劇団四季ミュージカル『ウィキッド(WICKED)』より “I’m Not That Girl(私じゃない)” の英語歌詞を見てみると、エルファバがグリンダをどんな風に見ているかが歌われています。
日本語では「全てが綺麗」という一言で説明されていますが、英語ではかなり具体的に歌われています。
これを知るだけで、胸が締め付けられるような、そんなエルファバの想いを感じることが出来るはずです。
おさらい
まず、グリンダの容姿について触れているパートを、 “I’m Not That Girl(私じゃない)” から見てみましょう。
Blithe smile, lithe limb
She who’s winsome, she wins him.
Gold hair with a gentle curl
That’s the girl he chose
And Heaven knows
I’m not that girl…―ブロードウェイミュージカル “Wicked” より “I’m Not That Girl” (作詞:Stephen Schwartz)
ここで歌われるのは、自分とは対照的なグリンダについてです。
このブロックに到達するまでの歌詞はずっとグリンダのことを “that girl” と表現していましたが、ここで地に足のついた表現 “the girl” となり、より切なさを増しています。
この違いについては次の記事をご覧ください。
グリンダの容姿
それでは先程の歌詞を1つ1つ見ていきましょう。それぞれこのような意味になります。
- Blithe smile … 気さくな笑顔
- lithe limb … しなやかな体
- She who’s winsome, she wins him … 彼女(グリンダ)は魅力のある人、彼女が彼(フィエロ)を勝ち取るわ
- Gold hair with a gentle curl … 穏やかに巻かれた、金色の髪
- That’s the girl he chose … あれこそがまさに彼が選ぶ女の子
- And Heaven knows … そして天(神)は知っている
- I’m not that girl … 私は(彼に選ばれる)その女の子ではないと
こんなに沢山のことが描かれていたんですね。
自分の持っていない全てのものをグリンダは持っているという、そういった思いがひしひしと伝わってきて、胸が締めつけられそうになります。
エルファバの抑制
続く次のブロックも見てみましょう。
Don’t wish, don’t start
Wishing only wounds the heart.
I wasn’t born for the rose and the pearl.
There’s a girl I know
He loves her so
I’m not that girl…―ブロードウェイミュージカル “Wicked” より “I’m Not That Girl” (作詞:Stephen Schwartz)
あぁ…もう泣きそうです。はやる気持ちを抑えているんですね。
理想を求めると、心が傷つくだけだと…どんどん殻にこもっていってしまうエルファバの恋が手に取るように分かります。
そして、ここが特に良い。
- I wasn’t born for the rose and the pearl … 私はバラや真珠のために生まれたのではない
- There’s a girl I know … それなら私は「その子」を知っている
バラや真珠というのは美しい女性の象徴というか、そういった方にふさわしい装飾品として取り上げられることが多いですよね。
それにふさわしいのは私ではなく、グリンダ…ということをこんな表現で歌うなんて。
自分をグリンダと比較し続け、こちらまでフィエロから遠ざかっていくような気持ちになってしまいます。
「ふさわしい」と言えば、 “Dancing Through Life(人生を踊り明かせ)” では、「誰が何とふさわしいか」ということが “deserve each other” というフレーズを使って歌われていますが、この曲では「私はふさわしくない」ということが中心に歌われています。
他のみんなは「自分は何とふさわしいのか」歌う一方で、エルファバはただ一人「自分はふさわしくない」ということを歌う…。この構図に私はただただ感心してしまいました。
それにしても、何でこう片思いの曲って良いんでしょうね…。
ノートルダムの鐘の “Heaven’s Light(天国の光)” も同じくらい感動したなぁ…。
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。