Christmas Bells/ホームレスと売り子の歌の内容

あきかん

こんにちは!

ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。

東宝ミュージカル『レント(RENT)』より “Christmas Bells” の英語歌詞を見てみると、登場人物のあらゆるやりとりが同時進行的に描かれているため、とても目まぐるしいですよね。とくに後半なんてあちらこちらで会話がなされているので、追いついていくのに精一杯の方もいるでしょう。

今回はホームレスと売り子のパートを抜き取って解説していきますので、しっかり内容を把握してくださいね。

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理想と現実でかけ離れるクリスマス

 

ホームレスと売り子たちが歌っているのは、理想と現実でかけ離れているクリスマスです。まずはお馴染みの “Christmas bells are ~” で始まっていますね。歌詞を見てみましょう。

 

HOMELESS & VENDORS:
Christmas bells are swinging
Christmas bells are ringing
Christmas bells are singing
In my dreams — next year
Once you donate you can go
Celebrate in Tuckahoe
You’ll feel cheery
I’ll feel cheery
Tho’ I don’t really know that theory

―ブロードウェイミュージカル “RENT” より “Christmas Bells” (作詞:Jonathan Larson)

 

“Christmas bells are ~” に続くのは次の3つの単語。どれも楽しさを伺わせます。

 

  • swinging … 軽快な、リズムに乗っている
  • ringing … 鳴っている
  • singing … 歌っている

 

でも自分がそういう環境下にいる…というわけではないことが次のフレーズで分かります。 “In my dreams — next year(夢の中では…来年の)” です。現実でもなければ今年でもない…どちらにせよ今ではないという、彼らの置かれた厳しい状況が痛烈に伝わってきます。

続く “Once you donate you can go” は、自分の前を通る人たちに言う言葉でしょう。「一度恵んでくれたら、行っていいよ。」です。つまり、素通りしないでお金を恵んで行って欲しいということです。 “Celebrate in Tuckahoe” の “Tuckahoe” とは「ニューヨーク州ウエストチェスター郡にある村」のことです。ニューヨークの郊外ですね。そこでクリスマスを祝いなよ…と言っているのでしょう。海外のクリスマスは家族とともに過ごすことが基本ですから、故郷に帰ってクリスマスを過ごしても良いけど、その前にお金を落としていってよね…ということを歌っているのだと思います。

最後の3行は「あなたも私も上機嫌、だけど本当はその理屈が分からない」というようなことが歌われています。クリスマスでハッピーな気分…という感覚が、もはや掴めなくなっているということのように聞こえます。切実で辛い前半の歌詞ですよね。

 

 

クリスマスらしさは、まるでない

 

さて、そんな現実に直面しているホームレスと売り子たちは、続いてこう歌っています。

 

No bathrobe
No steuben glass
No cappucino makers
No pearls, no diamonds
No ‘Chestnuts roasting on an open fire’
Chestnuts roasting on an open fire
No room at the Holiday Inn, oh no —

―ブロードウェイミュージカル “RENT” より “Christmas Bells” (作詞:Jonathan Larson)

 

“No ~” で「~がない」という意味です。「●●なし」と訳しても良いかもしれませんね。1つずつ見ていきましょう。

 

  • No bathrobe … バスローブなし
  • No steuben glass … ステューベングラスなし
  • No cappucino makers … カプチーノメーカーなし
  • No pearls … 真珠なし
  • No diamonds … ダイアモンドなし
  • No ‘Chestnuts roasting on an open fire’ … 「火にかけて栗を焼く」なし

 

総じて「贅沢な暮らし、クリスマスを送ることが出来ていない」現実が伝わってくると思います。

“No room at the Holiday Inn, oh no” の部分は、こちらの記事にまとめていますのでご覧くださいね。

 

「●●なし」の中で、 “No steuben glass” と “No ‘Chestnuts roasting on an open fire'” とは私もピンと来なかったので、少し調べてみました!

 

 

“steuben glass” とは

 

“No steuben glass” のステューベングラスとは何でしょうか?グラスメーカーなのかな…?と予想を立てたところ、的中しました。

 

Steuben was founded in 1903 by renowned English glass master Frederick Carder, who named it for the New York State county where the town of Corning is located. In 1918, Steuben (pronounced with the accent on the last syllable) became part of Corning Glass Works, now Corning Incorporated.

Steuben

 

1903年、著名なイギリスのグラス(ガラス)マスターFrederick Carderによって設立されたグラスブランドのようです。今ではもともとガラスメーカーとしてニューヨークで名を馳せていたコーニング社の法人下にあるようですよ。それぞれのホームページは次のリンクからご確認下さい。

 

 

 

“Chestnuts roasting on an open fire” とは

 

No ‘Chestnuts roasting on an open fire’…のフレーズをよく見ると、Chestnuts roasting on an open fireの部分が「‘ ’」でくくられていますね。こういう場合は、大抵何かを引用しています。調べたところ、これはクリスマス・ソングの定番である “The Christmas Song” の副題だということが分かりました。日本語で説明があったので引用しますね。

 

「ザ・クリスマス・ソング (The Christmas Song)」は、1944年にミュージシャンで作曲家、歌手のメル・トーメが、ボブ・ウェルズと一緒に書いた曲。特にナット・キング・コールによる歌唱で広く知られている。英語では副題として「Chestnuts Roasting on an Open Fire」が添えられたり、発表当初の副題「Merry Christmas to You」が添えられることもある、クリスマス・ソングの定番の一つ。

ザ・クリスマス・ソング(wikipedia)

 

直訳すると「火にかけて栗を焼く」。燃え上がる日に栗をかざし、焼いている姿がイメージできますよね。温かい、冬の光景です。つまり、クリスマスの定番曲に書かれているそんな状況は、自分には起こっていないことを歌っています。

“The Christmas Song” の曲は次の通りですよ。

https://youtu.be/I65_S78WHJY

 

続きはこちらから!

 

あきかん

それでは皆さん、良い観劇ライフを…

以上、あきかん(@performingart2)でした!