ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “Alexander Hamilton” の英語歌詞を見てみると、アレクサンダー・ハミルトン(Alexander Hamilton)がどんな人物だったのかが分かります。
今回は彼は母親の死後に起こった出来事をご紹介します。
※ アレクサンダー・ハミルトンについてより詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
※ 『ハミルトン(Hamilton)』を理解する上で、「ラップ」とは何かも押さえておきましょう。
『スリル・ミー』の解説・考察本を執筆しました!
「レオポルドとローブ事件」はどのような事件だったのか?何故「終身刑+99年」という判決だったのか?そんな疑問を解消しながら、ミュージカル『スリル・ミー』の刺激に迫る解説・考察本。
実際の事件ととミュージカルを比較しながら「実話」、「ニーチェの哲学」、「裁判」の3つの視点から作品に切り込んだ1冊。
Kindle(電子書籍)、ペーパーバック(紙書籍)、いずれも Amazon で販売中。
Kindle Unlimitedを初めてご利用の方は、体験期間中に0円で読書可能!
従兄の死
最初の曲 “Alexander Hamilton” は、登場人物がそれぞれの立場からアレクサンダー・ハミルトンを説明する歌詞内容となっています。今回はジョージ・ワシントン(George Washington)のパートを見ていきましょう。※韻を踏んでいるところは赤文字にしています。
Moved in with a cousin, the cousin committed suicide
Left him with nothin’ but ruined pride, somethin’ new inside
A voice saying “(Alex) you gotta fend for yourself”
He started retreatin’ and readin’ every treatise on the shelf
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Alexander Hamilton” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
さて、母親を亡くして一人きりになってしまったハミルトンは従兄と生活を始めました。しかし、そんな従兄も “committed suicide(自殺)” してしまいます。
従兄がハミルトンのために何か残したものがあったかといえば…特にありませんでした。 “Left him with nothin’ but ~” の部分は「彼は~以外何も残さなかった」という意味なので、一見何か残したように見えますが、 “ruined pride” はモノではないんですね。
“pride(プライド)” が “ruined(壊された)” と言う意味になりますので、ここは「従兄の死はハミルトンのプライドを壊しただけだった」というようなニュアンスになり、ハミルトンに何のプラスももたらさなかったことが伺えます。
この歌詞の最初の2行については、歌詞内では書ききれない出来事が起きています。次の記事にまとめているので、是非併せてご覧ください。
意識の芽生え
そしてこの後にある “somethin’ new inside” は、「ハミルトンの中で新しい何かが芽生えた」という解釈でよいでしょう。身寄りのなくなった彼の中に何かが芽生え、その何かはこう囁きます。 “you gotta fend for yourself” と。
“gotta” は “got to” を省略したカジュアルな言い方で、「~しなければ」という意味になります。『アラジン』の “One Jump Ahead(逃げ足なら負けない)” にも同じ表現がありますので、詳しい説明はこちらをご覧くださいね。
また、nothingやsomethingをカジュアルな口語体にしたのが “nothin'” や “somethin'” です。本来「ナッシング」「サムシング」と発音するところを、「ナッシンッ」「サムシンッ」といった形で発音します。若者の間ではこういった言い方をすることが多いのですが、『ハミルトン(Hamilton)』はラップ調の曲ですから、こういった表現にしているのでしょう。
少し横道にそれてしまいましたが…
“fend for yourself” で「自活する、独力で何とかやっていく」という意味になりますから、ハミルトンの中でうごめく “you gotta fend for yourself” という声の意味は「アレックス、君は自力で何とかしていかなければいけないんだよ」と囁いた…というわけです。
若干十代のハミルトン。一体彼がどんな心境であったかは想像しえないですね。
自力で勉強
そして、彼が何をし始めたかが、 “He started retreatin’ and readin’ every treatise on the shelf” の部分で分かります。
まず、 “retreating” には「隠れ家」という意味がありますので、従兄の死後、ハミルトンは隠れ家にこもり始めたと分かります。
また “reading every treatise on the shelf” ですが、 “treatise” は「学術論文」ですので「棚にある全ての学術論文を読み始めた」という意味なります。ニュアンスとしては「そこらじゅうにある文献を読みあさった」という感じになるでしょう。
窮地に立たされたハミルトンは、まずは知識を身につけることから始めたんですね。それも大学で読むような本をたった一人で…覚悟が半端じゃないですね。
さて、母親を亡くしたのが12歳ごろで、彼を大きく成長させるハリケーンの来襲が18~19歳頃ですから、今回ご紹介した内容は恐らく12~18歳位の間の出来事でしょう。
「ハリケーン来襲」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
“Alexander Hamilton” の、他の記事はこちらから。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。