東宝ミュージカル『レント(RENT)』を観てみると、色々なタイプの曲調が使われていることに気付きましたか?
調べてみると、実は10もの曲調が使われているということが分かりましたよ!
『RENT』を初めて観た時の印象は、「『RENT』っぽい曲調というのがないな」でした。統一性がない…とも言えますが、それぞれの曲が独立しているように感じたのです。言い方を変れば、別のミュージカル作品はある程度どの曲を聴いても「○○作品っぽい曲」に聴こえるのですが、『RENT』はそうでなかった…ということです。
そんなことを感じながらも、特にその所以について調べたりはしなかったのですが、今回、実は10もの曲調が使われているということが分かりました!
少し長い記事ではありますが、逸話を含めて解説していきますので是非押さえて下さいね。
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目次
『RENT』の逸話
『RENT』はジョナサン・ラーソンが曲を書いていますが、一般的なミュージカルが大体20曲前後で構成されている中で、『RENT』では42もの曲が使われています。
しかも、彼が『RENT』のために書いた曲は300曲にもなるそうですから驚きです。
そんな中、私が気になっていた事がwikipediaに記載されていました。
『レント』の音楽は、個々の歌のスタイルが非常にバリーションに富んでいることが特徴的である。例えば、 “Rent” はロックンロール、 “One Song Glory” はバラード、 “Light My Candle” はチャチャ、 “Today 4 U” はディスコ、 “Tango: Maureen” はタンゴ、 “Out Tonight” はポップ、 “Santa Fe” はR&B、 “La Vie Boheme” は典型的なショーチューン、 “Seasons Of Love” はゴスペル、 “Without You” はフォークと、それぞれ異なるスタイルで書かれており、これらをすべて一人で書き上げて編曲までしたジョナサン・ラーソンの非凡な才能が窺える。
―レント/ミュージカル(wikipedia)
ほぇ~!
そうなの??全部曲調が違うの??とかなりびっくりです…。
これは驚きました。ジョナサン・ラーソン、才能がありあすぎ。
いくら曲が書けると言ったって、ここまでバリエーション豊かとは、天才としか言いようがないですね。
しかも、さらにすごい逸話がコレ。
こうした曲目の中には、ちょっとした「アクシデント」で書かれたものもあった。ある日ジョナサン・ラーソンは親しいアフリカ系の女性の友人と『レント』の曲目について意見を交換していた。この友人は、ラーソンがどんなスタイルの曲でも書けることに感心しつつも、「でもゴスペルだけはきっと無理よ」とからかい半分に言った。2週間後、彼女と再会したラーソンが「こんな感じ?」とピアノで弾き語ってみせたのが、 “Seasons of Love” だった。
―レント/ミュージカル(wikipedia)
「ゴスペル」が、あの “Seasons of Love” !
このアフリカ系の友人がジョナサン・ラーソンをからかわなければ、この曲は生まれなかったかもしれない…そう考えると彼女に感謝しなければならないですね。だってあんなにも素晴らしい名曲が生まれるきっかけとなったのですから…!
10もあった曲調と曲題
それでは、wikipediaにあった曲調と、実際に『RENT』で使われている曲を1つ1つ照らし合わせてみましょう。
- ロックンロール … “Rent”
- バラード … ”One Song Glory”
- チャチャ … ”Light My Candle”
- ディスコ … “Today 4 U”
- タンゴ … ”Tango: Maureen”
- ポップ … “Out Tonight”
- R&B … ”Santa Fe”
- ショーチューン … “La Vie Boheme”
- ゴスペル … “Seasons Of Love”
- フォーク … “Without You”
タンゴは曲名にも “Tango” と入っているくらいですから分かりやすいですね(笑)。
“Santa Fe” のような曲調をR&Bと呼ぶんだとか、ショーチューンって何だろうとか、名前は耳にしたことあるけど、どんな曲調なのかいまひとつ分からない…というところを次から解説していきますよ。
詳しいことは各曲調のリンクから確認してみて下さいね。
曲調の解説
ロックンロール
Rock and Roll/ Rock ’n’ Roll
アメリカ英語の黒人スラングで「性交、交合」を意味をもつ。1950年代半ばに現れたアメリカの大衆音楽スタイルのことを指すが、1950年代初めには「バカ騒ぎ、ダンス」といった意味もあった。1960年代後半になると「ロック」と呼ばれるように。
黒人音楽を基に白人ミュージシャンを中心として、双方のスタイルを混じり合わせ一般化した音楽で、エレクトリック・ギター、エレクトリック・ベース、ドラムスの楽器構成が代表的。
バラード
Ballade/Ballad
ショパンに始まったクラシック音楽におけるバラードが派生した曲調で、ラブソングを中心とした感傷的な歌詞で構成されている。全体的にゆったりとした速度で、美しいメロディやハーモニーが特徴。
チャチャ
Chachachá
ラテン系音楽のひとつで、キューバを起源としたリズムとダンスのこと。1950年代に流行した、二拍子系の音楽。ダンソン(19世紀後半キューバに起った舞踊)とソン・モントゥーノ(キューバ起源の音楽で、ソロ歌手とコーラスの掛け合いがあるもの)がベースになっている。
一般的にはフルート、ヴァイオリン、ピアノ、ベース、打楽器等による楽器編成で演奏される。
https://youtu.be/urfB-_iX-gE
ディスコ
Disco(Discothequeの略)
Discotheque(ディスコティーク)とはフランス語で、バンド演奏ではなくDJがレコードの演奏を行い、客が曲に合わせてダンスを踊る場所のことを指す。アフリカ系アメリカ人やヒスパニックの文化が起源で、1960年代~1970年代前半に広まっていった。ディスコの前身となる娯楽場の主要客は黒人とゲイで、数々のディスコ・クイーンを輩出している。
音量が大きく反響するボーカルが特徴で、エレキベースをベースにした演奏がメイン。ストリングス、エレクトリック・ピアノ、エレキギター等の楽器が用いられることが多い。
タンゴ
Tango
イベリア半島で発祥した舞曲のリズム。18世紀の後半にtangoと書かれた手稿譜が見つかっており、19世紀後半には南米にこのダンスパターンが輸出されている。1880年には出版譜が存在し、1900年以降にはバンドネオン、フルートなどの混合されたアンサンブルがダンススポットで強烈に流行した。
バイオリン、ピアノなどで演奏され、アルゼンチン・タンゴ、コンチネンタル・タンゴ、アメリカン・タンゴ、ジャパニーズ・タンゴ、フィニッシュ・タンゴなどがある。
ポップ
Pop(Pop musicの略)
1950年代から1960年代にかけて、西洋でロックンロールから派生したポピュラー音楽のジャンル。日本語では「ポピュラー音楽」や「ポップ・ミュージック」などというが、意味は大きく変わらない。ポップの幅は広く、ダンス・ミュージックやロック、ラテン、カントリーなどの要素を取り入れているが、メロディーが重視され、1曲の中でサビに当たるコーラスが繰り返されるのが特徴的。
R&B
R&B、RnB(Rhythm and Bluesの略)
1940年代後半に、ブルース、ゴスペル、ジャズなどといったブラック・ミュージックが発展した形で生まれ、ロックンロールなどにも影響を与えた音楽ジャンルのひとつ。リズムやビートに乗りながら、ブルースのある歌を歌うのが特徴。
ショーチューン
Show tune
ミュージカルのために書かれた歌曲全般を指すが、各作品の中で作品の主題とは切っても切り離せない代表的な歌曲のことを限定的に指す場合もある。意図がはっきりしたメッセージ性の強い曲であるとも言える。
ゴスペル
Gospel music
元来はキリスト教プロテスタント系の宗教音楽で、アメリカ発祥の音楽。ゴスペルは英語で「福音、福音書」の意味。奴隷としてアメリカに連行されたアフリカ人は、独自の言語や宗教の一切をはく奪されたが、その辛い状況下でゴスペルと出会った一部の人々がキリスト教への改宗を経て、独自の賛美を捧げるようになったのがきっかけ。
1930年代から黒人教会で演奏され始めたブラック・ゴスペルと、南部州の白人が歌っていたホワイト・ゴスペルがあるが、今日ではブラック・ゴスペルを「ゴスペル」、ホワイト・ゴスペルを「コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック (CCM)」と呼ぶのが一般的。
フォーク
Folk Song
元は民謡や民俗音楽を指すが、民謡から派生したポピュラー音楽をも含める。ポピュラー音楽の中には、反戦歌なども含まれる。アコースティックギターやバンジョーなどを使用し、電気楽器は使わないのが一般的。
https://youtu.be/IrE7mh7Emj4
いかがでしたか?
1つ1つの曲調の曲調を知ると、「なるほど、そのシーンに合う」と合点がいくはずです。是非、各曲調の歴史も含めて、『RENT』の曲をじっくり照らし合わせてみて下さいね。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。