東宝ミュージカル『レント(RENT)』より “La Vie Boheme” の英語歌詞を見てみると、曲題が英語ではないのでどういう意味なのかが理解できません。
これは何語でどういう意味があるのでしょうか?
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目次
“La Vie Boheme” の意味
“La Vie Boheme” というのはフランス語です。発音は「ラ・ヴィ・ボエーム」です。 “la” は英語で言う “the” のようなものなのでそれ以外の単語の意味が分かれば理解できますね。各単語の意味は次の通りです。
- vie … 生活
- Boheme … ボヘミア人、ボヘミアン
…ということは、「ボヘミアンな生活」という意味だと分かりますが、転じて「自由奔放な生活」を意味するようです。
ボヘミアンとは?
何故「ボヘミアンな生活」が「自由奔放な生活」を意味するのか…それは、「ボヘミアン」の意味を理解出来れば納得がいきますよ。
「ボヘミアの人」という意味
まずは「ボヘミアン」本来の意味から知りましょう。
ボヘミアン(英語: Bohemian)とはボヘミアに由来するもので以下に記す。ボヘミアとはヨーロッパのヴルタヴァ川流域の盆地をさすラテン語の地名。ボイイ人に由来する。
―ボヘミアン(wikipedia)
ボヘミアンとは、フランス語の “Boheme” に対するもので、英語では “Bohemian” と書きます。もともとは地名で、そのエリアの人々のことも指します。
軽蔑的な意味が加わる
そこから、次のような意味が加わります。
本来は「ボヘミア人」という意味の「ボヘミアン」という語を、比喩的に「定住性に乏しく、異なった伝統や習慣を持ち、周囲からの蔑視をものともしない人々」という意味で使い始めたのはフランス人で、その起源は15世紀にまでさかのぼる。これは当時フランスに流入していたジプシー(ロマ)が、主にボヘミア地方(現在のチェコ)からの民であったことがその背景にある。
―ボヘミアニズム(wikipedia)
ボヘミア地方からフランスへ流入してきた人たちに対して、軽蔑的な意味も含めて使われるようになったのですね。ジプシー(ロマ)については次の記事でまとめていますので、是非併せてご覧くださいね。
「自由奔放な人々」という意味
この過程で、「周囲からの蔑視をものともしない人々」という意味合いから更に派生したのが、今回『RENT』で使われている意味でのボヘミアンです。
ボヘミアン・アーティスト – 芸術家や作家、世間に背を向けた者などで、伝統や習慣にこだわらない自由奔放な生活をしている者。上記のロマの多くがフランスにおいてボヘミアからやってきたことから「ボヘミア人」=流浪の人と考えられた。ボヘミアニズムを参照。
―ボヘミアン(wikipedia)
もともとフランスへ入ってきた人たちがボヘミアの人で、蔑視をされていながらもたくましく生き、自由奔放に生きていた…そんなボヘミアン(ジプシー)のイメージと、世間に背を向けて生きている芸術家たちのイメージとが重なり、芸術家のことも「ボヘミアン」と呼んだわけですね。
『RENT』に登場するキャラクターたちはみな、蔑視をされていながらもたくましく生き、そしてアーティスト。だからこそ、彼らは軽蔑的な意味を含んでいると分かって自らを「ボヘミアン」と呼び「ボヘミアン(自由奔放)な生活を送る」と叫んでいるのでしょう。
“La Vie Boheme” の曲調
さて、ボヘミアンの意味が分かってスッキリしたところですが、ここで少しだけ “La Vie Boheme” の曲調について触れますね。
次の記事でも触れていますが、この曲は “Show tune(ショーチューン)” というタイプの曲調に分類できます。
ショーチューンというのは、ミュージカルのために書かれた歌曲全般で、作品の主題といっても過言ではないもの。それに加えてとてもメッセージ性の強い曲だと言えます。
もともと『RENT』はプッチーニのオペラ『La Bohème(ラ・ボエーム)』を元に作られた作品ですから、そういう意味でも思い入れあって作られた曲でしょう。また、先にも書いた通り、あらゆる悩みや偏見を抱えた登場人物たちが「人の目は気にしない!自分たちの生き方を生きる!」と歌い上げるこの曲はまさに『RENT』の主題であるメッセージだと捉えられます。
難解な曲ではありますが、この曲を読み解くことこそが『RENT』を理解することでもあります。是非、引き続き記事を楽しみにしていて下さいね。
ミュージカル『RENT』とオペラ『La Bohème』の比較はこちらからご覧いただけますよ。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。