対意見を持っているサミュエル・シーベリーとの言い合いが曲になっています。
このシーンは、イギリスがアメリカを植民地化している、独立前のアメリカです。
シーベリーは、イギリスに対決姿勢を見せているアメリカに危機感を抱いていたため、公開状『大陸会議の議事録に関する自由な考え(Free thoughts on the proceedings of the Continental Congress)』を執筆しました。
しかし、その内容に納得いかなかったハミルトンが反対意見の公開状を書き、シーベリーが応ずるというやりとりが、何度か行われました。
最後にハミルトンが書いた “Farmer Refuted(反駁された農夫)” という文書が、この曲名にもなっています。
詳しくはこちらをご覧ください。
サミュエル・シーベリーの主張は?
では、シーベリーはどのようなことを主張しているのか、彼のパートのみ抜き出してみていきましょう。
前提として、サミュエル・シーベリーは司教なので、民を諭すような、すました話し方をしています。
一方のハミルトンは、ため口でストレートな物言いです。
真逆のアプローチをする2人ですが、両者非常に頑固で、主張を譲らない・曲げないという点を押さえておきましょう。
Hear ye, hear ye! My name is Samuel Seabury, and I present
“Free thoughts on the proceedings of the Continental Congress!”
Heed not the rabble who scream revolution
They have not your interest at heart―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Farmer Refuted” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
冒頭の “Hear ye, hear ye!” は、人これからする話に注目して欲しい時に使う呼びかけです。
その後自己紹介をし『大陸会議の議事録に関する自由な考え』を発表すると民衆に語り掛けています。
・ 聞きたまえ、聞きたまえ!我が名はサミュエル・シーベリーである。
・ これから『大陸会議の議事録に関する自由な考え(Free thoughts on the proceedings of the Continental Congress)』を発表しますぞ!
こうやって注目を集め、民衆を諭し始めます。
・ 革命を叫んでいる者どものことなど、気にする必要はありません。
・ 実のところ、彼らはあなた方のことなど気にも留めていないのですから。
「革命を叫んでいる者ども」とは、ハミルトンをはじめとする独立を望む者たちのこと。
彼らは勝手気ままにやっているので、耳を傾けないように…と忠告交じりに主張しているのですね。
この言いぶりに、ハミルトン側のマリガンはこう言います。
・ Oh my god. Tear this dude apart … マジかよ、この気取り屋、引き裂いちまおうぜ
簡単に言ってしまえば「うるせぇ、黙れよ」といったような意味。もっと過激に言えば「うるせぇ、こいつぶった切ってやろうか」でしょうね(苦笑)。
マリガンは、ハミルトンと同じく好戦的ですから発言も過激です。
しかし、そんなこと耳にも届かないシーベリーは引き続きこう続けます。
Chaos and bloodshed are not a solution
Don’t let them lead you astray
This congress does not speak for me―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Farmer Refuted” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
戦争すること自体に反対なので、まずはこう切り出しています。
・ 無秩序と流血は解決にはなりません
そして、また独立を望む者たちや、アメリカ議会を非難する主張をしています。
・ 彼らに巻き込まれて道を踏み外さぬように
・ この議会は私の代弁をしてくれてはいないのです
ここで、アーロン・バーが一言。
・ Let him be … 言わせておけ
直訳すれば「そっとしておけ」ですが、この場面では「言わせておけ」が適切でしょう。
バーも独立を望む者の1人ですが、好戦的なマリガンとは違って、冷静沈着ですから様子を見守る…といったスタンスです。
段々調子の出てきたシーベリーは、さらにこう加えます。
They’re playing a dangerous game
I pray the king shows you his mercy
For shame, for shame!―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Farmer Refuted” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ここはもはや民衆への諭しではなく、独立を望む者たちへの戒めですね。
・ 彼らは危険な遊びをしているのです
・ 私はイギリス国王があなたたちに情けをかけて下さることを心から願っています
・ 恥を知りなさい、恥を知りなさい!
そして、ここで我慢ならなくなったハミルトンが “Yo!(おい!)” と歯向かっていくわけですね。
ハミルトンの主張は次の記事で解説します。
“Farmer Refuted” の、他の記事はこちらから。
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