劇団四季ミュージカル『ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)』より「エジプトへの逃避(Flight Into Egypt)」の英語歌詞を見てみると、石像達がカジモドにエスメラルダをかくまう方法を助言していることが分かります。
その方法とはどんなものでしょうか?この内容を知ることで、石像達の優しさを実感でき心が温まりますよ。
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目次
カジモドの不安と石像達の意見
「エジプトへの逃避(Flight Into Egypt)」の歌詞の中身を見てみましょう。まず、カジモドの自信のない台詞から始まります:
But you know what happened when I went outside!
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Flight Into Egypt” (作詞:Stephen Schwartz)
まず、ここでいう “outside(外)” とはカジモドにとっての外なので、ノートルダム大聖堂の外の世界、つまりは「パリの街中」を指します。
カジモドは「自分が外へ行った時、どんなことが起きたか知っているだろう?」と自身なさげに石像達に言っています。これは、Topsy Turvy(トプシー・ターヴィー)のお祭りの日に起きた惨事の事を言っているんですね。
それに対する石像達の台詞です。
True!
But nobody’s saying anyone has to see you.―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Flight Into Egypt” (作詞:Stephen Schwartz)
石像達は “True!(そうだね、それは事実さ!)” カジモドの発言に同意しながらも、「でも、お前(カジモド)が見える状態で助けろとは誰も言っていないよ?」と返します。
石像達の助言
こういったやりとりの後、石像達はこう歌います。
Everyday brings a night
When it’s nice and dark
And the clouds hide the moon
That’s when you’d embark
To find Esmeralda
In that secret hour
Bring her back
Keep her safe
Up here in the tower―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Flight Into Egypt” (作詞:Stephen Schwartz)
行動すべき時間帯
1つずつ整理しながら見ていきましょう。ここではカジモドが行動すべき時間帯を歌っています
- Everyday brings a night
- When it’s nice and dark
まず、1行目を直訳すると「毎日が夜を連れてくる」となり、少しお洒落な表現になっていますが、意味としては「毎日夜は来る」で問題ないでしょう。またwhenは関係代名詞ですので、「night=it’s nice and dark」となります。
つまり、when以降はnightを補足する情報になっているのですね。よって「毎日、頃合いの良い暗い夜はやってくる」という意味になります。
どんなタイミング?
次を見てみましょう。
embarkという単語が難しいですが、これさえ分かれば問題なさそうです。「そして雲が月を隠した時、それこそお前(カジモド)がエスメラルダを助けに乗り出す時だ」です。
続きはどうなっているでしょうか?
- In that secret hour
- Bring her back
- Keep her safe
- Up here in the tower
“secret hour” という表現が良いですね…
that(その)とはこれまでに歌った「頃合いの良い暗い夜、雲が月を隠した時」です。towerはカジモドがいる塔を指しますから、「その秘密の時間帯に、彼女を連れ戻すんだ。彼女を守れ、ここ塔の上で」となります。
聖アフロディージアスが聖家族を助けた時のように、カジモドにもエスメラルダを助けることが出来るはず。真昼間でなくていい…街人が知らない夜の暗い時間帯に見つけ出せば良いじゃないか!というのが石像達の前向きな助言です。
外に出るといつも自分が問題を引き起こしてしまうと思いこんでいる、カジモドの気持ちを考慮したとても優しい助言ですね。
石像達の後押し
そして最終的に石像達はこうカジモドを勇気づけます。
To falterwould be wrong
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Flight Into Egypt” (作詞:Stephen Schwartz)
“falter” は「ためらう」という意味ですから、「ためらうことは間違いだ」と言っています。とても勇気づけられるフレーズですね。
自身を取り戻すカジモド
それにカジモドはこう返します。
For her, I will be strong
―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Flight Into Egypt” (作詞:Stephen Schwartz)
「彼女の為なら強くなれる」と歌っていることが分かりますね。この辺りから、だんだん心が熱くなって来ます…そして曲はこう締めくくられます。
And your flight into Egypt
Will lastyour whole life long―ミュージカル “The Hunchback of Notre Dame” より “Flight Into Egypt” (作詞:Stephen Schwartz)
聖アフロディージアスにとっての使命はエジプトへ逃げてきた聖家族をかくまうことでした。一方、カジモドにとってのそれはエスメラルダをかくまうことです。ここで初めて、聖アフロディージアスの経験と、カジモドがこれからなそうとしていることが重なる訳ですね。
ですから、 “your flight into Egypt(君にとってのエジプトへの逃避は) “とここで歌われているのです。そしてそれは “Will last your whole life long(お前の人生ずっと残るだろう)” と締めくくられます。
「エジプトへの逃避」と「聖アフロディージアス」についてしっかり押さえよう
「エジプトへの逃避(Flight Into Egypt)」という曲は、このたった1つの音楽の中でカジモドの気持ちや考え方の変化を表現しつつ、聖アフロディージアスという聖人にも触れている、かなり情報量の多い曲です。
個人的にはかなり聴きごたえのある曲だなと感じています。内容的にも、作品の起承転結の「転」に当たる部分ではないでしょうか。
「良い音楽だ~」とただ聞き流すのはあまりにもったいないので、是非読みこんでみて下さいね。
聖アフロディージアスの詳細についてはこちらから各記事でご確認下さい。
「エジプトへの逃避(Flight Into Egypt)」の、他の記事はこちらから。
それでは皆さん、良い観劇ライフを…
以上、あきかん(@performingart2)でした!
こんにちは!
ミュージカル考察ブロガー、あきかん(@performingart2)です。