ザズの朝の報告、英語版は超難解なギャグだった①

劇団四季ミュージカル『ライオンキング(The Lion King)』より「朝の報告(The Morning Report)」の英語歌詞を見てみると、ザズが早口で朝の報告をしていることが分かります。

日本語ではおやじギャグのようになっていますが、英語はかなり難解なギャグ。高度な内容ですが、1つずつ解説していきますのでついてきてくださいね。

 

朝の報告(The Morning Report)」は、動物に対する印象が異なる点が最大の違いです。

 

他言語のジョークを理解することほど難しいことはありませんが、分かると二重の楽しみが味わえますよ!

Music from the Musical・作品名:ライオンキング(The Lion King)
・曲名:朝の報告(The Morning Report)
・訳詞:浅利慶太(作詞:Elton John and Tim Rice)
・楽譜:The Morning Report
アルバムを視聴/楽譜 ・アルバム(日本語):ライオンキング
・アルバム(英語):The Lion King
・楽譜:

 

歌詞の比較

日本語

 

まずは日本語を見てみましょう。

 

ヒヒはヒーヒーないている
キリンはリンリン電話して
象はゾロゾロ集まって
禿鷲 タワシでお掃除

ワニは庭を歩いてる
サイチョウ 体調くずれてる
わが家の卵と隣の卵が
次々かえってきています

豹はひょうひょうとしています
スカンク トランプ一人勝ち
昼はみんながランチに帰ります

これが モーニング・リポート
朝のご報告
全ての声に 異議はありません

―劇団四季ミュージカル 『ライオンキング』 より 「朝の報告」(訳詞:浅利慶太)

 

英語

 

では英語はどうでしょうか?

 

Chimps are going ape
Giraffes remain above it all
Elephants remember
Though just what I can’t recall
Crocodiles are snapping up
Fresh offers from the banks
Showed interest in my nest egg
But I quickly said, “No thanks!”
We haven’t paid the hornbills
And the vultures have a hunch
Not everyone invited will be
Coming back from lunch

This is the morning report
Gives you the long and the short
Every grunt, roar, and snort
Not a tale I distort
On the morning report

―ブロードウェイミュージカル “The Lion King” より “The Morning Report” (作詞:Elton John and Tim Rice)

 

登場する動物

日本語

 

ジョークの中で使われる言葉が、動物の名前にかけていたり、鳴き声にかけていたりするのが日本語です。

 

・ ヒヒ … ヒーヒー

 

・ キリン … リンリン

 

・ 象 … ゾロゾロ

 

・ 禿鷲 … タワシ

 

・ ワニ … 庭

 

・ サイチョウ … 体調

 

・ 卵 … かえる

 

・ 豹 … ひょうひょう

 

・ スカンク … トランプ

 

英語

 

では、英語はどうなっているのでしょうか?

 

・ Chimps(チンパンジー) … going ape

 

・ Giraffes(キリン) … above it all

 

・ Elephants(ゾウ) … remember

 

・ Crocodiles (ワニ) … snapping up

 

・ hornbills(サイチョウ) … paid

 

・ vultures(ハゲワシ) … hunch

 

これだけ見ると「何のこと?」と思われるでしょう。

分かるのは、登場している動物がほとんど一緒だということだけ。

では、どういう内容になっているのでしょうか?

 

 

ジョークの解説

チンパンジー

 

“Chimps are going ape”

 

「チンパンジーが~している」という文章ですが、ここは “going ape” を理解することがミソになってきます。

“ape” はサル全般のことを指す単語ですが、 “go ape” となると次のような意味を持ちます。

 

・ go ape … ひどく興奮している

 

サルが興奮して「キーキー」鳴いているイメージから、このような意味を持つようになったのでしょう。

直訳すると「サルになる」ですから、2つの意味を理解すると何故このフレーズが笑えるかが分かりますよ。

 

・ 表の意味:チンパンジーがひどく興奮しています

 

・ 裏の意味:チンパンジーがまるでサルのようです(サルなだけに)

 

キリン

 

“Giraffes remain above it all”

 

“above” は「~の上、~を越えて」というように、高さを表現する言葉です。

しかし、 “above all” で「とりわけ」という意味になります。

 

・ 表の意味:キリンは中でもとりわけ落ち着いていました

 

・ 裏の意味:キリンは中でも上の方にとどまっていました(首が長いだけに)

 

キリンは首が長いのが特徴ですが、その長さと高さを表す単語をかけているのが、このフレーズの笑いどころなんですね。

先ほどのチンパンジーが興奮している一方で、キリンはチンパンジーたちに影響されなかったということですね。

 

ゾウ

 

“Elephants remember/Though just what I can’t recall”

 

このフレーズは、なかなか難しいです。

もし私が、ディズニー映画『ズートピア』を観ていなければピンとこなかったフレーズでしょう。

直訳はこうなります。

 

・ ゾウはよく覚えている/私が思い出せないようなことを

 

ズートピア』のあるシーンでも「ゾウって何でも覚えてるんだよ、すごいよな~。」というような台詞があるのですが、日本人の我々としては「ゾウって記憶力が良いの?」少し疑問に思うのではないでしょうか?

調べてみたところ、これは英語のことわざだと分かりました。

 

『現代英米情報辞典 初版』(研究社 2000)p367 「An elephant never forgets.」があり、「ゾウは決して忘れない。」ということわざ。
ゾウは記憶力がよく、昔の恨みを忘れないとされている。この言葉は記憶力がよいことを賞賛する分脈で使われることもあるが、自分に不親切であった人に対する恨みをいつまでも忘れない、という意味で使われることも多い。
『小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版』(小学館 1994)p859 「see the elephant」があり、人生経験を積む、世間を見る;(大都会などの)見物をする(「米俗」とあり)。
以上の資料を提供する。

ゾウを肯定的に扱った英語のことわざを知りたい。(レファレンス協同データサービス)

 

ゾウは記憶力が良いとされており「記憶力が良いことを称賛」したり「ずっと根に持つ」ようなことをずっと表現する場合に “An elephant never forgets” と言うんですね。へー、面白いですね!

つまり、これはことわざにかけているジョークだったんですね。

つまり、表面上は「ゾウはよく覚えている/私が思い出せないようなことを」ですが、ことわざの「ゾウは決して忘れない」ということわざにかけているんですね。

これは高度なジョークだ…。

 

 

ワニ

 

“Crocodiles are snapping up/Fresh offers from the banks”

 

こちらもなかなか難解です。

“snap up” には「かみつく」に加えて「先を争う」という意味があります。また “banks” には「土手」と「銀行」という意味があります。

見ての通り、それぞれ2つの意味がありますね。

まずは、表面上の意味から見ていきましょう。

 

・ Crocodiles are snapping up … ワニはかみついています

 

・ Fresh offers from the banks … 土手でかえった卵を

 

う~、怖いですねぇ(汗)!

“fresh offer” が何かははっきりとは分からないのですが、 “fresh” には「生まれたて」、 “offer” には「現れる」という意味があるので、ニュアンス的には間違っていないと思われます。

また、次のフレーズで卵の話が続いて出てくるので、こう解釈して良いと思います。

では、どういう意味とかかっているのかというとこうです。

 

・ Crocodiles are snapping up … ワニは先を争っています

 

・ Fresh offers from the banks … 銀行の新しい申し出を

 

ここでは “fresh offers” が「申し出」や「提案」になるのだと思います。融資などの話なんでしょうか…。

いずれにせよワニは我先にとその条件を取りに行っているということなんですね。これもまた高度なジョークですねぇ!

 

サイチョウ

 

” Showed interest in my nest egg/But I quickly said, “No thanks!” ” はワニの内容と続いています。

かえった卵を次々と食べているワニが “showed interest(興味を示した)” んですね、 “my nest egg(私の鳥の巣の卵)” に!恐ろしいぃ…。

だから、鳥であるザズはすぐにこう言いました。

 

・ No thanks! … 結構です!

 

ジョークが利いているのはこの次からです。

“We haven’t paid the hornbills” のうち、 “hornbill” は「サイチョウ」で、ザズ自身の鳥の種のことを指しています。

“bill” には「紙幣、お金」という意味がありますから、比較するとこうなりますね。

表面上は「我々はまだサイチョウに支払いをしていない」ですが、鳥の一種である “hornbill” と、お金を意味する “bill” がかっているところが笑いどころですよ。

 

ハゲワシ

 

“And the vultures have a hunch/Not everyone invited will be/Coming back from lunch”

 

これは一番難しく、正直に言うと正しいか自信がありません…。

“vulture” とはハゲワシのことで、 “hunch” には「こぶ」「直観」「肉塊」といった3つの意味があります。

「ハゲワシには~がある」という構造の文章なので、どれも当てはまりそうですよね。

しかし、続くフレーズが次の意味になることから、 “hunch” は「肉塊」を意味しているのではないかなと思います。

 

・ Not everyone invited will be/Coming back from lunch … 招待された全員が、ランチから戻って来るるわけではない

 

つまり、ハゲワシに招待された者は「ランチになってしまった」ということです。

ハゲワシの話がなければ「ランチに招待された全員が帰ってきているわけではないようです」というのは別に何ということはない文章ですが、その前に「ハゲワシは肉塊を持っている」という隠れた意味を見抜けると「招待された者のいくつかは食べられてしまったんだ」と想像できます。

なんと末恐ろしい!!

 

モーニング・リポートとはどんなもの?

 

ここまでのジョークの内容、分かって頂けたでしょうか?

ここまで歌ってきましたが、結局はこういうことなのです。

 

・ Gives you the long and the short … つまるところ

 

・ Every grunt, roar, and snort … 全ての不平も、大声も、鼻息も

 

・ Not a tale I distort … 事実を曲げてはおりません

 

・ On the morning report … この朝のご報告では

 

面白いですね、ここ!

劇団四季版では「全ての声に、意義はありません」とありましたが、英語版では「どんな声も事実そのままにご報告しています」と言っていたんですね。さすが、仕事に忠実なザズ!

ちなみにここも実は2つの意味があります。2行目ですが、grunt、roar、snortはそれぞれ擬音語でこういう意味があります。

 

・ grunt … ブーブー(ブタのような鳴き声)

 

・ roart … ガオー(ライオンのような鳴き声)

 

・ snortt … グーグー(いびきの様な鼻息)

 

これらの擬音語が転じて、それぞれ「不平を言う」「大声で叫ぶ」「荒い鼻息」という意味になったんですね。

最後の最後まで、しっかりジョークが利いていますね!ザズ、すごい!

でも…これをあんなに早口で言われたら、ジョークはおろか…朝の報告も聞き逃してしまいそうです。

モーニング・レポートの続きはこちらからご覧くださいね。

 

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