劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「世界の頂上で(Top of the World)」の英語歌詞を見てみると、石像達の気持ちの変化が分かりやすく表現されています。
初めは外部の人間を恐れ、信頼することを拒んでいた石像達ですが、エスメラルダがノートルダム大聖堂の頂上に来たことでその考え方が変わっていきます。
石像達のカジモドへ寄り添う様子と、エスメラルダを理解しようとする様子。
次第にに変わっていく彼らの心の動きを1つずつ見ていきましょう。
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今までの石像たち
「世界の頂上で(Top of the World)」の歌詞に、次のようなフレーズがあります。
For all these years
You’ve stayed alone
And free from danger
We’ve shared your fears
It wasn’t safe
To trust a stranger
But maybe we were wrong here
Could she belong here?
This girl appears
And she is kind
And we’re admitting
We’d give three cheers
To see you both
Forever sitting
Look at you sitting
On top of the world―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Top of the World” (作詞:Stephen Schwartz)
石像達が歌っているパートです。
まず、フレーズの前半部分を見てみましょう。この部分ではかつてのカジモドと石像達の様子が歌われています。
- stayed alone … 一人ぼっちだった
- free from danger … 危険から免れていた
- shared your fears … 君(カジモド)と恐怖を分かち合ってきた
- It wasn’t safe to trust a stranger … 見知らぬ人を信じることは安全ではなかった
カジモドは長年ずっと一人ぼっちで、危険からは守られた状態でした。
何故ならフロローがカジモドをそう匿ってきたからです。
カジモドと石像達は恐怖を分かち合い「見知らぬ人を信じるのは安全でない」と考えてきました。そのことが1~6行目で歌われています。
考え方の変化
しかし、7行目の”But”から石像達の考え方が変わったことが分かります。
- But maybe we were wrong here … しかし、我々はこの点で間違っていたかもしれない → here(この点)というのは、先に挙げた4点のことを指します。
- Could she belong here? … 彼女はここに属せるのではないだろうか → she(彼女)とはもちろんエスメラルダのことですね。
エスメラルダの登場は思いがけないものでしたが、彼女と接していくごとに「見知らぬ人を信じることは恐怖ではない」と、偏見から解放されていきます。
そしてエスメラルダは自分たちの居場所にいても良い存在ではないか…とも考え始めます。
何故このように考え方が変わっていったのかは、次の部分を見れば明らかですね。
- kind … 親切
- we’re admitting … 我々は許している
エスメラルダは彼らが想像していたよりも遥かに親切な人間だったからです。
そんな彼女を石像達は知らぬ間に許し、気づけば受け入れていていた…という流れが理解できます。
“We’d give three cheers”のは「万歳三唱をしたい」という意味ですよ。
そして最後にはこんなことを言っています。
- To see you both … お前達2人を見る → both(2人)とは言うまでもなくカジモドとエスメラルダのことですね。
- Forever sitting … 永遠に(一緒に)座っている → 直前にbothがあるので、一緒に座っているという意味が含まれます。
最終的に石像達はカジモドとエスメラルダが “Top of the World” と称されるノートルダム大聖堂の頂上(世界の頂上)で「ずっと一緒に座っていられることを見ていたい…」と願うようになるのです。
石像達のこんな考え方、気持ちの変化はエスメラルダの清くて美しい性格なくしては無理だったでしょう。
短くてシンプルなフレーズですが、このシーンの良いところをギュッと凝縮したフレーズですね。個人的には大好きなパートです。
難しい単語はほとんどありません!是非皆さんも歌詞を読み込んでみて下さいね。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!