バーがうるさくてカッコイイ、アンジェリカとのラップバトル

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “The Schuyler Sisters” の英語歌詞を見てみると、曲の中盤でアーロン・バーとアンジェリカ・スカイラーが互いに言葉を交わしているシーンがあります。

ここ、ラップバトルのようで聴いていて面白いのですが、更に面白いのはその内容です!今回はその前半部分をご紹介します。

まず、本題に入る前にスカイラー姉妹がどんな姉妹かを次の記事で説明していますので、是非お目通し下さい。


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歌詞のおさらい

それでは本題に入りましょう。ここのフレーズです。

BURR:
Ooh, there’s nothing like summer in the city
Someone in a rush next to someone lookin’ pretty
Excuse me, miss, I know it’s not funny
But your perfume smells like your daddy’s got money
Why you slummin’ in the city in your fancy heels?
You searchin’ for an urchin who can give you ideals?

ANGELICA: Burr, you disgust me

BURR:
Ahh, so you’ve discussed me
I’m a trust fund, baby, you can trust me
―ブロードウェイミュージカル “Hamilton” より “The Schuyler Sisters” (作詞:Lin-Manuel Miranda)

沢山韻を踏んでいますね~、カッコいいっ!ではどんな内容を歌っているのでしょうか?

バーの茶化し方がカッコイイ

注目すべきは3つのフレーズです

  • Excuse me, miss, I know it’s not funny but your perfume smells like your daddy’s got money
  • Why you slummin’ in the city in your fancy heels?
  • You searchin’ for an urchin who can give you ideals?

お父さん、お金持ちでしょ?

まず、1つ目から見ていきましょう。

“it’s not funny” は「可笑しなことではない」という意味です。この後に “but” が来ていますので、「可笑しいことではないと分かっているんだけど~」という意味になります。

何が「可笑しいことではないか」というと、 “your perfume smells like your daddy’s got money” です。 “perfume” はその通り、「香水」や「香り」を意味していますから、ここは「君の父上はお金を持っているような香りがするんだけど」といった内容です。

ですから、1つ目のフレーズは「すみませんが、お嬢さん、可笑しなことではないと分かっているけど、君から父上はお金持ちだっていう香りがプンプンするんだよね」といったニュアンスになります。

それなのに、どうして街へ?

2つ目のフレーズです。

“fancy” は「空想」という意味がありますが、ここでは「派手な」です。また “heels” は「ハイヒール」を指しますから、「(それなのに)どうして繁華街をそんなに派手なハイヒールで歩き回っているんでしょうか?」という意味合いになります。

「お金持ちなら街へ繰り出す必要もないのに、どうしてですか??」とバーがアンジェリカ達を茶化しているんですね。

いたずらっ子でもお探し?

3つ目のフレーズです。

“urchin” は「わんぱく小僧」とか「いたずらっ子」を意味します。また、 “ideals” は「理想」ですから、ここは「理想を与えられるいたずらっ子でもお探しでしょうか?」という意味になります。

恐らくですが、ここでいう “urchin” はアーロン・バー自身のことを指しているのでしょう。それは次のバーのパートで分かりますよ。

バーに対するアンジェリカの反応

さて、こんな風に茶化されて、アンジェリカはどのような反応をしているのでしょうか?それが

  • Burr, you disgust me

の部分ですね。 “disgust” というのは「うんざり」とか「嫌気」という意味になりますから、ここは「バー、あなたってほんと最低」といった雰囲気が掴めればばOKです。

ああ言えばこう言う、返しの上手いバー

ところが “Burr, you disgust me.” で会話は終わりません。茶化しをやめないバーは、続いてこう言います。

  • Ahh, so you’ve discussed me
  • I’m a trust fund, baby, you can trust me

disgustとdiscussed

まず1行目を見てみましょう。

“Ahh” というのは、日本語的ニュアンスでいえば「あー、なるほど」といった感じです。 “discuss” は「議論する」という意味ですが、ここでは「吟味する」でしょう。ですから、ここはイメージ的に「あー、じゃあ君は僕のことを吟味してくれてるってことだ!」という意味になります。

さて、何故アンジェリカは “Burr, you disgust me(バー、あなたって最低)” と言っているのに、「俺のことを吟味している」なんていう返しになったのでしょうか?それはこの2つのフレーズを見比べてみれば分かりますよ。

  • Burr, you disgust me
  • Ahh, so you’ve discussed me

下線を引いた部分、何となく似てませんか?何なら “Burr” と “Ahh” も含めて、全体的にフレーズの聞こえ方が似ていますよね。

ここ、フレーズごと韻を踏んでいるんです!(超カッコイイ!)

特に “disgust” と “discussed” が注目すべき点なのですが、この2つも発音が似ていますよね。アンジェリカが “disgust” と言って嫌悪感を示しているのを分かっていて、バーは “discussed” と返す。このリアルなラップバトル感がリズム感があって、理知的でとっても良いんです!

バーは「信託資金」?

さて、最後のフレーズですね。 “I’m a trust fund, baby, you can trust me” ってどういう意味なのでしょうか?

“trust fund” はそのまま直訳すると「信託資金」という意味ですから、その通り訳すと「俺は信託資金だから、お譲ちゃん、僕を信用してくれたって良いんだよ」という内容になります。 “trust fund” と “trust me” の “trust” とがかかっているの言うまでもないでしょう。

しかし、これではさっぱり意味が分からないですよね? “trust fund” に他に意味がないか調べてみました。「信託資金」という意味がある位ですから、「信用できる存在だ」みたいな意味があるんじゃないかと思うのですが…

コツコツと調べていると…ありました、ありました!次の記事内に説明書きが!

“trust fund” ではなく、 “trust fund baby” にこういう意味があるそうです。

trust fund baby とは「財産家の甘やかされた子供」の事です。
英語のまぐまぐ

なるほどー!

バーは “trust fund, baby,” と言っているので恐らく、 “trust fund, baby,(信託資金だよ、お譲ちゃん)” と “trust fund baby(財産家の甘やかされた子ども)” のダブルミーニングなのだと予想できます。

耳にしてしまえば、 ” , ” の有無は分からないですもんね。あー、深い、奥が深い!

つまり、 “trust fund baby” とは「七光り」とか「おぼっちま」といったイメージでしょう。ちなみにアーロン・バーが「財産家の子ども」かどうかについてですが、wikipediaにはこうありました。

ニュージャージー植民地ニューアークで、ニュージャージー大学(現在のプリンストン大学)の第2代学長アーロン・バー・シニアの息子として生まれた。母親のエスター・エドワーズは、有名なカルビン主義の神学者ジョナサン・エドワーズの娘であった。
アーロン・バー

大学の学長と神学者のの息子ですから、ハミルトンとは大違いですね。アーロン・バーの詳しい人となりについては現在記事を執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいね。

(執筆中)

いかがでしたか?ラップならではの歌詞を楽しめて頂けたと思います。私はこのパートが特に好きなんです!

この続きは、アンジェリカが主導権を握った形でのラップバトル風の歌詞になっています。続きはこちらからご覧ください。

The Schuyler Sisters” の、他の記事はこちらから。

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!

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