カジモドはmonster…「化け物」でなく「怪物」と訳された理由

劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より“The Bells of Notre Dame(ノートルダムの鐘)”を見てみると、“monster”という言葉が出てきます。

カジモドのことを指すこの言葉ですが、何故「化け物」ではなく「怪物」と訳されたのでしょうか?

劇団四季版の日本語訳が発表される前(つまり英語版を聞きこんでいた時)、私は“monster”は「化け物」と訳されるものだとずっと思い込んでいました。

何故なら「化け物」とは「見るからに恐ろしいもの、見るに堪えないもの」という印象があり、例えば「お岩さん」のような容姿をイメージしていたからです。

そう考えていた矢先に、“monster”が「怪物」と訳されていたので、私としてはこの訳に「?」が付いてしまって、どうも納得がいかなかったのです。というのも、私にとっての「怪物」とは「力強い恐竜のようなもの」で、「ゴジラ」のような想像物を指したからです。

何故“monster”を「化け物」ではなく「怪物」と訳したのか…今回はそう訳された理由について考えてみたいと思います。

 

「化け物」?それとも「怪物」?

“monster”の意味

まず、“monster”の意味から見ていきましょう。辞書上ではこうなっています。

 

  • monster… (想像上の)怪物、化け物、怪奇な形のもの、奇形体、極悪非道な物、悪党
    monster(weblio)

 

…うぅ。

結局「怪物」も「化け物」もどちらも訳の中に入っています。どちらも「怪奇な形のもの」なので、「見た目が恐ろしいもの」とか「気持ちが悪いもの」を指すんですが、これでは比較が出来ないので、日本語における「化け物」と「怪物」の違いについて見ていきましょう。

 

 

「化け物」の意味

「見るからに恐ろしいもの、見るに堪えないもの」という印象があった「化け物」ですが、辞書ではどのような説明が成されているのでしょうか?

 

動植物や無生物が人の姿をとって現れるもの。キツネ・タヌキなどの化けたものや、柳の精・桜の精・雪女郎など。また、一つ目小僧・大入道・ろくろ首などあやしい姿をしたもの。お化け。妖怪。
化け物(コトバンク)

 

私が想像していたものは、あながち間違いではなかったですね。

気にすべき点としては、元が人間ではないということ。人間ではないものが、人間の姿をした状態が「化け物」なんですね。「化け物」と聞くと「妖怪」のような印象を受けますが、悪さをする者ばかりではないので、例えば『鶴の恩返し』の鶴が女性になった状態は「化け物」ということになるでしょう。

また、こんな風にも書かれていました。

 

①異様な姿・形をして、化け現れたもの。妖怪変化。おばけ。 「 -が出た」
②普通の人間とは思われない能力をもっている人。
化け物(コトバンク)

 

①は先程と同じ内容なので、②に注目します。「普通の人間とは思われない能力を持っている人」…つまり、「突出した能力を持ち合わせた人」ということです。野球で言えばイチロー選手、陸上で言えばボルト選手、そして将棋で言えば藤井棋士なんかがそうですね。

「将棋界に化け物現る!」といったキャッチコピーが新聞の一面に出ようものなら、「将棋界に凄い棋士が現れたんだな!」と分かります。

そうするとカジモドはどうでしょう?人間ですから①ではなさそうですし、②は作品内で使われている意味が違いますよね。

 

 

「怪物」の意味

それでは「怪物」にはどのような意味があるのでしょうか?

 

1 正体のわからない、不気味な生き物。
2 性質・行動・力量などが人並外れた人物。「政界の怪物」
怪物(コトバンク)

 

「化け物」と微妙にニュアンスが異なっているのがお分かりになるでしょうか?「怪物」とは、人間ではないものが「人間」の形をとった姿でさえなく、「得体の知れない生き物だ」ということです。

「怪物」の②は「化け物」の説明にあった「②普通の人間とは思われない能力をもっている人」にかなり近いですが、これに「行動・力量」が加わっています。

野球の松井秀喜選手が「ゴジラ」と呼ばれるのも、人並外れた力量(パワー)あったからでしょう。

また、このような説明もありました。

 

正体不明の生物や物体,とりわけ醜悪・不快・恐怖などの念を抱かせる存在の総称に用いられる語。また奇形の意味にも用いられる。奇形の誕生は古代にあって凶兆とされ,モンスターという英語もラテン語のmonstrum(兆候,警告の意)に由来する。一般に怪物と呼ばれるものは想像の産物が多く,いくばくかの事実や伝承を核に,人間の持つさまざまな不安や畏怖が投影されて成立した一種のシンボルともいえる。分類すれば,(1)ドラゴンやバジリスクなど,何種類かの生物の形態を混合したもの,(2)巨大ないし矮小なもの,(3)正常な同種と形態を異にするもの,に大別できる。
怪物(コトバンク)

 

要約するとこうです。

 

  1. 正体不明の生物(とりわけ醜悪・不快・恐怖などの念を抱かせる存在の総称)
  2. 奇形の意味
  3. モンスターという英語もラテン語のmonstrum(兆候,警告の意)に由来
  4. 一般に怪物と呼ばれるものは想像の産物が多い(何種類かの生物の形態を混合したもの)

 

こう見てみると、私が持っていた「怪物」に対するイメージは④だったんですね。①~③の意味まではあまり考えたこともなかったですし、特に③については初耳なので勉強になりました。

 

 

「化け物」でなく「怪物」と訳された理由

さて、「化け物」と「怪物」の違いをそれぞれ見ていきましたが、決定的な違いはココです。

 

  • 化け物…人間でないものが人間の形となった(化けた)もの
  • 怪物…得体の知れないもの

 

カジモドは人間ですから、「化け物」ではありません。もちろん、「化け物みたいだ」という意味で“monster”を「化け物」と訳しても良いでしょうが、それ以上に意味としてピッタリくるものは「怪物」でしょう。

それに加えて、ココも押さえておきたいですね。

 

  • 化け物…普通の人間とは思われない能力をもっている人
  • 怪物… 性質・行動・力量などが人並外れた人

 

カジモドは異常なほどに力(パワー)のある存在です。見た目の点をとっても、パワーの点をとっても、「怪物」という意味での“monster”がピッタリなんです!

いかがでしたか?

このように日本語の意味を1つずつ比較することで、大きな発見があり勉強になりますね。ここまで考え尽くされて「怪物」と訳されているのであれば…これは徹底的に調べ上げられた、素晴らしい訳です。

軽く「化け物では?」と考えていた私…。

劇団四季、恐れ入りました!

♪『ノートルダムの鐘』の曲一覧はこちらから:ノートルダムの鐘/英語歌詞を徹底分析!日本語で意味を理解しよう

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