『スリル・ミー』の”Nothing Like a Fire”で歌われる「彼」の犯罪欲求

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

 

ホリプロミュージカル『スリル・ミー(Thrill Me: The Leopold & Loeb Story)』より「やさしい炎(Nothing Like a Fire)」の英語歌詞を見てみると、ローブの犯罪欲求が歌われていることが分かります。

ローブの犯罪欲求はどれほどのもので、レオポルドに対してはどのような思いを抱いていたのか見ていきましょう。

 

※ 基になっている事件については、次の記事をご覧ください。

※ 記事ではミュージカルにおける「私」を「レオポルド」、「彼」を「ローブ」と表記します。

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ローブの犯罪欲求

 

やさしい炎(Nothing Like a Fire)」は、曲だけ聴くと、非常に穏やかな恋の歌のように聞こえます。

レオポルドとローブの2人が対等な恋愛関係にあれば、これはロマンチックなラブソングだったでしょう。

しかし歌詞を読めば読むほど、この曲からはローブの犯罪欲求の異常性を認めることになります。

冒頭の歌詞を見てみましょう。

 

There’s nothing like a warm romantic fire
To put me in the proper frame of mind
There’s nothing like a roaring, raging fire
To help me unwind

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Nothing Like a Fire”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • こんな温かくてロマンティックな炎なんてない
  • 心を適切な額縁に入れてくれる炎なんて
  • とどろき、荒れ狂う炎なんてない
  • 僕をくつろがせてくれるのを手伝ってくれる炎なんて

 

ここで歌われているのは「荒れ狂う炎ほど、ロマンチックで自分を落ち着かせるものはない」ということですが、それはつまり「犯罪をすると落ち着く」という解釈になります。

ミュージカルでも描かれている通り、実話でもローブは小さな犯罪から大きな犯罪へと行動を移していきました

ローブは幼い頃から犯罪欲求を持っている少年でした。

そんな彼は「いずれ完全犯罪を起こす」という思いを温めながら生きますが、その過程の1つとして、ミュージカルでは放火が描かれています。

実際に放火をしたかどうかは分かりませんが(窃盗はよくしていた)、この「炎」で「欲求」を表現しているのが「やさしい炎(Nothing Like a Fire)」の巧みなところだと感じます。

犯罪を起こしたことに対する満足感と、新たな犯罪欲求はこのように歌われています。

 

There’s nothing like the sight of something burning
To soothe me with a hot seductive light
There’s nothing like the smell of something burning
To start to ignite my desire

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より “Nothing Like a Fire”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • 何かが燃えている光景に勝るものはない
  • 魅惑的な熱い光で私を癒すために
  • 何かが燃えている匂いに勝るものはない
  • 欲望に火をつけ始める

 

 

ローブのレオポルドに対する気持ち

 

では、ローブはそんな放火を共にしたレオポルドについてどのように感じているのでしょうか?

この歌詞を見てみましょう。

 

There’s nothing like the sound of crackling embers
To calm me when my pulse begins to raise
There’s nothing like the glow of sizzling embers
To brighten your face

―ミュージカル“Thrill Me: The Leopold & Loeb Story”より“Nothing Like a Fire”(作詞:Stephen Dolginoff)

 

意味はこうです。

 

  • パチパチ音を立てる残り火の音に勝るものなんてない
  • 脈が早まるのを、落ち着かせるように
  • 灼熱の残り火が燃え盛るものに勝るものはない
  • 君の顔を輝かせるのに

 

「君」とはレオポルドのこと。

レオポルドを輝かせるのが残り火(embers)とは、なんと悲しいことでしょう。

ローブに対するレオポルドの気持ちは、常に燃え盛っているのに、ローブはそうではないのです。

しかし、同時にこうも捉えられます。

残り火であっても、完全犯罪を起こすのに必要不可欠な存在、レオポルド

そんなレオポルドは、ローブの夢見る完全犯罪を成立させる精神安定剤でもあると…。

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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