ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “My Shot” の英語歌詞を見てみると、 “shot” という単語が何度も登場することが分かります。
しかしこの “shot” は、全て同じ意味で使われている訳ではありません。
全部で4つの意味がある、この単語について解説しますよ。
“shot” の持つ4つの意味は、次の4つです:
-
- 野望
- 挑戦する
- 1杯
- 撃つ
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野望
初めてこの曲を聴いた時、 “shot” とは「撃つ」という意味だと思っていました。
独立戦争が含まれる内容のミュージカルでしたから「my shot = 俺の一発」だと解釈していたのです。
しかし、歌詞の内容を見ていくとどうも意味が成立しなかったので、改めて “shot” の意味を調べてみると、想像していたのとは全く違った意味が出てきたのです。
・ shot … 目指す、目標にする
“shot” が「目標」という意味であれば、 “my shot” は「俺の目標」という意味になりますが、ハミルトンは非常にハングリー精神の強い男性ですから「俺の野望」がニュアンス的に近いでしょう。
なので、何度も登場する “I’m not throwing away my shot!” は、次のような意味になりますね。
・ 俺は俺の野望を捨てない
・ 俺は俺の野望を諦めるつもりはない
ハミルトン、ラファイエット、マリガン、ローレンスの4人は、アメリカ独立という野望を諦めるつもりはないと歌っているんですね。
※ 登場人物については、こちらをご覧ください
挑戦する
(追記:2020.5.25)
次に登場するのが、マリガンのパートで登場する “I’m gonna take a shot!” 。
Yo, I’m a tailor’s apprentice
And I got y’all knuckleheads in loco parentis
I’m joining the rebellion cuz I know it’s my chance
To socially advance, instead of sewin’ some pants
I’m gonna take a
Shot!―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “My Shot” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
・ take a shot … やってみる、挑戦してみる
マリガンは仕立屋の息子なのですが「服を縫うぐらいならこの暴動に加わって挑戦する方を選ぶぜ!」と歌っているのがこの部分です。
・ 俺は仕立屋の見習いだ
・ 俺は暴動に加わる、何故ならこれは俺の社会進出へのチャンスだと分かっているから
・ パンツを縫うよりも、俺は挑戦してやるぜ
ちなみに、ハミルトンも後半ではこんな風に歌っていますね。
We gonna rise up; time to take a shot
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “My Shot” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ハミルトンは「俺は野望を諦めない」とこの曲を通して歌いつつ、最後には「今こそ立ち上がれ、やってやる時だ(行動に移す時だ)!」と歌っているわけです!
アンサンブルも含めて “We gonna rise up; time to take a shot” と “Not thrown’ away my shot” が交互に歌われるところなんて、最高にカッコイイですよね。
1杯
(追記:2020.5.25)
マリガンの次に、ローレンスはこう歌っています。
Eh, but we’ll never be truly free
Until those in bondage have the same rights as you and me
You and I, do or die, wait till I sally in on a stallion
With the first black battalion
Have another
Shot!―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “My Shot” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ここで歌われているのは、次のような内容です。
・ 第一陣と共に俺が馬に乗って出陣するまで待て
・ もう1杯飲めよ
よく「ショットグラス」と言いますが、これはお酒を飲む小さなコップのことで、だいたい25~50mlのグラスを指すようです。
テキーラなんかは、こういったショットグラスに入れて飲むことが多いですよね。
これを踏まえると、ローレンスが言っている “have another shot” は「もう一杯飲め」という意味になります。
これからの独立に向けた野望を語らいながら「俺はこんなことやってやるからさ、まぁ、もう一杯飲めよ」といった具合です。
お酒を飲みながら歌うシーンですが、それであれば使うコップはジョッキやグラスでも良かったはずです。
しかしこの曲題 “my shot” に合わせて「ショットグラス」を使っているこだわりは、本当に芸が細かくてセンスが光るなと感じました。
ちなみに、ラファイエット、マリガン、ローレンスがソロで歌いながら、最後はハミルトンも含めた4人で “shot” と歌う部分ですが、ここは必ず4人が立ち上がって持っているショットグラスを合わせて乾杯するという振付になっていますから、それもまたかっこいいんです!
このセンスに重ねて、劇場ではこんなショットグラスが売っていたものだから、思わず買ってしまいました。
まだお酒を入れて飲んではいませんが、そのうち…
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撃つ
4つ目はハミルトンの親友でありライバルであるBurr(バー)のソロ “If you talk, you’re gonna get shot!” からです。
未来のアメリカについて語らうハミルトン、ラファイエット、マリガン、ローレンスはやや興奮気味。そんな4人に対して「落ち着け」と冷静に介入するのがバーです。
気持ちは分かるが、この状況下で過激なことを言ったら危ないぞ…といった感じに忠告しているんですが、この中に登場する “shot” の意味はこうです。
・ shot … (鉄砲、弾丸を)撃つ
これこそ、まさに私が最初に想像していた通りの意味の “shot” ですね。
“get shot” は受動態になっていますから「撃たれる」という意味で、 “gonna” は “going to” の短縮形(カジュアルな言い方)ですから、「もししゃべったら、お前たち撃ち殺されるぞ!」と忠告しているんですね。
情熱的ですぐに熱くなるハミルトンの性格と、石橋を叩いて渡る冷静なバーの性格が分かるパートですね。
“My Shot” の、他の記事はこちらから。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。