ミュージカル『ハミルトン(Hamilton)』より “Alexander Hamilton” の英語歌詞を見てみると、ローレンス(John Laurens)が “Me? I died for him(俺は彼のために死んだ)” と歌っていることが分かります。
今回は、ジョン・ローレンスがどのような人物だったのかを紹介しますよ。
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ジョン・ローレンスとは?
ローレンス、私の好きな登場人物の1人です。
ハミルトンとは特に仲が良かったようですが、彼はどのような人物だったのでしょうか?
In the military he met John Laurens, the son of a wealthy South Carolinian, who died tragically at the end of the Revolutionary War, barely five years after their friendship began. His friendship with Laurens was particularly close, and they exchanged letters that have a frank and intimate tone. Both men developed a deep friendship with Marquis de Lafayette. Historians and Hamilton biographers have wondered about the true nature of several of Hamilton’s relationships, including those with Laurens and Lafayette. But there is no definitive evidence that those men were anything other than close friends.
―The Hamilton Cookbook: Cooking, Eating, and Entertaining in Hamilton’s World[ Laura Kumin ](p.9)
ローレンスは、裕福なサウスカロライナ州の家庭に生まれ、ハミルトンと出会ってから約5年後のアメリカ独立戦争終わりに亡くなったそうです。
悲劇ですね…親しい友と、これから夢を共に実現していこうという志半ばで亡くなったわけですから…。
ハミルトンとローレンスの友情関係は特に深く、文通も多かったようです。ラファイエットとも仲が良かったようですね。
チャールズ・リーとのデュエル
『ハミルトン(Hamilton)』の1幕でなかなかのインパクトを残す曲は “Ten Duel Commandments” ではないでしょうか?
この曲、好きなんですよねー、とっても…!で、これがどのような曲なのかというと、ローレンスとチャールズ・リーのデュエルの内容になっています。
詳しいことはまた “Ten Duel Commandments” の記事でまとめますが、何故このデュエルが起こったかというと、もともとは、リーがジョージ・ワシントンに対して失礼な態度をとったことが発端でした。
もちろん、彼の上司に当たるワシントンはリーを厳しく叱りつけたのですが、それ以上のことはしなかったんです。
ただ、ワシントンを尊敬していたハミルトンやローレンスは腹が立って居ても立っても居られななくなりました。
ハミルトンはリーに腹が立ちながらも「彼の事は放っておけ」と言ったワシントンの指示に逆らうことはできないという理由でデュエルすることを避けましたが、ローレンスが「それなら俺がやる」と言い、尊敬するワシントンの名誉のため、そして親友であるハミルトンに代わってデュエルをすることになります。
デュエルに至るまでの経緯や、ハミルトンとローレンス、ジョージ・ワシントンのやりとりは “Stay Alive” と “Ten Duel Commandments” で歌われているので、話の展開が非常に分かりやすいですよ。
On December 23, 1778, Laurens engaged in a duel with General Charles Lee just outside Philadelphia, after Laurens took offense to Lee’s slander of Washington’s character. Lee was wounded in the side by Laurens’ first shot and the affair was ended by the men’s seconds, Alexander Hamilton and Evan Edwards, before they could fire a second time.
―John Laurens(wikipedia)
実際、デュエルの結末はどうなったかですが、ローレンスの弾がリーに当たり2発目を発砲するためにセコンド(ローレンス側:ハミルトン、リー側:エヴァン・エドワード)が仲裁に入り収束したようです。
劇中ではここでワシントンが登場し「いったいどういう事だ」と事情を聞き出していますね。
ハミルトンとの関係
さて、ハミルトンとローレンスが非常に仲が良く文通でのやりとりも多かったことから2人の仲は非常に良かったということが分かりますが、その関係性である解釈がされています。
それは2人がホモセクシュアル(ゲイ)だったのではないか…ということです。
ジョン・ローレンスの専門家Gregory D. Masseyによれば「ローレンスは特に16~19歳の間、男女共に注目を集める存在であった」としているだけでゲイであった可能性について明言はしていないそう。
男性と親密な関係にあったとしても、それは同性愛ではなく、同性同士の友情関係の間に成立していたものだと説明しています。
As a young man in Geneva, from ages 16 to 19, Laurens “never had difficulty attracting women and men”, while reserving “his primary emotional commitments for other men.” According to Laurens’ biographer Gregory D. Massey, this period “marked the beginning of a pattern; he continually centered his life around homosocial attachments to other men.” Homosociality, in sociology, refers to same-sex relationships that are not of a romantic or sexual nature, such as friendship, mentorship, and male bonding.
―John Laurens(wikipedia)
一方、アレクサンダー・ハミルトンの研究家Thomas Flexnerは、同性愛というものが珍しかった当時、ハミルトンとローレンスの間で行われていた文通の中で使われていた熱烈な文章表現は、彼らの同性愛を完全に否定できるものではないとしています。
While emotional language was not uncommon in romantic friendships among those of the same gender in this historical period, Hamilton biographer James Thomas Flexner stated that the intensely expressive language contained in the Hamilton-Laurens letters “raises questions concerning homosexuality” that “cannot be categorically answered”.
―John Laurens(wikipedia)
彼らの関係については色々な議論がある中で、今回ミュージカルの原作になっているRon Chernowによれば、少なくとも彼らは非常に親しい間柄にあり、ローレンスが亡くなった後、ハミルトンはそれ以降の人生で、ローレンスと築いたほどの友情関係を構築することは出来ず、また、感情面でもどこか閉鎖的になってしまったことがあったようです。
According to Chernow, “Hamilton did not form friendships easily and never again revealed his interior life to another man as he had to Laurens”, and after Laurens’ death, “Hamilton shut off some compartment of his emotions and never reopened it.”
―John Laurens(wikipedia)
いずれにせよ、彼らが同性愛であろうがなかろうが、非常に信頼のおける間柄であったことに間違いはなく、ローレンスの死後ハミルトンは非常にふさぎ込んでしまったということが分かりますね。
ローレンス役をやる役者は2幕でハミルトンの息子フィリップも演じますが、こちらもまたハミルトンよりも先にこの世を去ってしまう人物の1人です。是非そちらの記事も併せてご覧くださいね。
“Alexander Hamilton” の、他の記事はこちらから。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。