ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “Helpless” の英語歌詞を見てみると、エリザベスと結婚することになったハミルトンが胸の内をエリザベスに話しています。
どんなことが歌われているのでしょうか?
ちなみに、「冬の舞踏会」がどのようなものだったかはこちらの記事で説明しています。是非併せてご覧ください。
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目次
歌詞のおさらい
今回はこの曲におけるハミルトンのパートを取り上げますよ。
Eliza, I don’t have a dollar to my name
An acre of land, a troop to command, a dollop of fame
All I have’s my honor, a tolerance for paine
A couple of college credits and my top-notch brain
Insane, your family brings out a different side of me
Peggy confides in me, Angelica tried to take a bite of me
No stress, my love for you is never in doubt
We’ll get a little place in Harlem and we’ll figure it out
I’ve been livin’ without a family since I was a child
My father left, my mother died, I grew up buckwild
But I’ll never forget my mother’s face, that was real
And long as I’m alive, Eliza, swear to God
You’ll never feel so…ALL WOMEN:
Helpless!
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Helpless” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
I’ve never felt so—
My life is gon’
be fine cuz
Eliza’s in it.
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “Helpless” (作詞:Lin-Manuel Miranda)
ハミルトンがエリザベスに伝えたこと
ハミルトンが持っていないもの
“Eliza, I don’t have” と始まっているこの部分では、ハミルトンがエリザベスに自分が持っていないものをいくつか挙げています。つまり、 “I don’t have(俺は持っていない)” は次の全てにかかっています。
- a dollar to my name…びた一文も
- An acre of land…(1エーカーの)土地も
- a troop to command…率いる軍隊も
- a dollop of fame…少しの名声も
つまり、お金はない、土地もない、任務上立場も低いし、名声もないと歌っているんですね。
ハミルトンが持っているもの
それに対するのが、 “All I have’s” の部分。これは “All I have is” の略で、「俺が持っている全てのものと言えば」という意味です。こちらも先ほどと同様、 “All I have’s” が次の全てにかかっています。
- my honor…自尊心
- a tolerance for Paine…痛みに対する忍耐
- A couple of college credits…大学の単位2つ
- my top-notch brain…一流の頭脳
単語それぞれにいくつかの意味があるので、どういう解釈をしたら良いか少し悩みましたが、恐らく上記のような解釈で良いと思います。 “honor” とは「名誉、栄誉、光栄」という意味がありますが、先ほど持っていないものの方に “fame(名声)” が入っていたので、こちらは少し「名誉」と訳すのはおかしいかなと思い、「自尊心」としました。自尊心をコトバンクで調べてみると…
- 自尊心…自分の人格を大切にする気持ち。また、自分の思想や言動などに自信をもち、他からの干渉を排除する態度。プライド。
とありましたから、ハミルトンにぴったりですよね。お金はない、土地もないけれどプライドは大いにありますから。
twitterでお世話になっている西川秀和先生(@Poeta_Laureatus)によると、ハミルトンは大学を卒業してはいなかったそうなので、3つ目の「大学の単位2つ」というのは、自分の学はそれ位だし…ということを表現しているのだと受け取れます。
(2019.1.19:追記)
ハミルトンはキングズ・カレッジ(King’s College、現在のコロンビア大学/Columbia University)に通っていましたが、やはり卒業していないようです。
In fact, he never graduated from college because the Revolutionary War intervented.
―The Hamilton Cookbook: Cooking, Eating, and Entertaining in Hamilton’s World(p.6)
独立戦争が起こったために、卒業できなかったようですね。
エリザベスの家族が引き出した、ハミルトンの新しい一面
お金、土地、名声も何も持っていなくて、あるもの言えばプライドと頭脳くらい。それなのに…という意味でハミルトンは “Insane(狂っている、ばかげている)” を使っているのでしょう。普通、こんな男だったら、結婚相手として認めないというニュアンスです。
そして、エリザベスの家族は自分の新しい一面を引き出してくれたと歌います。それが、この部分ですね。
- Peggy confides in me…ペギーは自分を信頼してくれいている
- Angelica tried to take a bite of me…アンジェリカは自分をかまってくれる
そしてストレスなど感じていない、エリザベスを愛する気持ちは嘘じゃない、ハーレムに家を構えて理解を深めていこうと歌っていますよ。
ハミルトンの過去
家族にも受け入れられ、この上ないハミルトンですが、そんな彼は自分の生い立ちをエリザベスに話します。幼い頃から家族なしで生活していた、父親は蒸発し、母親は死に、不作法に育ったとあります。これは、自分がエリザベスと違って教育がなっていないということを言っているんですね。
ハミルトンの生い立ちについては、オープニング曲 “Alexander Hamilton” でも歌われていますので、ぜひ併せてご覧ください。
そんな風に育ったけれど、ハミルトンは母親の顔を忘れたことはないと歌います。これは “Alexander Hamilton” では歌われていなかったことですので、強いメッセージの1つと受け止められます。家族というものを経験したことのないハミルトンですが、母親という存在は、とても大切な存在として彼の中にあることが分かりますね。
そして、 “You’ll never feel so…(今までこんな気持ちになったことはない…)” に女性たちの “Helpless” が続きます。つまり、ハミルトンも「こんなにどうすることも出来ない気持ちは、今まで味わったことがない」と歌っているんです。
それに加えてハミルトンは「人生は上手くいく、だって僕の人生にエリザベスがいるから」と、ハミルトンパートは結びます。あぁ、なんと素晴らしい展開でしょうか!
でもこの曲が素晴らしいのは、この曲にとどまらないところなんです。アンジェリカ視点で歌われた次の “Satisfied” があってこそ、それぞれの曲が弾き立ちます。 “Satisfied” については、是非次の記事をご覧ください。
“Helpless” の、他の記事はこちらから。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。